研究課題/領域番号 |
23K03473
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17010:宇宙惑星科学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
北島 昌史 東京工業大学, 理学院, 准教授 (20291065)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 原子・分子データ / 電子衝突断面積 / 超低エネルギー電子衝突 / 放射光 / 電子-分子衝突断面積 / 原子分子データ / 上層大気モデリング |
研究開始時の研究の概要 |
太陽から離れた距離にある惑星や衛星の上層大気の理解に必要な低エネルギーの信頼できる電子衝突断面積データは、実験的な困難さのために決定的に不足している。本研究は、放射光の二次ビームとして超低エネルギー電子ビームを生成することと、放射光の特性を活用した超低エネルギー電子分析手法を開発し、これまで困難であった超低エネルギーにおける電子衝突実験を実現する。実験は高エネルギー加速器研究機構・物質構造科学研究所・放射光実験施設の真空紫外ビームラインでの放射光共同利用実験として行い、惑星・衛星大気の成分として知られる種々の分子について、上層大気プラズマの理解に重要な断面積データを測定する。
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研究実績の概要 |
本研究は、惑星や衛星、彗星などの上層大気プラズマの理解に必須である電子-分子衝突の断面積データ、中でも1eVを大幅に下回る0.1eV(電子温度:約1000K)以下の超低エネルギー領域における衝突過程ごとの電子衝突断面積を世界に先駆けて直接測定し、惑星・衛星大気の成分として知られる種々の分子について、上層大気フプラズマの理解に重要な断面積データを提供することを目指すものである。超低エネルギー領域における衝突過程ごとの電子衝突断面積の直接測定には、大強度の超低エネルギー電子ビーム生成法の開発および超低エネルギー電子の測定法の確立が必要である。本研究では、本研究グループで開発した放射光を用いて超低エネルギー電子ビームを生成可能な「しきい光電子源」と放射光のパルス特性を利用することで解決する。 本年度は、超低エネルギー電子衝突実験装置製作のための各種の検討を行った。特に大強度の超低エネルギー電子ビーム生成法の開発に主眼を置き、これまでに本研究グループで用いてきたしきい光電子源の大幅な大強度化のための設計を行った。このために、事前に行ってきた電子軌道シミュレーションをより高精度なものに改良し、さらに現状のしきい光電子源を種々の条件下で動作させる実験を高エネルギー加速器究機構・放射光実験施設(KEK-PF)において行った。また、超低エネルギー電子の測定法の開発のために、KEK-PFにおいて大型の高分解能光電子分光装置を用いた各種の試験も行った。その結果、当初検討していた超低エネルギー電子衝突実験装置は、設計を見直すことで当初計画よりも大幅に良い結果が期待できることが明らかになった。このため、新たに得られたデータを基づいて超低エネルギー電子衝突実験装置の再設計を行った。また、既存の真空槽に改造を行い、新たに製作する超低エネルギー電子衝突実験装置を放射光ビームラインで使用する準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、当初計画に従い、事前に行ってきた電子軌道シミュレーションを高精度なものに改良し、さらに現状のしきい光電子源を種々の条件下で動作させる実験を高エネルギー加速器研究機構・放射光実験施設(KEK-PF)において行い、超低エネルギー電子衝突実験装置製作のための各種の検討を行った。さらに、KEK-PFにおいて大型の高分解能光電子分光装置を用いた各種の試験も行った。その結果、当初検討していた超低エネルギー電子衝突実験装置の設計を見直すことで、当初よりも大幅に良い結果が期待できることが明らかになった。そこで、当初計画で本年度中に予定していた、事前に行ってきた電子軌道シミュレーションによる検討に基づいた超低エネルギー電子実験装置の製作を取りやめ、新たに得られたデータを基づいた装置の再設計を本年度に行うこととした。このため、本年度の研究は当初計画に比べて超低エネルギー電子実験装置の製作に遅れが出ている。 一方、再設計により見積もられる電子ビーム強度は大幅に改善しており、当初計画より良い結果が期待される。このため、本研究で目指す超低エネルギー電子-分子衝突データ直接測定の実現には、良い方向で研究が進捗している。なお、装置を収める真空槽については、既存の真空槽を放射光実験に合わせた改造を行い、新たに製作する超低エネルギー電子衝突実験装置をKEK-PFで使用する準備を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度に、令和5年度に再設計した超低エネルギー電子衝突実験装置のうち超低エネルギー電子ビーム生成部の製作を行い、令和5年度に改造した真空槽に納めた上で高エネルギー加速器究機構・放射光実験施設(KEK-PF)に持ち込み、各種の試験を行う。この試験のための長期のビームタイムをKEK-PFに申請するとともに、試験用の電子測定装置も製作し実験装置の詳細な調整を可能とする。 また、これと並行してKEK-PFのハイブリッドモード運転における放射光のパルス特性を利用した超低エネルギー電子測定装置の設計・製作を行う。 令和7年度には、令和6年度に製作した超低エネルギー電子測定装置を組み込み、超低エネルギー電子衝突実験装置を完成させる。さらに、KEK-PFのハイブリッドモード運転でのビームタイムを申請し、放射光のパルス特性を利用した超低エネルギー電子測定法を確立する。 以上により本研究で目指す超低エネルギー電子-分子衝突データ直接測定を実現する。
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