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カラー閉じ込めの新しい判定基準と物質場が存在する場合の閉じ込め機構

研究課題

研究課題/領域番号 23K03406
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
研究機関千葉大学

研究代表者

近藤 慶一  千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60183042)

研究分担者 柴田 章博  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 研究機関講師 (30290852)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2027-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
キーワードクォークの閉じ込め / グルーオンの閉じ込め / カラーの閉じ込め / ゲージ・スカラー モデル / BEH機構 / 双対超伝導 / 大域的対称性
研究開始時の研究の概要

カラー閉じ込めの新しい判定基準として,従来の特定のゲージ固定条件にのみ適用可能な九後・小嶋の判定条件を超えて,任意のゲージ固定条件に適用可能なトポロジカルな配位による残留ゲージ対称性の回復を提唱する。新基準はゲージ理論が対称性の回復したカラー閉じ込め相という相構造を持つことを意味し,カラーを持つ基本粒子クォーク・グルーオンのみならず,それから構成されるカラー無色でない全ての複合粒子の閉じ込めを一挙に議論し得ることに加え,Higgs 相や高温・高密度の非閉じ込め相を議論することも可能にする。

研究実績の概要

格子 SU(2) ゲージ・スカラー モデルは,スカラー場がゲージ群の基本表現に属すときは,先行研究により,閉じ込め領域およびヒッグス領域が,解析的に連続した単一の閉じ込め・ヒッグス相の部分領域であり,その間に熱力学的な相転移が無いことは,Osterwalder-Seiler-Fradkin-Shenker定理としてよく知られている。我々は,基本スカラー場といわゆる色方向場を組み合わせることで新しいタイプのゲージ不変な演算子を構成した。ここで色方向場はCho-Duan-Ge-Shabanov とFaddeev-Niemiによるゲージ場のゲージ共変分解に基づく変数変換で得られる。 我々は,格子上でゲージ固定を行うことなく数値シミュレーションを実行することで,弱いゲージ結合領域においては従来の熱力学転移線を再現し,さらに強いゲージ結合領域においては,閉じ込め--ヒッグス相を 2 つの部分つまり閉じ込め相とヒッグス相に分離する新しい遷移線を新しいゲージ不変演算子を用いて解析することで見いだした。 数値計算ではゲージ固定が課されていないため,結果はゲージに依存しない。さらに,新しい転移の物理的解釈を,大域的対称性の実現の観点から議論した。

一方,スカラー場がゲージ群の随伴表現に属す場合は,先行研究では,完全に分離された 閉じ込め相とヒッグス相があることが,Brout-Englert-Higgs(BEH)機構の従来の理解に基づいて,特定のゲージ固定で実行された数値シミュレーションで得られた。我々は,ゲージ固定なしで数値シミュレーションを実施した結果,元の随伴スカラー場と色方向場を結合することによって得られるゲージ不変演算子を用いて,閉じ込め相とヒッグス相を分離する従来の転移線をゲージに依存せずに再現したのみならず,閉じ込め相を2つに完全に分離する新しい転移線の存在を発見した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的の1つは,物質場が存在する場合の閉じ込め機構を特定することである。その第一歩として,ゲージ・スカラー モデルに取り組んだ。その結果,格子SU(2)ゲージ・スカラー モデルにおいて新しい転移線の存在を発見した。これは大きな進歩で順調に進んでいる。基本表現の論文は,既にPhysical Review誌に掲載済みであるが,随伴表現の場合は,プレプリントの形では結果が公表され,研究発表もなされ,専門誌投稿済であるが,現在査読中であり,現時点では掲載可否は未定である。
もう1つの目的として,カラー閉じ込めの新しい判定基準を見いだすことである。この問題に関しては,格子ではなく連続理論の枠組みで残留局所ゲージ対称性の回復あるいは非回復によって相を区別する研究に取り組んでいる。こちらも結果が出ており,プレプリントの形では結果が公表され,研究発表もなされ,専門誌投稿済であるが,現在査読中であり,現時点では掲載可否は未定である。

今後の研究の推進方策

今後は,格子 SU(2) ゲージ・スカラー モデルにおいて発見した新しい転移線の存在を確立し,各相の物理的特徴づけを詳細に調べる予定である。本研究はゲージ固定を行うことなくシミュレーションを実行し,ゲージ不変な演算子を用いて解析したこと,ゲージ非依存な(ゲージ不変な)BEH機構を有する格子SU(2)ゲージスカラーモデルを構成したことも成果であるが,既に,随伴スカラー場と色方向場のゲージ不変演算子を用いないで,スカラー場とゲージ場だけで直接構成した異なるタイプの演算子を用いた別の方法でも新しい転移線を再現するという予備的結果が得られている。
また,相を特徴づける別の方法として,残留局所ゲージ対称性を用いる。残留局所ゲージ対称性とは,ゲージ固定条件を課した後でも残る局所ゲージ対称性である。残留局所ゲージ対称性は摂動的真空では自発的に破れているが,真の閉じ込め真空では回復されることが期待される。 なぜならば,閉じ込め相は全ての対称性が回復あるいは破れずに保たれている相であると期待されているからである。先行研究によって,ローレンス ゲージでは,特別な残留ゲージ対称性が回復ための判定基準が,九後-小嶋のカラー閉じ込め判定条件と同等であることが示されている。我々は,以前の論文で,このような回復がトポロジカル欠陥によって生じる可能性があることをローレンス ゲージと最大可換ゲージで示した。 しかし,その後,前の論文で導入されたトポロジカル欠陥はユークリッド作用を無限大にし,経路積分には寄与しないことが判明した。 そこで,改めてこの問題を考察する。経路積分に寄与する有限ユークリッド作用を与える修正されたトポロジカル欠陥の経路積分を用いて,最大可換ゲージにおける残留局所ゲージ対称性の回復を示す。また,軸性ゲージのような別のゲージに関しても調べる。特に,Gribovコピーの影響を議論する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Gauge-independent transition separating confinement and Higgs phases in lattice SU(2) gauge theory with a scalar field in?the?fundamental?representation2024

    • 著者名/発表者名
      Ikeda Ryu、Kato Seikou、Kondo Kei-Ichi、Shibata Akihiro
    • 雑誌名

      Physical Review D

      巻: 109 号: 5 ページ: 054505-054505

    • DOI

      10.1103/physrevd.109.054505

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 格子SU(2)ゲージ・随伴スカラー模型における閉じ込め相を分けるゲージ非依存転移2024

    • 著者名/発表者名
      柴田章博
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 格子SU(2)ゲージ・スカラー模型におけるゲージ非依存な閉じ込め-Higgs相の分離2024

    • 著者名/発表者名
      池田龍
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 軸性類似ゲージにおける残留局所ゲージ対称性の回復とカラー閉じ込め2024

    • 著者名/発表者名
      福島直樹
    • 学会等名
      日本物理学会2024年春季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] New gauge-independent transition dividing the confinement phase in the lattice gauge-adjoint scalar model2023

    • 著者名/発表者名
      Akihiro Shibata
    • 学会等名
      The 40th International Symposium on Lattice Field Theory (Lattice 2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] New gauge-independent transition separating confinement-Higgs phase in the lattice gauge-fundamental scalar model2023

    • 著者名/発表者名
      Ryu Ikeda
    • 学会等名
      The 40th International Symposium on Lattice Field Theory (Lattice 2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 格子ゲージ・スカラー模型の閉じ込め-Higgs相を分離するゲージ非依存な転移線2023

    • 著者名/発表者名
      池田龍
    • 学会等名
      熱場の量子論とその応用(TQFT2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Color confinement due to topological defects ---restoration of residual gauge symmetries---2023

    • 著者名/発表者名
      Naoki Fukushima
    • 学会等名
      KEK Theory Workshop
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] トポロジカル欠損によるカラー閉じ込め---最大可換ゲージにおける残留局所ゲージ対称性の回復2023

    • 著者名/発表者名
      福島直樹
    • 学会等名
      場の理論と弦理論2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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