研究課題/領域番号 |
23K03398
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
木村 哲士 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 特任准教授 (20447882)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2026年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 超弦理論 / T-双対性 / エキゾチックブレーン / Double Field Theory / ブラックホール / ホーキング輻射 / T双対性 |
研究開始時の研究の概要 |
一般相対論によると、ブラックホール内部は外部からは観測不可能である。一方で近似的に量子論を考慮するとブラックホールは熱輻射(ホーキング輻射)を起こして蒸発するだろうと考えられる。ではブラックホール内部に落ち込んだ情報はどこへ行くのか?この研究では量子重力理論の候補である超弦理論のT双対性に注目して、ブラックホール内部の時空を別のブラックホールの外部の時空と接続させる。その際にT双対前後の時空を同時に扱う「Double Field Theory」の量子論を駆使して、ブラックホール内部の情報を量子論的補正を受けた時空の幾何学として、ホーキング輻射や情報喪失問題を理解することを目指す。
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研究実績の概要 |
超弦理論では、「弦の重心の運動量量子数」と「時空への巻き付き量子数」の交換で質量スペクトルが不変であるというT-双対性が存在する。この双対性における2つの量子数を対等にとらえるため、時空次元を「倍化」し、その上での幾何学的・場の理論的を駆使した弦理論の展開を Double Field Theory と呼ぶ。 私は共同研究者とともに、Double Field Theory を用いてエキゾチックブレーンの背景時空の幾何学的性質をより深く探究した。具体的には、数学的に非常に性質の良い Taub-NUT 空間と呼ばれる非コンパクトなハイパーケーラー空間を起点とした解析を行った。この空間は弦理論では Kaluza-Klein モノポールの背景時空に相当する。この時空のある方向にT-双対変換するとNS5-ブレーンと呼ばれるソリトンの背景時空が得られる。一方で別方向T-双対変換することで、エキゾチックブレーンが現れる。 私は共同研究者とともに、T-双対変換でつながる上記3種の物体の背景時空の曲率について、Double Field Theory の手法を用いてモノドロミーの表現を解析した。モノドロミーとは、注目する物体を中心に時空を一周する際に発現する非自明な変換群である。我々の研究の成果では、Double Field Theory を用いることで、接続・捩率・リーマン曲率・リッチ曲率のモノドロミーが線形変換で明確に表現できることを見出した。 同時並行して、本来の研究対象であるブラックホール時空についての幾何学的性質の先行研究を調査した。これにより、虚時間への変換を行うことで概複素構造を持つことができるブラックホール解析方法の有益な文献を収集できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Double Field Theory を用いたエキゾチックブレーンの解析から、時空の幾何学的な性質である接続や曲率のモノドロミー変換の形式が明確になったことは、今後より一般的な時空の幾何学の性質を読み取る際の良い解析手段となる。この技術を弦理論における時空のコンパクト化でも再現可能で幾何学的に性質の良いブラックホール解に適用することは比較的容易であろうと考えられる。 モノドロミーの解析において、背景時空の幾何学的性質、特に概複素構造の性質を最大限に利用した。概複素構造は弦理論のコンパクト化において非常に多くの場面に登場する。またブラックホール解も適切な座標変換を行うことで概複素構造を持つ記述が可能な対象が多いと分かった。そのため、現在の研究は今後の研究を推進する土台として重要とみなすことができる。以上により、研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の研究対象はブラックホールである。今後の研究推進方策は、ブラックホール解を Double Field Theory の形式に格上げした記述を確立することである。そのためにはブラックホール時空が概複素構造を持つ座標系に変換する解析が必要であろう。幸いにしてこの方針の一部は既に先行研究があるので、この先行研究を Double Field Theory に適用するための良い記述を開発することが今後の研究の推進方策の一つとなる。その際探究すべき点は「ブラックホール解における弦の巻き付き数」を如何にして幾何学的な記述を得るかである。このため、我々は概複素空間の微分幾何学的・代数幾何学的な理解を深めることを研究推進の別側面的な方策とする。
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