研究課題/領域番号 |
23K03487
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村田 功 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (00291245)
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研究分担者 |
長濱 智生 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (70377779)
森野 勇 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 室長 (90321827)
中島 英彰 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 主席研究員 (20217722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | FTIR / メタン / 同位体 / メタン同位体 / 赤外分光 |
研究開始時の研究の概要 |
メタンは温室効果ガスであるとともに大気化学的にも重要な気体であるが、年々の増加率の変動が大きくその要因に不明な部分が多くある。発生源としては人為起源が多いが、メタン生成菌を介した発生の比率が高いため、気温などの年々変動の影響を受ける。それぞれの発生源の寄与率を推定する上で同位体比の変動が重要な情報源となる。本研究では、フーリエ変換型赤外分光計(FTIR)を用いた地上分光観測のスペクトルからメタン同位体を導出する手法を開発し、これをつくば・陸別・南極昭和基地の観測データに適用してその時空間変動からメタン発生源の分布や経年変化を推定する手法を確立することをめざす。
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研究実績の概要 |
令和5年度はまず13CH4についてつくばのFTIRデータを用いて解析パラメータの検討を始めた。3ミクロン帯と8ミクロン帯のそれぞれのスペクトルで、解析に使う波数領域や各種パラメータをいくつか変えながら試し、数%程度の誤差でカラム密度が導出できそうなことは確認できた。一方で、サンプリングによる他の観測の結果等を調べたところ、13CH4については季節変化や経年変化が1‰以下とかなり小さい場合が多いことが判明し、つくばの観測でもパーセントオーダーの変化は期待できそうにないため、現状ではFTIRの観測から13CH4の季節変化等を導出するのは難しいことがわかった。 次に、CH3Dについて検討した。CH3Dの場合は他の観測結果等を見ると季節変化の振幅がパーセントオーダーになることが多く、経年変化も同様にパーセントオーダーの変化が見られることがあり、13CH4より大きな相対変化が見られることがわかった。ただ、分光観測の観点からは、赤外領域のCH3Dの吸収線強度は13CH4よりも一桁以上弱いものしか存在しないため、その分S/Nは悪くなりFTIRデータからの解析精度は厳しくなる。CH3Dについても3ミクロン帯と8ミクロン帯のそれぞれのスペクトルで解析に使う波数領域や各種パラメータをいくつか変えながら試しているところであるが、まだ数%の誤差でカラム密度を導出できる状況には至っておらず、さらに検討が必要である。 なお、この同位体解析の経過報告をFTIR観測を行っている研究者の国際的な研究グループの会議 NDACC-IRWG/TCCON/COCCON Annual Meeting 2023 で発表し、情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FTIRデータからの解析手法の点からは、吸収線のデータベースを用いて赤外の観測波数領域にある13CH4およびCH3Dの吸収線強度を調べたところ、13CH4についてはそれなりに強い吸収線があったものの、CH3Dについてはそれより一桁以上弱い吸収線しかないことが判明し、CH3Dは13CH4に比べて解析精度としては不利になることがわかった。一方で、大気中での実際の13CH4やCH3Dの変動幅を他の観測の結果等から調べた範囲では、CH3Dの場合はパーセントオーダーの変動が見られるものの、13CH4は1‰以下の変動の場合が多いようであった。そのため、どちらの同位体でも観測されうる変動幅に対してFTIRの赤外分光スペクトルから導出できる精度がかなり厳しいのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の解析パラメータの検討では複数の吸収線データベースの比較や解析波数領域の変更等を試してはいるが、実際に観測スペクトルにフィッティングした際の残差を見るとうまく合っていない部分が何カ所かある。これは吸収線データベースの真値からのずれであったり温度依存性の影響であったりする可能性がある。次年度はこういった合わない部分の改善を試み、場合によってはこういった部分を避けてフィッティングするなどの対策を行い精度が向上するか検討する。 ただし、吸収線データベースの真値からのずれが解析誤差の主要因となっている場合は解析パラメータの工夫では改善しきれないので、その場合はメタン以外の成分の同位体(たとえばオゾン)についても実際の変動が観測できる可能性を探りたい。
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