研究課題/領域番号 |
23K03386
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
浅川 正之 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (50283453)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | クォークグルーオンプラズマ / 強い相互作用 / QCD臨界点 / 相関 / 揺らぎ / 重クォーク / 強結合系 / 有限温度量子色力学 / 高エネルギー原子核衝突 |
研究開始時の研究の概要 |
強い相互作用の基礎理論は量子色力学と呼ばれる理論である。この理論の高温相はクォークグルーオンプラズマと呼ばれ、以前はクォークやグルーオンがほぼ自由に動き回っている相であると考えられていた。しかし、アメリカのRHICにおける高エネルギー原子核衝突実験の結果、クォークグルーオンプラズマは非常に強く相互作用している相であることが判明した。この研究ではこの非常に強く相互作用している量子系の相関を様々な手段で研究し、その全体像を理解することを目標とする。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、強い相互作用の基礎理論である量子色力学(QCD)の相図上に有限温度有限密度で存在すると考えられている臨界点近傍で、チャームクォークなど重いクォークが受ける抗力を考察した。この臨界点は強い相互作用の軽いクォークセクターが近似的に持つカイラル対称性に関連した相転移点である。チャームクォークなどの重いクォークは、カイラル対称性は持たないが軽いクォークと同じゲージ相互作用を受けるという、他の系で類似を見出しにくい特徴を持った不純物として振る舞う。もしこの抗力が臨界点近傍での揺らぎと相関の発散の結果増大すれば、高エネルギー原子核衝突で生じた重いクォークの拡散が抑制され、臨界点の存在の証拠となり得る。この抗力の臨界点付近での振る舞いをQCD臨界点が属すると考えられているmodel Hにおいて計算した。その結果、model Hにおいて知られている臨界指数を用いた場合、残念ながら臨界点近傍での抗力の増加は微小で実験では殆ど確認できないような程度に留まることが分かった。しかし、model Bで同様な計算を行った場合は、臨界点近傍での発散度は顕著で、実験で確認し得ることが分かった。原子分子系でこれに類似のシステムを見い出し、臨界点近傍での不純物の抗力を実験的に測定して、この結果を確認することは興味深いことであると考えられる。 また、本年度はクォークグルーオンプラズマの微視的構造を格子ゲージ計算を行ってクォークグルーオンプラズマ中でのクォーク数の相関を測定することを通して理解するため、コードの整備を行い、またそれを用いて予備的な計算を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
QCD臨界点付近で重いクォークの受ける抗力の臨界指数を計算できたことは新しい成果である。また、フルQCD格子ゲージ計算を、予備的とは言え実行できたことは、大きな一歩であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、格子ゲージシミュレーションの本計算を行うべくコードの整備を進める。さらに、QCD臨界点付近の相関の指標としてレプトン対を通じて、バリオン数とは違う側面からクォークグルーオンプラズマ中の相関を探る。
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