研究課題/領域番号 |
23K03603
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
早川 伸哉 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10314080)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | レーザ接合 / 微細構造 / 樹脂流動 / 押さえ圧 / 接合面温度 / 放射率 / 前処理 / 接合強度 / インプロセス測定 |
研究開始時の研究の概要 |
金属と樹脂のレーザ接合において金属部材の接合面に形成した微細構造に樹脂が流入すると光学特性が変化する.そのメカニズムを解明することと,その現象を利用して接合面温度をインプロセスで測定する方法を確立することが本研究の目的である.前者では温度場と電磁場のシミュレーションを行い,樹脂流入の程度が光学特性に影響することを検証する.後者では接合加工中に時々刻々と変化する接合面の放射率をインプロセスで測定し,温度測定システムとして構築する.
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研究実績の概要 |
① 接合面のレーザ光反射率・放射率の解析 金属接合面に微細凹凸構造を形成するとレーザ光吸収率が増大し,その微細構造に樹脂が流入すると接合面の放射率が減少する.この現象を解明するための第一段階として,金属接合面の微細構造に樹脂が流入する現象を解明することを目的として,温度場と流れ場の解析を行った.接合面の微細凹凸構造により金属と樹脂の接触状態が一様ではないため,複雑な温度場と流れ場が形成されることが予想された.解析では金属側の微細凹凸構造を周期的な矩形でモデル化した.はじめに温度場のみの非定常解析を行った結果,接合面の温度が200℃まで上昇したときに接合面内に生じる温度差は1℃程度であり,微細構造に流入する程度の板厚方向の温度差も2℃程度であることがわかった.この結果から,樹脂流動の解析は温度場と連成することなく等温流体を仮定できることがわかった. そこで次に,流れ場のみの解析を行った.その結果,樹脂が金属微細構造に流入する駆動力として試験片を固定するための押さえ圧が重要であり,表面張力の影響は小さいことがわかった.また,細長い微細孔の奥深くまで樹脂が流入することが確認でき,過去の実験結果の裏付けが得られた. ② 接合面温度のインプロセス測定 放射温度計に設定すべき放射率が接合の形成に伴って変化するため,放射率をインプロセスで求めて更新するシステムを構築した.接合用レーザ光の反射強度を測定するセンサの出力をパソコンに取り込み,放射率を算出して放射温度計に入力した.これにより放射率一定の場合と比較して接合面温度の測定精度が向上することが確認できた. ③ 金属接合面の前処理方法 金属接合面の前処理方法として塩化ナトリウム電解処理を新たに試みた.従来のリン酸陽極酸化の場合と比較して接合強度が2~3倍に向上することがわかり,接合強度にとって重要な因子が明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① 接合面のレーザ光反射率・放射率の解析 金属接合面の微細構造に樹脂が流入することでレーザ光の反射率や赤外線の放射率が変化するメカニズムをシミュレーションによって解明する計画である.直接的な内容は電磁場の解析であるが,その前段階として樹脂流動の熱流体解析を2023年度に行った.接合面近傍の樹脂の温度分布が複雑なことで物性値の分布も複雑であることを予想していたが,一様な温度場を仮定できることがわかり,流れ場や電磁場の解析モデルを簡単化できることがわかった.また,細長い金属微細孔の奥深くまで樹脂が流入するメカニズムが長年にわたって未解明であったが,それが解明できたことで接合現象の理解が大きく進んだ. なお,電磁場のシミュレーションには市販のソフトウエアCOMSOLを使用する計画であり,その使用方法に習熟することも熱流体解析を最初に行った目的のひとつであり,その目的も達成された.進捗が予想以上に順調な場合は電磁場の解析に前倒しで着手する可能性も考えていたが,2023年度中には着手できなかった. ② 接合面温度のインプロセス測定 放射温度計に設定すべき放射率が接合加工中に時々刻々と変化することに対応するため,放射率をインプロセスで求めて更新するシステムを構築することが2023年度の計画であり,計画通りに実施できた.また,2024年度に実施する計画である温度測定実験の準備として,治具の製作を先行して実施した. ③ その他 当初の計画にはなかった内容として,金属接合面の前処理に塩化ナトリウム電解処理を試みた.形成された微細構造の電子顕微鏡観察と接合強度の測定を行い,従来のリン酸陽極酸化の場合と比較することで,接合強度にとって重要な因子を明らかにすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
① 接合面のレーザ光反射率・放射率の解析 接合面近傍の電磁場の解析を行い,金属接合面の微細凹凸構造の有無や樹脂流入の程度がレーザ光の反射率,赤外線の放射率に及ぼす影響を調査する.微細凹凸構造として周期的な矩形などの単純形状を仮定し,形状と寸法を変化させてシミュレーションを行うことで,レーザ光反射率や赤外線放射率が変化するメカニズムを解明する.この解析には市販のソフトウエアCOMSOL(有限要素法)の波動光学モジュールを使用する.寸法がナノメートルオーダーである実現象のシミュレーションが実行できない場合は,スケールを拡大した場合の結果から類推する.計算の実行エラーが生じる場合は,FDTD法(差分法)のソフトウエアを導入する(またはプログラムを自作する)ことを検討する. ② 接合面温度のインプロセス測定 接合加工中にレーザ照射点の温度が激しく変化する場面を想定した実験を行い,本研究で開発する新しい温度測定法の有効性を検証する.具体的な事例として長方形の板材の4辺を周回するようにレーザ光を走査する場合は,角部で温度が急上昇することが予想される.熱電対による温度測定も同時に行って,測定結果の妥当性を検証する.
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