研究課題/領域番号 |
23K03587
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 淳 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40760335)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 機械学習 / 磁気特性 / ナノ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,機械学習アプローチに基づき,材料の磁気特性を原子レベルで評価するための枠組みを構築する.本研究にて構築する機械学習システムは,従来の磁気特性評価手法と比較して圧倒的に計算負荷が小さいため,従来手法では実現困難であった大規模ナノ構造体の磁気特性評価が可能になる.主な実施内容は以下のとおりである. ・第一原理計算に基づく電子状態解析により,原子構造と磁気特性の関係についての学習データベースを構築する. ・磁性材料の原子構造および磁気特性を正確に予測する機械学習モデルを作成する. ・得られた機械学習モデルの実証試験を行う.様々な磁性材料を対象とし,安定な原子構造および磁気特性を評価する.
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研究実績の概要 |
個々の原子のレベルで材料の磁気的特性を評価することを目的として,機械学習モデルの開発を行った.本年度は,機械学習モデル構築の第一段階として,(1) 鉄(Fe)単元系に対する学習データの収集,および (2) 機械学習の実行と方法論の検討を進めた. (1) 密度汎関数理論に基づく第一原理計算によって様々な結晶構造・原子配置でのFeの電子状態を解析し,原子構造と電子状態密度および磁気モーメントとの関係のデータを網羅的に取得した.特に,Feの主要な結晶構造である体心立方格子(BCC)および面心立方格子(FCC)構造に対して各種の変形モードのひずみを与えた構造や,原子空孔を持つ構造を主な対象とした.また,第一原理計算により得られる大量のデータを効率的に処理するための解析環境 (スクリプトなど) を整備した. (2) 人工ニューラルネットワーク (ANN) モデルを用い,機械学習を実施した.基本的なネットワークの構成は,研究代表者らが先行研究にて開発した電子状態解析のためのモデルと同様に設定した.また,データの取得および機械学習の実行と並行して,予測の精度・信頼性を向上させるため,ネットワークの構成の再検討した.加えて,機械学習モデルを効率的に設計するための検討を進めた.特に,ANNモデルにおいて人為的に設定する必要のある,いわゆるハイパーパラメータを最適化するための方法論を構築した.ANNモデルのネットワークの再構成およびハイパーパラメータ最適化法の実証については,次年度以降に実施する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね申請当初の研究計画に沿って進行しており,大きな問題は生じていない.第一原理計算による機械学習データ収集は,研究代表者が先行研究において開発した解析ツール (データ処理を自動実行するためのスクリプトなど) を援用することで効率化した.また,必要に応じて新たな解析ツールを開発した.現時点ではFeに対して必要な全てのデータの取得が完了したわけではないものの,主要なデータの大部分は既に取得しており,機械学習によるパラメータ最適化と実証試験に移行できる状態にある. また,人工ニューラルネットワークモデルのハイパーパラメータを系統的に決定する方法を検討した.それにより,対象とする材料や物性などに応じたモデルの最適化プロセスが効率化.そのため,多元系材料(次年度以降に解析予定)のような複雑な材料を対象とする場合であっても,学習に問題が生じた際の改善が容易となると考えられる. 当初の計画からの主な変更点としては,研究代表者の所属研究機関の移動などの諸事情に伴い,本年度に購入予定だった計算機の購入時期が次年度以降へ後ろ倒ししたという点が挙げられる.ただし,他の計算リソースを本研究の遂行のために代替的に利用したため,上述の計算実施計画(特に機械学習データ取得)に対して大きな影響は無かった. 以上を総合し,本研究は概ね順調に進行していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり,本年度の研究計画は概ね計画通りに進行しており,次年度以降も当初の計画どおりに各項目を実施することを予定している(研究計画に関して特筆すべき大幅な変更は無い).具体的な次年度の実施内容としては,Feに対する学習データ取得および機械学習・動作検証を完了する予定である.また,機械学習の対象とする材料種として,Fe単元系に加えて,Ni単元系,Fe-Ni二元系などへ順次拡大することを計画している. 機械学習モデルの実証段階においては,充分な学習精度が達成できないなどの問題が生じる可能性がある.その場合には学習データセットやニューラルネットワークモデルの構成を再考する必要があるが,本年度に検討・開発したハイパーパラメータ決定法などをベースとして,ニューラルネットワークモデルの再設計を行うなどの方法で対処する. また,次年度には,本年度から延期していた計算機の新規購入を予定している.
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