研究課題/領域番号 |
23K03499
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 知紀 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (20816160)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 熱力学 / 湿潤大気 / 数値流体力学 / 接地境界層 |
研究開始時の研究の概要 |
接地境界層乱流過程の理解に必要な詳細なデータセット取得のために、格子ボルツマン法を用いて大気境界層乱流数値モデルを構築する。この手法は高レイノルズ流れの数値計算への適用実績があり、並列性に優れた性質を持つものである。他の計算手法を用いたモデルや室内実験等と比較し、構築したモデルの性能の検証を行う。室内実験では検証が困難な大気条件も含めた接地層乱流の統計的性質を解析し、接地層乱流理論の適用範囲の拡張を試みる。また、時空間的に一貫性があり乱流を多角的に解析できる高精度データを提供することにより、次世代の地表面フラックスの開発基盤の発展と、それを通じた極端気象予測精度向上の推進すること目指す。
|
研究実績の概要 |
気象学および気候学において一般的に用いられている湿潤大気の熱力学の表現方法は、様々な手法により大幅に簡略化されており、それらの簡略化法は通常は熱力学系の一貫性を考慮せずに適用されている。こうした熱力学系の内部的な不整合は数値モデルの誤差要因の一つであることが知られている。成層状態を特徴づける熱力学変数の予報方法を検討する上で熱力学の表現方法は根幹部分であり、成層条件の下でのシミュレーションを実施するモデルの構築を目的とする本課題おいては重要な要素である。 本年度では、気象学的に一般的用いられている熱力学表現と内部的な整合性を考慮したものとの違いが、大気場、特に熱力学場の形成に与える影響について解析を行った。気象学・気候学的な応用に対する影響を包括的に議論するため、全球モデルを用いて2つの熱力学系を用いた感度実験を行った。実験の結果、熱力学表現の選択は熱帯対流圏の温度成層に影響を与え、気象学的に用いられている簡略化された系を用いた場合の方が熱帯上層で温度が高く、成層が安定化することがわかった。熱帯の成層が湿潤断熱線に近いことを用いて、気象学的な熱力学表現において用いられているそれぞれの簡略化の、モデルにおいて形成される温度場の違いへの寄与を定量的に解析した。さらに、熱力学表現の違いによる成層の違いは地表面温度が高くなるほど大きくなることを示した。 モデルにより予測される温暖化に伴う大気の安定化は、衛星観測により推定される値に比べて過大評価であることが過去の研究により長年知られているが、未だ原因は明らかにされていない。本研究で得られた結果はこうしたモデルと観測の振る舞いの差異に熱力学表現が関わっていることを示唆しており、精緻なモデルの構築のみならず、気候変動予測や気候変動に伴う顕著現象の変化に対する研究においても有用な知見と考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気熱力学の表現方法は、成層状態を特徴づける熱力学変数の予報における根幹部分であり、成層条件の下でのシミュレーションを実施するモデルの精緻化における重要な要素である。 接地境界層乱流への応用に向けたプロトタイプである、鉛直2次元大気モデルの構築に向け順調に進行している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度では成層の重要性から熱力学表現に着目して検討を行ってきた。この他、接地境界層乱流への応用においては LBM を用いることで表現しようとするスケールより小さなスケールの影響を取り入れる手法を考慮する必要がある。そのために、比較的計算負荷の小さな低次元の問題において、接地境界層乱流への応用上適切な予報方程式、離散化手法、大気下端の境界条件についての検討を行う。接地境界層乱流へ応用するモデルの中核部分の開発を行う。
|