研究課題/領域番号 |
23K03590
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18010:材料力学および機械材料関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 直樹 大阪大学, 大学院工学研究科, 講師 (00802092)
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研究分担者 |
林 高弘 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (30324479)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 接着接合 / 超音波共振 / 接着強化 / 樹脂 / 硬化モニタリング / 粘弾性 / 接着 / 強度評価 / 非破壊評価 |
研究開始時の研究の概要 |
構造の軽量化を促進する接着接合は,さらなる省エネルギー化の実現に向けて必要不可欠な技術である.しかし,接着条件のばらつきが作製した継手の特性に大きく影響するため,接着前処理が被着体に対して行われるのが一般的である.本研究では,接着継手に超音波を入力した際に発生する共振現象が被着体と接着剤の結合に与える効果について検討を行う.接着剤の硬化時に入射する超音波の周波数や入力時間が継手の強度に及ぼす影響を調べるとともに,測定した超音波応答に基づく接着状態評価法の構築を目指す.
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研究実績の概要 |
年度当初の研究実施計画に沿って,接着時に超音波を用いた共振処理を実施できる実験系の構築を行った.これにより,薄板の接着接合を対象とした超音波パルスエコー測定や超音波振動の印加が可能となった.接着層からの反射スペクトルに関して理論的な定式化を行い,接着層の共振周波数を実験的に取得したスペクトルから推定する手法を構築した.共振周波数と共振点における反射スペクトル値は接着剤の粘弾性特性と関係付けられる.実験の結果,これらの値は接着剤の硬化に伴って変化し,接着剤の粘弾性特性をモニタリングすることが可能となった. これらの結果を受けて,硬化中の接着剤層の超音波共振が継手の接着強度(引張せん断強度)に及ぼす影響について,印加する超音波振動の周波数や振幅,接着剤の種類を変えて検討を行った.硬化中に共振周波数が変化するという前述の知見を基に,初期の共振周波数を用いて周波数変調した超音波振動を印加し,接着強度に影響が現れるか検討を行った.その結果,高じん性接着剤では本処理により引張せん断強度の向上が確認された一方,ぜい性接着剤では顕著な変化が見られなかった. 上の検討ではすべてバルク波を用いており,超音波探触子を継手表面に設置する必要がある.これに対し,構造に沿って伝わるガイド波を用いると探触子を接着部から離れた位置に設置できると考えられる.ガイド波による共振処理の可能性を検討する前段階として,ガイド波による接着層の特性評価に関する実験と数値解析についても検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題開始時に想定していた初年度の計画をおおむね完了することができたと考えている.2023年度は,接着層が示す共振周波数の同定方法を作成できたことに加え,接着剤硬化中の特性評価や共振処理を実施できる状態となった.接着剤の硬化モニタリングに関しては,縦波による評価を実施できたほか,ガイド波による評価に向けた基礎的な検討を行うことができた.共振処理に関しても,接着強化の実現に向けた基礎的な知見が得られており,一定の成果を上げることができたと考えている.得られた研究成果に関して2件の国際会議発表や2件の招待講演を行ったほか,結果の一部について学術誌への論文投稿のための準備を進めている.以上の内容から,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
接着剤の硬化モニタリングと接着強化法の高度化に向けて,硬化中の接着剤と超音波が示す相互作用についてさらなる検討を進める.接着剤の硬化モニタリングでは,接着剤の適当な粘弾性モデルについて考察を行い,モデルの各特性が超音波応答に与える影響を明らかにするとともに,それらの推定方法を構築する.この手法を基に,温度など接着剤の硬化に影響を及ぼす因子について実験的な検討を行い,硬化中の粘弾性特性の変化についてより詳細な知見を得る予定である.また,2023年度は超音波共振処理によって接着強度の変化が見られたが,その原因について力学的な考察を行う必要があると考えている.2024年度は,接着層厚や使用する共振モードの変更,破面の観察などを通して本処理法の有効性についてさらに検討を進める.
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