研究課題/領域番号 |
23K03440
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
田中 万博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (90171743)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 高エネルギー重イオンビーム / QCD相転移 / クォークグルーオンプラズマ / 高密度核物質 / フェムトスコピー / J-PARC / KEK-12GeV-PS / KEK-500MeV-BS |
研究開始時の研究の概要 |
まず、KEK-PS-Boosterを用いて、どの程度の重い核種まで加速可能か、種々の技術的検討を行う。さらに、金などの重い重イオンを「大強度」で蓄積加速するには、KEK-PS-Boosterでは、磁極間隙、周長とも、必ずしも十分とは言えないため、将来的にはより大型の入射シンクロトロンに置き換えることを前提として、実験室を含む施設設計を行う。また、KEK-PS-Boosterは、建設されてから時間が経った加速器ではあるので、励磁コイルの電気絶縁性能などを十分にチェックするとともに、最新半導体技術を導入した高性能電源やモニター類を新たに設計しておき、将来の東海移設と再稼働に備える。
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研究実績の概要 |
現状のJ-PARC加速器群に重イオン入射器を新たに付加することにより重イオン加速を実現しようと考えている。これはJ-PARC加速器を陽子専用加速器として設計し始めたころからあった「夢」である。しかしながらその「夢」を実現するためには、重イオンビームを陽子換算で400MeV相当の運動量まで加速しうる専用入射器(シンクロトロン)を用意する必要が有る。私はこのような入射器として、すでに閉鎖されたKEK-12GeV-PSへの入射用ブースター加速器、KEK-500MeV-BS、が利用可のであることに気が付いた。KEK-500MeV-BSは加速器開発用の加速器としてKEKつくばキャンパスにほぼ稼働状態で保管されている。そこで計画初年度であるR5年度は、まず、この保管状況を実地確認した。結果は良好であった。次にKEK-500MeV-BSへの重イオン入射を行うための線形加速器の検討を行った。原研のタンデム加速器並びにそのエネルギー倍増用の超電導線形加速器(現存)が最も効率的な加速器であると思われたが、タンデム加速器は老朽化が進んでおり、かつ移設も困難であると判断されため、エネルギー倍増用超電導加速器部分は移設して使用するものの、タンデム加速器に対応する低エネルギー加速器部分を、新たに超電導線形加速器として製作付加する案を検討し、費用的、性能的に許容しうる結果を得た。また上記の組み合わせで構成される入射加速器群を収納する建物並びに付帯設備(受電や冷却水など)についても検討を加え、現実的にJ-PARC の敷地の入射加速器群付近に、十分な面積を確保可能であることを確認した。以上の検討結果は、R5年11月にハワイで開催された日米合同物理学会核物理分科会で口頭発表され、高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
KEK-500MeV-BSの保管状態が良好であり、事実上「いつでも」運用可能であることが確認できたのは朗報であった。これで本計画の基幹部分の装置について、その使用可能性が確認できたことになる。ただしブースター加速器用にこれまで使用されてきた電源は、やはり旧式で電力効率が低く、かつPCBや石綿などの「昔は使っても良かったが、今は使用禁止されている」部品を使用している可能性が高く、「部分的な改善」では対応が困難であり、やはり現代的な半導体交流(共鳴)電源に置き換える必要が有ることも判った。とはいえ、このことは想定範囲内である。KEK-500MeV-BSへの入射加速器として、現存する超電導線形加速器が使用可能なことが判ったことはやはり朗報であったが、その加速の低エネルギー部分を担うタンデム加速器が老朽化しており、新たに別途の超電導線形加速器を設計(購入)使用しなくてはならないことも判った。とはいえ、本件もまた想定範囲内のことである。このように本研究課題は場面場面で、技術的に若干の困難をみいだしながらも、おおむね想定範囲内という形で進行しつつあり、それゆえ「おおむね順調に進行しつつある」と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
重イオン入射用の主要な加速器であるKEK-500MeV-BS、並びにそれへの重イオン入射用の線形加速器について、その性能並びに技術的実現可能性がほぼ判明したことから、今後の本課題の推進方策としては(1)KEK-500MeB-BS用の新電源についての技術的検討と価格調査、(2)入射用超電導線形加速器の内の低エネルギー部分についての技術的検討と価格調査、を継続的に行う。と同時に、本計画に最初から包含されている(3)入射用線形加速器からのビームを用いる実験室、並びに(4)KEK-500MeV-Boosterからのビームを用いる実験室、の設計を、物理課題の選定を含めて実施する。最終的には、J-PARCへの重イオン入射用加速器群並びにそれらから得られる低エネルギー、中間エネルギーのビームを用いた物理実験のための実験室を、J-PARC の入射加速器群が現に存在しているエリア付近で見出しておく努力をする。それらが可能となって、初めて、J-PARCにおける本重イオン加速計画が、広く学会の支持を得つつ推進していかれる体制が整うものと思われる。もちろんこれらの検討状況は、学会や研究会、ワークショップなどで広く「宣伝」し、可能な限り多数の支持が得られるように努力する。
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