研究課題/領域番号 |
23K03557
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 快次 北海道大学, 総合博物館, 教授 (70400033)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 恐竜 / 進化 / 古生物 |
研究開始時の研究の概要 |
私たちの研究により,恐竜時代の終わりの日本が描けるようになってきた.それは、北海道のカムイサウルスとパラリテリジノサウルスや兵庫県のヤマトサウルスに代表される.これらの世界的な価値は「海の地層から発見された」ことにある.世界的に見ても海の地層から発見されている恐竜化石は少なく,海岸地域に棲んでいる恐竜の生態系は,世界的にまだ不明瞭である.その一方で,日本,特に北海道には海の地層が広がっており,そこからは未研究および再研究が必要な恐竜化石が発見されている.そこで,本研究は,北海道の恐竜化石に注目し,世界でもほぼ研究されていない白亜紀後期の海岸地域に棲んでいた恐竜の進化や生態系復元を目的とする.
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研究実績の概要 |
本研究で対象になる標本は,小平町のハドロサウルス類,中川町のテリジノサウルス類パラリテリジノサウルス,夕張市のアンキロサウルス類,芦別市のティラノサウルス類の4点を中心としている.主な研究方法は,比較研究,系統解析,進化速度,生息域変遷過程の解析,機能形態,組織分析などを行っている.小平町のハドロサウルス類に関しては,記載と比較を進めているが,鍵となるのは腸骨に残された特徴であることがわかってきた.更なる比較と解析によって,その他の恐竜との関係性の解明が期待できる.中川町のテリジノサウルス類パラリテリジノサウルスに関しては,これまでの研究で特異な進化をしていることを指摘してきたが,その他のテリジノサウルス類との比較研究の結果,指の可動域だけでなく,手首や肘の可動域が重要であることがわかってきた.また,令和5年度は当時の東アジアの亜大陸の東端であった日本と,西端の海岸線であったウズベキスタンとの比較を行っており,私たちの調査によってパラリテリジノサウルスに類似する恐竜を発見した.夕張市のアンキロサウルス類については,論文執筆を進めているところである.芦別市のティラノサウルス類に関しては,より詳細な比較研究を行なっており,また新しいティラノサウルス類の系統解析を行っており,新知見が見えてきている.最後に,私たちの研究は,恐竜の起源や多様化において,海岸地域が重要であることがより明らかになってきている.令和6年度以降,それぞれの恐竜の研究だけでなく,この研究期間に海岸地域が恐竜の大陸間移動にどのように影響したか研究を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で記したように,本研究で対象になる標本は,小平町のハドロサウルス類,中川町のテリジノサウルス類パラリテリジノサウルス,夕張市のアンキロサウルス類,芦別市のティラノサウルス類の4点を中心としている.小平町のハドロサウルス類は,腰と足の骨が発見されているが,この骨標本の保管場所を北海道大学に移し,記載と比較を開始している.比較可能な形質としては,腰の骨がカギになることがわかってきた.中川町のテリジノサウルス類パラリテリジノサウルスに関しては,本研究によって発見されたウズベキスタンの恐竜に類似することがわかった.また,モンゴルの恐竜と比較することによって,採餌のための爪の機能が解明されてきており,さらに行動にも深く関係している可能性が出てきた.夕張市のアンキロサウルス類は,まだ研究中であるが,新しい恐竜である可能性が出てきている.芦別市のティラノサウルス類の化石に関しても,モンゴルの恐竜との類似性,そしてティラノサウルス類そのものの新しい進化過程がわかりつつある.
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの恐竜の研究を継続しつつも,同時代の海外の恐竜との比較が重要であることがわかってきた.特に,モンゴルとウズベキスタンが重要になってきており,今後も調査による追加標本の獲得により,日本の海岸線に棲んでいた恐竜たちの進化や生態復元が期待される.海外の研究や調査が重要になる一方,円安や物価高のため,予算に制限がかけられてしまうことが不安である.海外での活動をさらに効率化し,渡航の回数や日数を調整することで,本研究を成功に導くように努める.いずれにせよ,研究自体は概ね順調であり,論文出版のために十分な情報が手に入っている.
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