研究課題/領域番号 |
23K03500
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17020:大気水圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
高橋 浩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (70357367)
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研究分担者 |
南 雅代 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (90324392)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 溶存無機炭素 / 水試料 / 放射性炭素 / 塩化ベンザルコニウム / 殺菌 / 水試料保管 / 変質防止 / 新手法 |
研究開始時の研究の概要 |
水の溶存無機炭素(DIC)分析では、試料採取から分析までの期間に生物活動によりDICが変化しないように、塩化第二水銀の添加が認知されているが、水銀の錯体形成等の影響や環境負荷が大きいことが問題である。そこで、水試料のDIC変化を防ぐ処理として、塩化ベンザルコニウム(BAC)の添加とろ過を併用した手法を確立する。具体的には、ろ過実施に関するブランク検証と最適なろ紙孔径の選択、BACの添加によるブランクの低減手順の検証、複数の天然試料を用いた処理の有効性の検証を行う。本研究により水銀を使用せずに正確なDIC分析が可能となることで、分析の効率化と安全性の向上を実現し、将来にわたって大きな貢献となる。
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研究実績の概要 |
研究のゴールである、水試料の溶存無機炭素(DIC)の測定のための試料保管に欠かせない殺菌処理手法をあらゆる水試料に適用するためには、塩化ベンザルコニウム(BAC)を用いた処理が有望である。しかし、海水や汽水試料ではDIC変化を防止する効果が落ちることが大きな問題となっている。その解決のためには、どういった要因が関係しているのかを知る必要があり、塩濃度との関係を調査した。その結果、BACの添加量が同じであれば塩濃度が高いほど、塩濃度が同じであればBACの添加量が少ないほど、保管中の水試料のDICの変化が大きい可能性があることがわかった。また、保管期間が長くなると影響が顕著になる可能性も示された。塩類がBACの殺菌効果を阻害あるいは劣化させていることが示唆された。 しかし、塩類による劣化にはある程度の時間が必要であることから、塩類による劣化以外の原因があると想定される。先行研究では、その他の原因として、BACでは不活化できない芽胞の存在が指摘されている。DICに影響を与えずに水試料に溶存している塩類のみを除去することは難しいと考えられるが、芽胞を除去するのであれば、ろ過処理が有効であると想定される。手法の確立には、ろ過処理によるバックグラウンドの変化について検討が必要であり、その評価を行った。いくつかのフィルターでろ過をした試料とろ過をしていない試料の放射性炭素濃度を比較したところ、ろ過を実施しても、有意な放射性炭素濃度の上昇は検出できなかった。このことから、BAC添加とろ過の併用は有望な手法の候補となる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、ろ過処理の手法検証と塩化ベンザルコニウム(BAC)添加の手法改良の2つを実施する計画としていた。このうち、ろ過処理の手法検証について、ろ過の実施によるバックグラウンドの変化の有無に関する実験と測定を行い、バックグラウンドの変化が認められない結果を得ることができた。さらに、フィルター孔径による生物活動の抑制効果の違いについての検証実験を実施している。 一方、BACの生物活動の抑制効果の低下に対して、塩分が影響する可能性が示された。これは、BAC添加量を変化させることで、塩濃度の高い試料に対応できる可能性を示唆しており、BAC添加の手法改良にも影響する。そのため、BAC添加の手法改良の実施よりも前に、塩類の影響について、ある程度の結果を得るべきだと判断をして、BAC添加の手法改良に関する検証を遅らせて、計画外であったが、塩類に関する検証を実施した。本検証の結果は、国内外の学会で成果報告を実施した。BAC添加の手法改良の実施は2023年度と2024年度にまたがって実施する予定でるため、検証の着手が遅れているものの、おおむね計画通りに研究が進んでいると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では、2023年度に引き続きろ過フィルターの孔径に関する検証、塩類の影響評価を実施する。フィルター孔径の検証については、ろ過と塩化ベンザルコニウム(BAC)添加の併用手法への適用についても同時進行で実施をしていく。 BACを用いた殺菌処理に関して、塩類による劣化と芽胞の再活動が重要なプロセスであると考えられる。そのため、芽胞の存在の有無を特定した条件での実験を実施する必要がある。芽胞は周辺環境の悪化により形成されることから、良好な聖域環境を提供すれば、その割合が非常に少なくなると思われる。そこで、天然水に糖を添加して微生物量を増やすと同時に芽胞量を減らした試料と、芽胞液を添加した試料を検証に用いることを試みる。検証項目としては、まずは、BACと塩類の濃度を変化させて、芽胞との関係を検討し、その後に、孔径の細かいフィルターと高濃度のBAC添加による併用手法の有効性の検証を行う。 ここまでの検証では、生物活動による分析成分の変化を防止するために必要以上に厳しい条件での処理で行っている。そのため、実際の調査での使用を想定した場合の利便性が低くなったり、バックグラウンドが高くなってしまったりすることも考えられるが、まずは、手法の有効性を検証して、その後で、手法としての処理条件の最適化に取り組む方針で実施をしていく。
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