研究課題/領域番号 |
23K03518
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17030:地球人間圏科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
行谷 佑一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (90466235)
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研究分担者 |
澤井 祐紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (20399504)
嶋田 侑眞 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (80880210)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 1960年チリ地震津波 / 津波堆積物 / 北海道 / 津波浸水シミュレーション / 波源 / 津波シミュレーション / 観測記録 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、日本国内で比較的観測記録が充実しており且つ地質学的痕跡も残されている1960年チリ地震津波に焦点を絞り、日本国内のデータから同津波の波源を推定することを試みる。ここでいう観測記録とは、主に潮位記録、津波の高さ、および浸水範囲等を指す。これに加え、同津波の津波堆積物の調査を日本国内で実施する。津波堆積物の分布から浸水範囲等を復元し、この情報も取り入れて波源解析を実施する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、1960年チリ地震津波の浸水状況を解明するため、北海道沿岸において地質調査を実施するとともに、津波浸水シミュレーションを行うための準備作業を実施した。また、次年度以降の地質調査地の検討も行った。 地質調査は、津波堆積物の採取ならびに分析を実施することで同津波の浸水範囲を推定することが目的である。まず2023年10月に北海道道東沿岸を訪れ、適切な調査地を選定するための下見調査を実施した。この結果をもとに、北海道浜中町の霧多布湿原において津波堆積物調査を実施した。目的とする津波堆積物は1960年チリ津波によるものであることから地表面付近の堆積物を採取する必要があり、この点に留意した。現在、この採取した試料を分析中である。 津波浸水シミュレーションを行うための準備作業は、1960年チリ津波来襲時の地形復元を実施した。具体的には、国土地理院が発行する2万5千分の1地形図の旧版のうち、できるだけ1960年チリ津波直前(一部直後もあり)に発行されたものを購入した。入手したものはまずは北海道沿岸のものに限った。この地形図を現在の地形図とともにGIS上で重ね合わせ、おもに防波堤や埋め立て地などが1960年以降に新設されていないか確認を行った。この知見を、津波浸水シミュレーション用の地形作成に反映させる作業を現在も引き続き実施中である。 次年度以降の地質調査地の検討については、とくに調査候補地における地権者の情報について行政機関を通じて確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度はおおむね計画通りに研究を進めることができた。 津波堆積物の調査については、北海道道東の浜中町の湿地帯を対象に合計8地点において掘削調査を実施した。掘削した堆積物は凍らせたのち、冷凍便にて研究室に輸送した。現在、その堆積物試料を分析中である。 津波浸水シミュレーションの準備作業については、まず国土地理院が公開する北海道太平洋沿岸の2万5千分の1地形図の出版時期を調査し、1960年チリ地震津波の直前(場合によっては直後のものもあり)の地形図の版(リスト番号)を確認した上でこれらの版を購入した。この地図をGISで読み込み、現在の地図上に重ね合わせることで、防波堤や埋め立て地などが1960年以降に新設されていないか、すなわち1960年チリ地震津波を再現するためには現在の津波計算用の地形を修正する必要がないかについて検討を行った。この作業は現在も継続中である。 また、次年度以降の地質調査の候補地について、その地権者の情報を役場や法務局等で確認するなどした。 1960年チリ地震津波の波源推定を推定するために必要な、北海道の地質調査や津波浸水シミュレーション用の地形を整備について計画通りに進んでいると考えられたため全体的には順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降も引き続き、地質調査と津波の浸水シミュレーションを平行して進める。地質調査は、2023年度に北海道浜中町で掘削した津波堆積物の分析を引き続き実施する。また、北海道道東における新たな調査地において津波堆積物の掘削調査を実施するとともに、三重県熊野灘沿岸や千葉県房総半島沿岸においても地質調査を実施する。1960年津波の、実測された津波の高さ分布によれば、道東および熊野灘では周辺に比べて津波の高さが高く、房総半島では逆であることから、これらの地域における地質調査の結果は、津波浸水シミュレーションを行う上で制約的なデータになることが期待される。 このほか、津波の高さや浸水範囲といった実測データの入手も実施する。これらは自治体の郷土史等といった既存文献にまとめられているものもあり、こういった文献の調査も実施することで、1960年津波の日本国内のデータの拡充に努める。また、引き続き国土地理院が発行する旧版地図を入手するなどして、1960年地震津波当時の地形を作成していく。 以上の収集データを拘束条件とし、1960年チリ津波の波源モデルの構築を目指す。さらには、ここで得られた知見を通じ、1960年チリ津波に限らず日本国内で発見されたデータから遠地津波の波源を推定するための手法を構築することも目指す。
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