研究課題/領域番号 |
23K03539
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉澤 和範 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70344463)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | リソスフェア / アセノスフェア / 大陸 / LAB / レーマン面 / ベイズ推定 / 地震波 |
研究開始時の研究の概要 |
安定大陸が数10億年に渡り存在するには,大陸プレート下の流動層や縁辺部の低粘性域が重要な役割を果たすことが分かってきた.しかし従来の地震波解析では,大陸プレート底面の解像度が不十分で,大陸底面やその下の低粘性層の空間分布は不明瞭である.本研究では,異なる感度を有する実体波と表面波を用い,最新のベイズ推定の手法に基づいて,大陸プレート底面の高精度マッピングを行う.さらに,流動層の下限と考えられるレーマン面や,リソスフェア・アセノスフェアの地震波速度異方性との関係を精査し,マントル対流による大陸底面の引きずり効果の実態など,大陸プレートの水平移動や変形に関わるメカニズムの解明を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究では,長期にわたり安定的に存在する大陸リソスフェアの底面の空間分布やその状態に主な焦点をあて,リソスフェア-アセノスフェア境界(LAB)や,その下のアセノスフェア底面に相当するレーマン面等の高精度イメージングと,大陸移動・進化の過程の解明を目指している.本年度は,これまで代表者のグループで進めてきたマルチモード表面波とレシーバ関数(RF)を用いたベイズ推定に基づく構造解析法の更なる高精度化に向けた作業や,豪州大陸域への応用,モンゴル地域を中心としたユーラシア大陸東部地域の異方的S波速度モデルの構築等を進めた.観測点直下で大きく水平変化する境界面の検出には,入射方向に依存するレシーバ関数解析が有効であるが,その際,観測点方位のずれが影響する可能性がある.そこで,豪州大陸内の観測点について,水平成分方位の推定作業も行った.この結果,提供されたカタログ値とは異なる方位のずれを示す観測点も明らかとなった.今回新たに構築した観測点毎の水平方位カタログにより,水平成分の解析精度が向上し,今後,異方性媒質や傾斜した境界面でのRF解析,ラブ波の位相速度解析等での精度改善が期待される.現在,観測点の水平方位補正カタログやその影響を考慮したRF解析の応用について,国際誌への投稿準備を進めている.また,東アジアの大陸構造について,マルチモード表面波の解析から,シベリアや中国のクラトン領域の分厚いリソスフェアと,中央アジア造山帯の薄いリソスフェアとの明瞭なコントラストがイメージングされた.この成果は,国際学術誌に投稿中である.さらに,表面波振幅の非線形波形インバージョン法に基づき,上部マントルの非弾性減衰を推定する新手法の開発も進めている.これにより,大陸下のリソスフェア・アセノスフェア内の減衰構造の空間分布推定も期待され,LABやレーマン面のさらなる定量的制約に資することが期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
レシーバ関数解析や表面波(特にラブ波)解析に欠かせない水平成分方位の解析手法を確立し,今後の入射方位依存性も考慮したRF解析や,ラブ波位相速度推定の大幅な改善が期待できる.また,豪州におけるRF解析や,東アジア地域における新たな表面波解析作業が進展している.
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発した水平方位の推定・補正の手法をベースに,レシーバ関数解析や表面波位相速度の計測精度を改善し,ベイズ推定によるRF・表面波の同時インバージョン法を,世界の大陸域に適用していく.これにより,クラトン域や造山帯などの大陸リソスフェアの底面形状や,アセノスフェア内の速度や異方性の状態を明らかにしていく.計算時間を要するベイジアンインバージョンの解析の効率化のため,北大スパコンの活用や研究室の現有機材の拡充も進める.
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