研究課題/領域番号 |
23K03437
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
陳 たん 国立天文台, 重力波プロジェクト, 助教 (20888086)
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研究分担者 |
酒見 悠介 千葉工業大学, 数理工学研究センター, 上席研究員 (60811643)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 重力波 / 重力波望遠鏡 / 熱雑音 / 物理モデル融合型データ駆動手法 / データ同化 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、次世代低温重力波望遠鏡において最高感度周波数領域に現れるviolin mode熱雑音の影響を低減し、望遠鏡感度を改善する手法を開発する。本研究ではこのviolin mode熱雑音を、定常的な信号は物理モデルの利点を利用し、裾野や非定常性は望遠鏡内で得られるビッグデータを利用することで除去する非線形物理モデル融合型データ駆動手法を新たに開発する。現存する唯一の大型低温重力波望遠鏡であるKAGRAの前期観測(O3)データ、次期観測(O4)データを使用してviolin mode熱雑音の低減手法を検証する。
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研究実績の概要 |
2023年度では、KAGRAの観測運転O3データを用いた試験をメインに行なった。初めに観測データにおけるviolin mode熱雑音の単独の取り出しを行い、その安定性を調べた。Violin mode熱雑音のうちの1st modeである180Hz付近を抜き出し、23本以上のピークを確認し、それらには振幅の時間変動が見られた。このピークノイズが並び立つ中から1本のみを抜き出すために時系列フィルタの設計を行い、実施した。このフィルタリングした時系列データをベースデータとした。Violin mode熱雑音低減の最初のステップとして、この1つのピークの低減を簡易モデルを用いて削減を試みた。Violin mode熱雑音の簡易モデルとして振幅が時間変化する正弦波を適用して、ベースデータの一部(t=t0以前)をパラメータ決定の学習に使用し、得られたモデルを使って未来のデータ(t=t0以後)の予測を行い、実ベースデータから引き算した。0.1秒の学習データによるモデル学習で、0.2秒先の予測を行い、ベースデータから予測データを差し引くことで、対象となったその1つのピークノイズは1/10程度に低減できた。これらの結果は物理学会で発表を行うと同時に、KAGRA collaboration内の台湾をメインとするノイズ低減グループにも共有し、意見交換した。今後も継続的に議論を重ねていくこととなった。 上記のデータによる実低減試験に加え、記載の簡易モデルではなく、数値計算上で使用可能な熱雑音モデルの調査、構築を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
O3データによるviolin modeノイズの実低減試験を始められ、結果も現れてきたが、2024年元旦に発生した能登半島地震等の影響により、KAGRA自体のスケジュールに遅れが生じており、本研究にも影響が生じている。特に、実験的検証を行うための準備や、KAGRA O4データを使用した試験に遅れが出ている。下記のようにデータセットがすでにできているO3データで可能な限り検証を進めることで、リカバリーしていく。
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今後の研究の推進方策 |
KAGRAのO4での観測計画、データリリース計画に照らし合わせて、検証に使用するデータを検討していく。現在、実験検証に使用しているO3データを引き続きメインに使用していく方針をとり、O4データが利用できる時点でこれを切り替える。 技術検証としては、まず、1つのviolin modeだけでなく、複数のviolin modeピークでも、同様に短い時間でのモデル学習と予測が可能かの試験を行う。これには、2023年度に使用したモデルをさらに発展させる必要があり、現在は、重ね合わせた正弦波モデルと、より現実に近い物理モデルとして熱雑音を模擬したモデルを検討しており、これらを進める。特に後者では、鏡懸架システムの温度などといった物理パラメータを入力できるように構築中で、モデルがある程度形になったところでKAGRAで実際に得られた環境データ情報を取り込んでいく。 次に、KAGRAデータだけでなく、必要に応じてテーブルトップでの検証試験ができないかを検討する。例えば、シンプルな振り子を作成して、振り子の固定部分などにアクチュエータを設置して熱雑音を模擬したランダムな振動を挿入する。振り子先端の振動をセンサーで読み取り、提案手法によって計算機上で差し引く試験を行う。このテーブルトップでの試験では、アクチュエータ入力に任意のノイズ信号を挿入できるため、重力波信号など、差し引かれたくない信号による試験も可能となる。 上記のO3データや、テーブルトップでの試験で得られた知見を使用して、O4データにも適応していく。
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