研究課題/領域番号 |
23K03532
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
糀谷 浩 学習院大学, 理学部, 准教授 (60291522)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 定圧熱容量 / 高圧合成 / 示差走査熱量測定 / 高圧ラマン分光測定 / グリューナイゼン定数 / 非調和性 / 定積熱容量 / マントル鉱物 |
研究開始時の研究の概要 |
地球マントルの主要構成鉱物の重要なFe端成分であるカンラン石型Fe2SiO4やスピネル型Fe2SiO4などについて、定圧熱容量を理論的に扱うためには、調和振動以外の寄与による定積熱容量に内在した非調和性の要因を知る必要がある。 本研究では、Fe2SiO4のFe2+を同じ3d遷移金属元素の2価陽イオンであるMn2+、Co2+、Ni2+に置換したカンラン石型およびスピネル型Mn2SiO4、Co2SiO4、Ni2SiO4について、結晶化学的見地からCvに内在する非調和性の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
地球マントル岩石の主要構成鉱物であるオリビン型(Mg,Fe)2SiO4やスピネル型(Mg,Fe)2SiO4を熱力学的に取り扱う際に、Fe端成分であるオリビン型Fe2SiO4およびスピネル型Fe2SiO4の高温の定圧熱容量が必要となる。これらのFe端成分鉱物の実測による定圧熱容量は、準調和近似による格子振動のみを考えたものよりも大きな値を示すことが分かっているが、どのような熱容量からの寄与なのかはまだ明確になってはいない。この研究課題では、Feが3d電子を含む遷移金属元素であることより、その過剰な熱容量が3d電子に由来すると予想した。そこで、Fe2+とは異なる数の3d電子数を持つMn2+やNi2+、Co2+に置換した同じ結晶構造を採るアナログ物質について、結晶化学的見地から熱容量を解釈することを目的としている。 格子振動の定圧熱容量からの余剰分を正確に把握するためには、高精度の実測による定圧熱容量データと信頼性の高い格子振動寄与による定圧熱容量の推定値の両方が必要となる。今年度では、まずオリビン型Mn2SiO4、Ni2SiO4、Co2SiO4の1気圧での合成を行った。これらの物質は、出発組成として化学式通りの化学量論比で合成を始めると、固相反応法での加熱過程における遷移金属元素のロスのためにSiO2成分が余ることが分かり、単相合成のための手法の確立がなされた。 オリビン型Mn2SiO4については、示差走査熱量測定により世界で初めて830 Kまでの高温熱容量データの取得に成功した。また、スピネル型Co2SiO4の熱容量測定結果については、従来の測定値に比べより高温側で低い値を示すことが判明した。さらに、オリビン型Co2SiO4の高圧ラマン測定を行うことにより、定圧熱容量の格子振動モデル計算を行うために必要なグリューナイゼン定数を 1.01(7)と決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では、今年度はオリビン型Mn2SiO4、Ni2SiO4およびCo2SiO4の1気圧下での合成と、スピネル型Ni2SiO4およびCo2SiO4の高圧合成を行うことになっていた。さらに、高圧合成まで順調に進んだ場合に、スピネル型Co2SiO4とNi2SiO4の示差走査熱量測定(DSC)法による高温熱容量測定、および高圧ラマン分光測定を行う予定であった。 今年度では、オリビン型Mn2SiO4、Ni2SiO4およびCo2SiO4の1気圧下での単相合成と、スピネル型Ni2SiO4およびCo2SiO4の高圧合成が完了した。それらに加えて、オリビン型およびスピネル型Co2SiO4についてDSC法により高温熱容量データの測定を行った。さらに、オリビン型Co2SiO4について高圧ラマン分光測定を行い、熱的グリューナイゼン定数の決定も行った。また、当初予定していなかったが、オリビン型Mn2SiO4は約400 Kまでの熱容量データしか存在していないことが分かったため、300-830 Kの温度領域において高温熱量データの取得を行った。
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今後の研究の推進方策 |
既存のオリビン型Ni2SiO4の高温熱容量データが、本研究を遂行するために要求される精度を満たしていないことが判明したため、スピネル型Ni2SiO4と併せてDSC法による測定を行う。 さらに、スピネル型Ni2SiO4およびCo2SiO4について、多結晶体試料の高圧合成を行い、回収試料を砕かずに塊のまま用いて、PPMS装置により低温熱容量データの取得を行う。 また、オリビン型およびスピネル型Ni2SiO4、スピネル型Co2SiO4、そしてオリビン型Mn2SiO4の高圧ラマン分光測定を行うことにより、それぞれの物質の熱的グリューナイゼンパラメータを決定する。格子振動のみによる熱容量を推定する際、非調和振動項の計算に熱膨張率が必要となる。当研究では、高圧ラマン分光測定により得られた熱的グリューナイゼン定数を適用し、高温での熱膨張率を理論的に推定することになる。その推定値を制約するために、スピネル型Ni2SiO4とCo2SiO4およびオリビン型Mn2SiO4の高温X線回折測定を行い、実測可能な温度範囲における熱膨張率も決定する。
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