研究課題/領域番号 |
23K03420
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
高柳 和雄 上智大学, 理工学部, 教授 (30183859)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2027年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2026年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 有効相互作用 / 多体摂動論 / 散乱・逆散乱問題 / ポテンシャル変換 |
研究開始時の研究の概要 |
原子核構造を記述する殻模型の有効相互作用を構築する微視的理論の完成に向け、一般化された光学定理に基づいたポテンシャル変換理論の応用、linked diagram 定理の完全化、という2つのステップについて研究を進める。この研究は、殻模型による原子核研究の発展だけでなく、厳密な多体量子論の完成に向けて高い一般性を持っている。
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研究実績の概要 |
2023年度は、申請書に示した第1のステップ(ポテンシャル変換の一般論)について次に示すようにいくつかの大きな進展があった。 1.Half-on-ShellのT行列<k'|T|k>が満たすべき条件は、束縛状態がある場合も含めて「一般化された光学定理」として本件申請者により導かれている。それは2本の連立積分方程式で与えられるために逐次近似により解を求める必要がある。その解が求まるかどうか、また求まったとしてその収束性が問題になるが、とても優秀な(収束半径が広く収束も速い)逐次近似のアルゴリズムを開発できた。そのアルゴリズムを使うことにより、一般化された光学定理の様々な応用(逆散乱問題、ポテンシャル変換)を具体的に示すことができた。 2.一般化された光学定理はポテンシャルVのSB分解(散乱状態の空間に作用する部分VSと束縛状態の空間に作用する部分VBへの分解)を直接的に示すため、これを使ってポテンシャル変換をVSの変換とVBの変換に分けて議論することができるようになった。これにより、まずVSの変換として、低エネルギー物理を保存する有効相互作用Vlowk(これは非Hermiteなポテンシャルとして導かれている)と同じ思想ながら、それに対応するHermiteなポテンシャルを構成する理論を構築すると同時にその理論の検証も兼ねた数値実験も始めている。次にVBの変換の応用として、von Neumann と Wigner の1929年の論文以来議論され続けている「正エネルギー束縛状態」の一般的議論の構成を始めている。ここでは、ポテンシャル<r'|V|r>の非局所性が重要な役割を果たすことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、申請書に示した第1のステップ(ポテンシャル変換の一般論)については予想以上に大きな進展があった。特に、Hermiteな低エネルギー有効相互作用Veffを数値的に求める段階にできたのは大きく、現在は、その有効相互作用がカットオフとdiffusenessにどのように依存しているのかを調べているところである。また、ここでのポテンシャル変換の一般論を使って、「正エネルギー束縛状態」を持つポテンシャルを一般的に議論できるようになった。しかし、この様に大きな進展のあった第1のステップに対し、第2ステップ(linked diagram の定理)については大きな進展はなかった。これは、「一般化された光学定理」の優秀な計算アルゴリズムが見つかったために、そちらの方向での計算を大きく進展させることに研究努力を注ぎ込んだことによる。この第1と第2のステップの進捗状況を合わせて考えると、研究は「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、第1ステップ(ポテンシャル変換の一般論)が大きく進展を見せているところである。その為に、まずはVSの変換による「VlowkのHermite演算子版」と言える低エネルギー有効相互作用Veffの理論を完成させたい。このVeffはHermiteであることが保証されており、その保証のないVlowkと比較すると、実際に求めるための計算がやや複雑である。その為にこのVeffのカットオフとdiffuseness依存性はそれほど自明ではない。それがVlowkの依存性とそれほど変わらないことが確認できれば、実際に原子核の構造計算に使えるはずなので、その方向で実用化の目途を早期に立てたい。同時にVBの変換も正エネルギー束縛状態について興味深い数値データを出しつつあるので、こちらの理論の完成も急ぎたい。これらの研究の目途が立ったところで第2ステップ(linked diagram の定理)にも申請書に示した方向で力を注ぐ予定である。
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