研究課題/領域番号 |
23K03493
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
原 由香里 九州大学, 応用力学研究所, 助教 (30462493)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | 光化学オキシダント / 環境基準 / 温暖化 / 領域化学輸送モデル / 陸域生物圏モデル / 対流圏オゾン / 化学輸送モデル / 植物起源揮発性有機化合物 |
研究開始時の研究の概要 |
東アジア域ではPM2.5の減少傾向が観測されているにも関わらず、対流圏オゾン濃度の上昇が問題となっており、その要因は未だ明らかでない。一方気象場の長期的な変化としては、地球温暖化による気温上昇等が顕在化している。温暖化に伴う気象場の変化とオゾンの増加の関連性を明らかにすることは、今後の温暖化環境下での大気質を予測し、オゾンの前駆物質の削減対策を立案する上で重要である。本研究では2000-2022年の東アジア域に着目し、対流圏オゾンおよび気象要素の長期観測データから高温およびオゾン高濃度イベントを抽出し、温暖化に伴う気象場の変化が対流圏オゾン濃度へ及ぼす影響を数値モデルにより定量的に評価する。
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研究実績の概要 |
大気汚染物質の排出量削減により、PM2.5の日本における環境基準の達成率は2021年度に100%を達成した。一方でO3を主成分とする光化学オキシダントの環境基準達成率は一般局で0.2%、自排局で0%と残された大気環境問題となっている。オキシダントの前駆物質である人為起源のNOxおよびVOCは国内において削減対策が講じられ、排出量は減少に転じているにも関わらず、光化学オキシダントの日最高8時間値は横ばいとなっている状況である。また、地上気温と光化学オキシダントの間には正の相関があることが先行研究から示されているが、近年温暖化による気温上昇が顕著となっているため、因果関係の解明が必要である。 人為排出量におけるNOxとVOCの削減が努力されているにも関わらず日本国内の光化学オキシダントが下げ止まっている要因を明らかにすることを目的として、本研究では近年(2010-2019年)の環境省大気汚染物質広域監視システム(Atmospheric Environmental Regional Observation)を用いた光化学オキシダントの実態把握を行った。 2010年後半(2015-2019年)の光化学オキシダント平均値から2010年前半(2010-2014年)の平均値を引いた差の水平分布から、日本のほとんどの地点で光化学オキシダントの平年値は近年増加していることがわかった。一方、日本の各地域でO3の一時間値の出現頻度分布を調査したところ、どの地域においても中央値が高濃度側へシフトしていることが明らかとなった。また、O3の環境基準である一時間値が60ppbを超える割合が福岡と沖縄で微増していた。季節による濃度レベルの変化を調査するためにO3の月平均値の変化を調査し、これらの解析から日本の各地域において冬季に、福岡と沖縄では冬季と夏季においても月平均濃度の上昇している傾向が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は日本国内における光化学オキシダントの実態解明と、オンライン気象-化学輸送モデルの計算準備を行った。また気温上昇による植物起源のVOCの影響評価を行うため、植生モデルの整備・開発も行っており、ほぼ順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度行った光化学オキシダントの近年の高濃度側へのシフト要因を明らかにするため、数値モデルを用いた数値的な感度実験を行う。具体的には、気温の上昇が光化学オキシダントの出現頻度分布にどのように影響を及ぼしているか明らかにするために、①気象場を一定として数値計算を行う数値実験および、②気象場を過去の気象場に従い計算を行う数値実験の比較から、気象場が光化学オキシダントの出現頻度分布にどのような影響を及ぼしているか明らかにする。続いて近年の気象場の条件下において、一般的に光化学オキシダントの再現実験で使用されている植生モデル(MEGAN)とさらに精緻な陸域生物圏モデルによるBVOCの差を明らかにし、両植生モデルによる光化学オキシダントの再現性の精度検証を行う。
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