研究課題/領域番号 |
23K03373
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14030:プラズマ応用科学関連
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大島 多美子 長崎大学, 工学研究科, 教授 (00370049)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | スパッタリング / 粉体ターゲット / 極微量ドーピング |
研究開始時の研究の概要 |
スパッタリング法において材料粉末をそのままターゲットとして利用することにより“安価で容易且つ高速に”薄膜の作製を行う。一般的に用いられる固体ターゲットに比べて粉体は材料の組み合わせが豊富で、組成比を極微量と言われる10ppmレベルで高精度に制御できる特徴を有することから、極微量ドーピングによる機能性薄膜の開発を行う。また粉体独自の制御因子やプラズマパラメーター制御による高度な成膜プロセスの最適化によって、粉体ターゲットで高品質薄膜作製の実現可能性を検証する。本研究は、あらゆる分野における新材料の開発に応用が可能で、マテリアルズ・インフォマティクスに必要な材料データベースの拡張にも寄与する。
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研究実績の概要 |
材料粉末をそのままターゲットとして利用することで安価で容易且つ高速に成膜が可能な粉体スパッタリング法において、極微量ドーピングの機能性薄膜作製、粉体独自の制御因子による成膜プロセスの最適化と高品質薄膜作製を目的として、次の項目について明らかにする。①ドーピング材を含む混合粉体ターゲットの作製方法を確立する(1年目)。②粉体の混合比と作製した薄膜の組成比との関係を調べ極微量ドーピング技術の可能性を調査する(1-2年目)。③粉体独自の制御因子が作製した薄膜の特性やプラズマパラメーターに与える影響を調べ成膜プロセスの最適化と高品質薄膜の作製を行う(2-3年目)。 1年目(2023年度)は酸化亜鉛(ZnO)にAlやVをドーピングした透明導電酸化物薄膜の作製を行った。まず、混合粉体ターゲット作製方法を再検討し粒子の凝集や容器内壁への付着等を改善することができた。次に、作製した薄膜はEDXによる元素定量分析を行い粉体ターゲットにおけるAlやVの混合量との比較検討の結果、ZnO:V(VZO)薄膜はZnO:Al(AZO)薄膜に比べて膜中のO/Znが小さく酸素が不足していることがわかった。また、抵抗率はVZOがAZOよりも低くなったことより、ドーピング材として使用したV2O3粉体が酸素空孔の生成に寄与することが考えられる。実際に、VZO薄膜中のVはV2O3の混合量によらず殆ど膜中に含まれていなかった。一方、AZO薄膜中のAlは1.5~4.5at%が観測されドーピング材であるAl2O3の混合量に依存する傾向が確認された。最後に、AZO、AZO、AlとVを同時ドーピングしたZnO:Al&V(AVZO)薄膜の透明導電性を調査した結果、AVZO薄膜で可視光平均透過率が86%、抵抗率が2.83×10^-3Ω・cmの特性を示し、AZO、VZO薄膜に比べて特性の良い膜が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目(2023年度)に予定していた項目について、①混合粉体ターゲットの作製方法を改善し、②AZO、VZO、AVZO薄膜の元素定量分析や光学的・電気的特性評価の結果と粉体ターゲットの混合比の関係について有益な知見を得ることができ、2年目(2024年度)の項目を予定通り実施できる見通しが立ったことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(2024年度)は項目②と③に取り組む。②では作製した薄膜の元素定量分析にXPSを加えEDXと合わせてチェックを行う。また元素の組み合わせや混合比を系統的に変化させた粉体ターゲットを用いて、コンビナトリアル手法により1回のプロセスで複数通りの薄膜を作製し評価することで効率的な材料開発を行う。以上より、従来のイオン注入や熱拡散等の方法とは異なるドーピング技術として、ドーピング材料を含む粉体ターゲットを用い成膜中にドーピングが可能かを調査する。③では粉体独自の制御因子として、粉体は固体に比べて極めて大きな比表面積を持ちターゲットホルダーに充填した粉体には空隙も多いことから、粉体ターゲットに反応性ガスを直接導入(吹きかけるなど)し表面反応を利用した成膜プロセスの開発を行う。また電子温度やフラックスなどのプラズマパラメータを制御するために、印加電圧波形に関する検討を行う。以上より、作製した薄膜の特性やプラズマパラメーターを調査し成膜プロセスの最適化と高品質薄膜の作製を試みる。
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