研究課題/領域番号 |
23K03548
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田上 高広 京都大学, 理学研究科, 教授 (80202159)
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研究分担者 |
河上 哲生 京都大学, 理学研究科, 教授 (70415777)
末岡 茂 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究副主幹 (80634005)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 熱年代学 / 新潟神戸歪集中帯 / 北アルプス / 越後山脈 / 谷川岳 / 隆起-削剥 |
研究開始時の研究の概要 |
日本列島の内陸型地震の発生を理解する上で重要な鍵となる新潟神戸歪集中帯の長期変形過程を明らかにするために、近年進展の著しい低温領域の熱年代学を複合的に用いて長期変位速度の時空分布を高精度決定することを目指す。岩石に含まれるアパタイトとジルコンなどを対象に、(U-Th)/He年代測定とフィッショントラックデータの熱史インバージョン等を行い、母岩の隆起-削剥-冷却過程を定量的に復元する。新潟神戸歪集中帯の北東側山岳地域を構成する北アルプスと越後山脈を中心に、岩石試料を系統的かつ稠密に採取し分析することにより、ネオテクトニックな時間スケールにおける隆起-削剥速度の時空分布を精密に決定する。
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研究実績の概要 |
日本列島の内陸型地震の発生を理解する上で重要な鍵となる新潟神戸歪集中帯の長期変形過程を明らかにするために、近年進展の著しい低温領域の熱年代学を複合的に用いて長期変位速度の時空分布を高精度決定することを目指している。基盤岩の花コウ岩類に含まれるアパタイトとジルコンなどを対象に(U-Th)/He年代測定とフィッション・トラック(FT)分析を行い、母岩の隆起-削剥に伴う冷却過程(熱史)の高精度解析を行うことが中心となる。 今年度は、新潟神戸歪集中帯の北東側山岳地域を構成する北アルプスと越後山脈を中心に研究を進めた。特に、越後山脈の西南部に位置する谷川岳地域について、熱年代データを用いた低温領域の熱史解析の進展により、3-1 Ma頃に広域的な冷却があったことが明らかになってきた。当該地域の平均的な地温勾配(40-60 /km)を考慮すると、平均的な削剥速度は0.3-1.7 mm/yrと推定される。 谷川岳地域の基盤岩を構成する花コウ岩類について、ジルコンのU-Pb年代が約6-3 Maと得られることから、最も若い3 Ma頃のマグマ貫入による2次的な加熱が上記の冷却史に影響を及ぼす可能性がある。そこで、1次元の数値計算により、貫入に伴う熱の生成-拡散-移流を定量的に評価した。その結果、当該地域のテクトニックな条件下では、熱影響は無視できることが示唆された。 加えて、角閃石地質圧力計により、3 Ma頃に形成された基盤岩の形成深度が約4-9 kmと求められることから、平均的な削剥速度は1-3 mm/yrと推定される。これは、上記の熱年代データからの推定値と誤差の範囲で矛盾しないことから、当該地域について、ネオテクトニックな長い時間スケールの削剥速度を初めて明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、越後山脈の西南部に位置する谷川岳地域について、熱年代データを用いた低温領域の熱史解析が順調に進み、1次元の数値計算と角閃石地質圧力計も加えて、当初予想していた以上の興味深い成果が得られたため。また、光励起ルミネッセンス(OSL)法と電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、北アルプス立山地域などでの熱年代データ解析も進んだことから、当該山岳地域について今後のさらに詳細な隆起-削剥史の復元とテクトニックモデルの構築が大変期待されることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
年度が順調に進んだので、本年度はまずその研究成果の取りまとめと論文投稿を進める予定である(米国地球物理学連合学会誌などを予定)。加えて、谷川岳地域については、基盤岩の花コウ岩類に含まれるアパタイトとジルコンなどを対象に(U-Th)/He年代測定とフィッション・トラック(FT)分析などをさらに行い、母岩の隆起-削剥に伴う冷却過程(熱史)の空間的広がりを明らかにする。 具体的な研究の実施計画は以下の通りである。 (a)地質調査と試料採取(研究分担者:河上、末岡): 当該山岳地域において、花崗岩類を中心に基盤岩を系統的に調査し、それぞれ約10地点で岩石試料を採取する。 (b)年代測定と熱史復元(研究分担者:末岡、河上 研究協力者:Kohn、塚本、King): 岩石からアパタイトとジルコンを精選分離し、(U-Th)/He年代測定とFT分析等を行う。温度-時間プロット、FTインバージョン等で解析することにより、試料採取地点ごとの岩石の温度-時間経路(熱史)を決定する。地下の温度構造を前提として、熱史から隆起-削剥過程を定量的に復元する。角閃石地質圧力計が適用可能な場合には、U-Pbジルコン年代測定を組み合わせて固結深度と平均上昇速度の制約を行う。 (c)熱年代分布・データ統合(研究分担者:末岡 研究協力者:Malatesta、鷺谷、深畑): 上記3地域において熱年代データを取りまとめ、長時間スケールの隆起-削剥速度分布を明らかにする。これをGPSなどの測地学的データ(Sagiya, 2004 など)並びに段丘面などの地形学的データ(Ota et al., 1992 など)と比較し、異なる時間スケールでの変位速度の違いを検証する。そして、既存の地質データや地球物理学的知見も統合し、長期非弾性変形の時空間分布の全体像を明らかにする。
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