研究課題/領域番号 |
23K03565
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17050:地球生命科学関連
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
今井 拓哉 福井県立大学, 恐竜学研究所, 助教 (40786993)
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研究分担者 |
河部 壮一郎 福井県立大学, 恐竜学研究所, 准教授 (50728152)
服部 創紀 福井県立大学, 恐竜学研究所, 助教 (60847317)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 恐竜 / 古生物学 / 古生態学 / X線CT解析 / CT |
研究開始時の研究の概要 |
絶滅主竜類である恐竜において、意思疎通による社会性の実態には不明点が多い。現生主竜類では、成長段階によって異なる鳴き声による種内意思疎通(VISC)が行われ、社会性形成に役立っている。そこで本研究では、社会性を持つ恐竜ヒパクロサウルスに着目し、本属におけるVISCの社会性形成に対する役割を検証する。ヒパクロサウルスは、様々な成長段階の化石が現存し、鼻腔と内耳の形態から発声音域と可聴音域を推定できるため、各成長段階における「発していた音と聴いていた音」を探ることができる。恐竜における社会性維持の手段をVISCから評価するという点で、絶滅主竜類の繁栄に関する理解が深まると期待される。
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研究実績の概要 |
本研究では,社会性が示唆される恐竜ヒパクロサウルスにおいて,同種における鳴き声コミュニケーションの解明を目指している。その手法として,同種の各成長段階(成体・亜成体・幼体・孵化幼体)において鼻腔と蝸牛管形態をX線CT解析により可視化し,解析することで,発していた鳴き声の波長と,聞いていた音の両方を復元する。 R5年度では研究協力者であるDavid Evans博士からヒパクロサウルス頭骨一点を借用した。本標本(ROM53593)は,アメリカ合衆国モンタナ州北部から産出した,幼体(生後1年未満)のものである。本標本の鼻腔と蝸牛管形態を立体化し,可視化するために放射光施設SPring-8(兵庫県佐用町)において,位相差X線μCTスキャンを行った。CTスキャンは同施設のBL20B2で行い,加速電圧は110keV、スキャン幅は42,400μm,断層画像の解像度は4096*1124,画素サイズは10.34μm/pixelであった。得られた断層画像は鮮明であり,鼻腔をはじめとする頭骨内の空洞はもとより,骨組織の微細構造まで可視化された。 CTスキャンの結果は,現在,3D解析用の画像処理コンピューターと,3D解析ソフトウェアAmiraを用いて解析中であり,今年度中に立体構築を行う。ヒパクロサウルス幼体のX線CT解析はこれまで行われたことがなく,同種の幼体における解剖学的な詳細の記載や,成長過程における頭骨の成長について理解が進むものと思われる。また,鼻腔と蝸牛管形態の復元を行えれば,生後1年未満のヒパクロサウルス幼体において,発していた鳴き声と聞いていた音が解明できることから,幼体同士や幼体と親における鳴き声コミュニケーションの実態を理解できると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R5年度の当初予定では,Royal Ontario博物館を訪問の上,研究協力者のDavid Evans博士とともに複数のヒパクロサウルスの標本についてCT解析を行う対象を選定する予定であった。しかし,R5年度は先方の都合がつかず,同作業はR6年度に延期となった。この点では,本研究は当初予定からやや遅れが出ていると言える。 一方,SPring-8での幼体ヒパクロサウルスのCT解析とそのデータの検証は進んでいることから,R6年度中には同標本に関する研究成果を発表できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度に行えなかったRoyal Ontario博物館の訪問を,R6年度夏季に実施予定である。また,利用できるデータを増やすために,David Evans博士を通じてヒパクロサウルスの属するハドロサウルス科において,ヒパクロサウルスを含む頭骨のX線CTデータを収集する。また,すでにX線CT解析を完了したROM53593については,頭骨形態の記載と,鼻腔形態や蝸牛管形態の復元を行い、この成果をまずは学会発表にて広く普及する。
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