研究課題/領域番号 |
23K03613
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
田邉 里枝 福岡工業大学, 工学部, 教授 (70432101)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | ピーリング工具 / 微細放電加工 / 加工形状 |
研究開始時の研究の概要 |
直径100μm以下の細線ワイヤを軸中心(コア)とし,その周囲にコアより融点の低い金属を同軸円筒状に被覆したピーリング工具を開発してきた.ピーリング工具を用いて放電加工を行うと,コアと被覆部の加工効率の差により,被覆部で加工された工具外径に対応する凹みと,その中央にコア部で加工された微細穴からなる段付き穴を一度の加工であけることができる.本研究は,ピーリング工具を用いた段付き穴の微細放電加工において,凹み深さと微細穴深さを制御する加工技術を開発し,加工効率の向上を目指すものである.
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研究実績の概要 |
申請者は,微細放電加工で必要とされる直径100μm以下で,かつ取扱が容易な工具電極の簡便な作製法として,市販の細線ワイヤを軸中心(コア)とし,その周囲をコアより融点の低い金属を同軸円筒状に被覆した工具電極を開発してきた.この工具電極は被覆部を除去しながら露出したコア部で加工が行えることからピーリング工具と呼んでいる.タングステン細線をコアとし被覆部として亜鉛をめっきにより被覆したピーリング工具を用いて加工すると,コアと被覆部の加工効率の差により,被覆部で加工された工具外径に対応する凹みと,その中央にコア部で加工された微細穴からなる段付き穴が得られる.一度に段付き穴が加工できる画期的な方法であり,凹み深さと微細穴深さを制御する技術の開発と加工効率の向上が望まれる.しかし,現状では凹み深さと微細穴深さはおよそ1:1であり,加工に長時間かかる.そこで,本研究では,凹み深さと微細穴深さの制御については,放電条件や被覆金属の変更,加工効率の向上については,工具の回転動作や振動付与による加工法を検討することを目的とした. これまで短いパルスの放電が発生でき微細加工に向いているコンデンサ放電回路の自作加工機を使用してきたが,トランジスタ回路にすれば,放電持続時間や休止時間を任意に設定できる.2023年度は,トランジスタ回路を有する加工機を自作し,放電周波数を40kHzに固定し,放電持続時間と休止時間を変えながら10分間の加工を行い,コンデンサ放電回路を用いた加工での加工穴形状と比較した.放電持続時間はコンデンサ放電の場合より長くなり,被覆部の除去量が増え,長いコア長さが得られる条件を見出した.また,最も加工深さが得られた放電持続時間を固定し,休止時間を変化させその影響も調べた.被覆部による加工がわずかである様な条件が見つかり,凹み深さの制御の可能性を見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,ピーリング工具を用い,トランジスタ放電回路を備えた加工機で放電持続時間や休止時間を設定した際の加工形状を調べた.これまでコンデンサ放電回路を備えた自作加工機を用いていたため,まずトランジスタ放電回路を作製し,自作加工機に接続し,動作確認を行った.トランジスタはスイッチング素子として用いられており,任意のパルス信号を放電回路に送ることで,マイクロ秒オーダーの放電が生じる.トランジスタへ送るパルス信号は,ファンクションジェネレータを用いて周波数とそのオン時間,オフ時間を設定した.1回の放電周期に対する放電パルスの比はデューティ比と呼ばれ,オン時間をオン時間とオフ時間の和で割って求める. ピーリング工具は,コア径50μmのタングステン細線を用い,その周囲を亜鉛めっきにより工具外径が約145μmとなるように作製したものを用いた.周波数を40kHzに固定しデューティ比を10%から50%まで変えた.加工時間を10分とした場合,デューティ比20%の場合に,工具外径に対応する凹みが非常に浅く,微細穴深さが最も深く加工されることが分かった.条件によっては,コンデンサ放電回路での加工と同等の加工形状が得られたり,凹みが全く形成されないがコアによる微細穴が浅い加工形状が得られたりした.微細穴深さが最も深く加工された周波数40kHz,デューティ比20%は,オン時間が5μsであるため,オン時間を5μsに固定し,周波数を10kHzから50kHzまで変化させることによりオフ時間を変化させた加工を行った.その結果,いずれも同等の加工形状が得られることが分かった. また,加工効率の向上を目的として,工具に超音波振動を付与した加工を行うために工具取り付け部分の改造を行い,簡易的な実験も行った.以上のことから,計画通りに進められていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
トランジスタ放電回路を備えた加工機を用いて周波数とデューティ比を調整した際,加工時間10分では,ピーリング工具の被覆部による凹みが浅く,コア部による微細穴深さが深い加工が可能な条件があることが分かった.今後は,加工時間,デューティ比,印加電圧などのパラメータによって加工形態や加工表面状態がどのように変化するかを調べ,所望の加工穴形状を得る加工技術への発展を図る. また,ピーリング工具に超音波振動を付与した場合の加工形状と加工速度への影響も調べる.工具を回転させた場合の加工は加工くずの排出が促され,工具送りのみの場合に比べて高効率で加工を行うことが出来る.加工液に超音波振動を付与した微細放電加工でも高効率の加工が可能なことが報告されており,ピーリング工具を用いた微細放電加工でも超音波振動の付与は加工効率の向上に効果的ではないかと考えられる.そこで2024年度は,超音波振動の付与方法(振動周期や付与時間を変更する)が加工速度と加工形態に与える影響を調べる.
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