研究課題/領域番号 |
23K03423
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 明治学院大学 |
研究代表者 |
太田 和俊 明治学院大学, 情報数理学部, 教授 (80442937)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 格子ゲージ理論 / グラフ理論 / ゼータ関数 / 行列模型 / Wilsonループ / Gross-Witten-Wadia相転移 / ゲージ理論 / 箙(クイバー)ゲージ理論 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、各頂点を結ぶ辺で構成された「グラフ」と呼ばれる図形上に定義された伊原のゼータ関数およびその拡張をゲージ場の理論に対して応用し、グラフ理論やグラフ上のゼータ関数の様々な性質を利用して、離散的構造を持ったゲージ場の理論を非摂動論的な性質も含めて明らかにすることを目的としている。特に、数学におけるグラフ理論と深く関わると考えられる格子ゲージ理論や箙(クイバー)ゲージ理論といった物理理論に対して、グラフ上のゼータ関数が果たす本質的な役割を理解する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、離散空間である一般のグラフ上にゲージ理論を構築し、数学的対象物であるグラフ上のゼータ関数との関連について研究を行っている。当該年度においては、新たなモデルの構成方法として、これまで随伴表現に属していたスカラー場を基本表現に属したものに置き換え、その性質について調べた。 当該年度以前に研究を行なっていた随伴表現のスカラー場を用いて記述されていたグラフ上のゲージ理論(Kazakov-Migdal模型)では、グラフ上のゼータ関数との関係性は明確ではあったが、ゲージ理論を記述する上で望ましくない局所U(1)対称性が存在するという問題があった。特に、QCDなどのゲージ理論で見られるような閉じ込め/非閉じ込め相に関する相転移構造が存在しなかった。 今回、スカラー場を基本表現のものに置き換えることによって、望ましくないU(1)対称性を破ることができる上に、分配関数が依然としてユニタリー行列によって重み付られたグラフゼータ関数で記述できることを見出した。さらに、ゲージ群のランクであるNが非常に大きいラージN極限を考えることによって、基本表現のスカラー場を導入した我々のモデルが、いわゆるGross-Witten-Wadia(GWW)相転移を呈することがわかった。特に、グラフが単純なサイクルグラフの場合には、ラージN極限でモデルを厳密に解くことができ、相転移前後でのWilsonループの固有値分布の変化を解析的に得ることができた。 GWW相転移は3次の相転移であるが、いくつかのグラフに対する実例をもとに、グラフの構造とモデルが持つGWW相転移の相構造との関係について研究し、モデルに含まれる結合定数のスケーリング極限とグラフ構造に対応したプラケット作用あるいはWilsonループ(基本サイクル)との関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度における研究発表成果としては論文1本ということになるが、その翌年度にわたる研究成果に結びつく厳密解など重要かつ基本的な研究成果が得られたので、概ね当初の計画通りに本研究課題は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究において、スカラー場を基本表現のものに置き換えると、構築しているグラフ上のゲージ理論がそのグラフの構造に対応して、豊かな相構造を持つことが理論的に明らかになった。一方で、解析的な研究だけでは、より複雑なグラフ構造に対して、モデルが持つ相構造がどのようになっているかを明らかにするのは困難である。 そこで、今後は今回構築したモデルをコンピュータ上の数値計算でシミュレーションを行い、解析的な研究だけでは明らかにできないより詳細な相構造を明らかにしていくことを目標とする。 すでに、数値計算に必要なプログラムの開発および一部のシミュレーションについては、当該年度内に実行済みで、今後はこれらの計算結果を分析しつつ、その成果公表を含め研究を進める。
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