研究課題/領域番号 |
23K03375
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 達夫 北海道大学, 理学研究院, 教授 (60322153)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 超弦理論 / コンパクト化 / フレーバー構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、弦理論のコンパクト空間の幾何学的性質に由来するクォーク・レプトンのフレーバー構造の解明である。この3,4年コンパクト6次元空間が2次元のトーラスやオービフォルドの3つの直積と分解できる場合のモジュラー対称性がクォーク・レプトンのフレーバー構造にどのように反映されるかを系統的に研究を行ってきた。本研究においては、上述のように直積分解できない6次元トーラスやオービフォルドのフレーバー構造の解析を行うのに加え、カラビーヤウ多様体も含めた解析を行う。 また、質量行列の構造に限らず、高次元のオペレーターをモジュラー対称性に着目し研究する予定である。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、超弦理論のコンパクト空間の幾何学的性質に由来するクォーク・レプトンのフレーバー構造の解明である。ここ5年くらい2次元トーラスやオービフォルドなどのコンパクト空間の幾何学的対称性であるモジュラー対称性がクォーク・レプトンのフレーバー構造にどのように反映されるかというテーマに関し、系統的に研究を行ってきた。2023年度においては、その研究を2次元の直積でなない6次元トーラスやオービフォルドに拡張し、様々なフレーバー対称性が実現されることを示した。さらに、トーラスやオービフォルドなどの単純なコンパクト空間には限らず、カラビーヤウ多様体においても、そのモジュライ空間の特別な領域において、モジュラー対称性が現れ、湯川結合がモジュラー形式で与えられることを示した。 さらにモジュラー形式は固定点近傍において、階層的な構造を示し、その振る舞いがクォーク・レプトンの質量と混合角の階層構造を導出するのに極めて重要であることを示し、様々な具体例を示した。このような質量と混合角の階層構造の再現には成功する一方で、モジュライが1つしかない場合においては、CP位相の再現が極めて困難であることを様々な具体例においては、直面した。その問題の根源を明らかにし、一般にモジュライが1つしかない場合においては、クォーク・レプトンの質量階層性の再現とCP位相の再現が極めて困難であり、モジュライが複数必要で、1つのモジュライは質量と混合角の階層構造の再現を担い、別のモジュライはCP位相の再現の役割をするという役割分担が有効であることを示した。 上述のように位相も含めたモジュライの値が重要であるので、このモジュライの値をポテンシャル解析により、モジュライの値を決定も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に比べ予想以上に極めて順調に進展している。 1つは、2次元トーラスやオービフォルドの直積では書けない6次元トーラスやオービフォルド空間上のモジュラー対称性を解析が進み、それをもとに1つのクォーク・レプトン模型の構築が行えた点である。この模型は複数のモジュライをもち、クォーク・レプトンの質量や混合角の階層構造を再現したのみでなく、CP位相の再現に関しても成功している。 次に特筆すべきは一部のカラビーヤウ多様体上の解析である。モジュライ空間の特別なリミットをとると、モジュラー対称性が現れ、湯川結合がモジュラー形式で書けることを示した。今後はこの解析を足掛かりにカラビーヤウ多様体のモジュラー対称性やクォーク・レプトンのフレーバー構造の解析を進む予定である。 モジュライの値の決定に関しては、計画通りに順調に研究が進んでいて、今後もモジュライの値の決定に関し、研究を進めていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の得られた結果をさらに発展させる計画である。 まずは、高次元のトーラスやオービフォルドから現れるクォーク・レプトンのフレーバー構造の解析を系統的に研究を進める。 さらには、一部のカラビーヤウ多様体のモジュライ空間の特別なリミットにおいて、モジュラー対称性を確認し、湯川結合がモジュラー形式で与えられることを示した。その解析を様々なカラビーヤウ多様体へ拡張する一方で、得られた結果をクォーク・レプトンのフレーバー構造の再現へと応用を進める計画である。 この一年間は、コンパクト空間の幾何学的対称性であるモジュラー対称性を起源としたクォーク・レプトンのフレーバー構造の解明を行ってきたが、コンパクト空間上の超弦理論には、モジュラー対称性以外にも様々な対称性が隠れていて、未だに注目されていない対称性などで、湯川結合なとど結合の選択則が決定されている。今後はそのような新たな対称性の探求とそのクォーク・レプトンのフレーバー構造の解明への応用を推進する計画である。
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