研究課題/領域番号 |
23K03432
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
神田 展行 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50251484)
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研究分担者 |
中野 寛之 龍谷大学, 法学部, 教授 (80649989)
土田 怜 福井工業高等専門学校, 一般科目(自然系), 助教 (10881196)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 重力波 / ブラックホール / 準固有振動 / ラプラス変換 / データ解析 / 短時間ラプラス変換 |
研究開始時の研究の概要 |
本手法は、他の重力波解析では使われていない解析フィルタであり、独自性をもっている。また、ラプラス変換自体が、複素周波数平面と対応するものであることから、ブラックホール準固有振動の解析に向いている。 これまでに開発したフィルタは、重力波波形に対してまだ最適化をおこなっておらず、規格化や極の同定などにもかなり改良の余地がある。また、ブラックホールのパラメータ(質量、角運動量、準固有振動のモード)の決定や、合体波形も含む波形全体での解析など、検討すべき要素が多くある。本研究では、これらの問題を解決し、実際の重力波の観測データの解析を行う。そして、後述のようにブラックホール時空の性質を研究する。
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研究実績の概要 |
近年、重力波観測によってブラックホール連星合体が多数観測されているが、我々はブラックホールの周辺時空の性質として予想されている準固有振動からの重力波を解析するためにラプラス変換の応用を開発してきた。本研究ではこの手法を完成させ、より現実的なデータ解析で定量的な評価を進めている。 2023年度の研究では、ラプラス変換を行うプログラムコードを改良し、出力を複素平面上での強度、位相、および同一実部(実部は減衰時間に対応)ごとでの強度規格化を行い、信号処理を行うようにした。 インスパイラルー合体ーBH準固有振動全体を含む連星合体の重力波波形を解析し、シミュレーション波形および実際に観測されたイベントGW150914の波形において、準固有振動の基本モード成分の抽出に成功した。 日本物理学会での発表を行った。幾つかの学術投稿論文に寄与した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重力波波形の時系列データに対してラプラス変換・解析を行うコードの作成は順調に進行している。 連星合体重力波波形全体を解析して準固有振動を抽出することに成功した。特に、実際の観測データに適用して準固有振動成分を確認した。ラプラス変換によって求めたブラックホール質量とKerrパラメータが従来の解析結果と矛盾が無いことが確認できた。 さらに時系列データを区切って行う短時間ラプラス変換によって準固有振動モードでない波形成分によるスペクトルの裾を抑制することにも成功し、当初年度予定の研究内容は概ね順調に進行している。 2023年に国際会議での発表を予定していたが、同時期に代表者の健康上の問題と身内の弔事が生じ、発表を取り止めざるを得なかったのは残念である。(ただし、翌2024年4月には別の国際会議にて成果発表を行なえた。)
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今後の研究の推進方策 |
次の段階として、以下を考えている。 1) これまでC言語やIgorを使用しているラプラス変換のプログラムコードをpythonに完全に移植する。これによって、現在は別々に動かしている観測データの取り込み部分とラプラス変換を連動させ、観測データ解析の効率をよくする。最終的にパイプライン化のためにも必要である。2) 短時間ラプラスの時間区切り処理の自動化を行う。3) パラメータ決定誤差の評価を行う。現在は準固有振動の中心周波数、減衰係数の中央値は求めているが、誤差を評価できていない。シミュレーション波形での試験を行い、決定誤差を評価する。4) 準固有振動の高次モードやオーバートーンの識別に挑戦する。5) 全ての実際の観測イベントの波形についての解析を行う。現時点では数例しか解析していない。 また、これらの成果を学術雑誌に論文を投稿する。4)はやや難しいので、4)と5)は並行して進め、5)で一定の成果が見えた時点で論文作成を考えている。
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