研究課題/領域番号 |
23K03625
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
太田 稔 神奈川大学, 付置研究所, 客員教授 (60504256)
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研究分担者 |
山口 桂司 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (00609282)
由井 明紀 神奈川大学, 工学部, 教授 (70532000)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 研削 / ツルーイング / cBNホイール / 遷移金属 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、まず、各種遷移金属による粗粒cBNホイールの摩耗特性を明らかにする。次に、固定・弾性支持切換え式ツルーイング装置を設計、製作し、ツルーイング実験により通常ツルーイング、トランケートツルーイング、ポリッシュツルーイングからなる3ステップツルーイングの特性を明らかにする。ポリッシュツルーイングでは砥石周速度の高速化およびヒーター過熱による熱アシストの効果を検討する。並行して、遷移金属製のダイヤモンドツルーアを砥石メーカーと共同で開発し、開発した遷移金属製ダイヤモンドツルーアを用いた3ステップツルーイングにより表面粗さRa0.02μmの高効率鏡面研削を実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では、粗粒cBNホイールを用いて粗研削から鏡面研削まで一貫作業で研削可能な新たな3ステップツルーイング法を提案し、R5年度では、その技術の核となる熱アシストポリッシュツルーイングの原理を証明することを目的とした。具体的には、各種遷移金属とcBN砥粒との摺動実験を行い、良好な性能を示す遷移金属を絞り込むこととした。また、高速摺動やヒーターによる熱アシストの効果および微量クーラント供給の影響を調査することとした。 そこでまず、遷移金属製ツルーアとcBN砥石とを定圧回転摺動させる摺動実験装置を設計・製作した。次に、6種類の遷移金属をツルーア材料として選定し、粒度#200ビトリファイドボンド軸付きcBN砥石底面とツルーア端面を摺動させることによって摺動実験を行った。実験には申請者らが開発した立形複合加工機のSuper Processing Centerを用いた。摺動後のcBN砥粒の摩滅状況を測定顕微鏡、ZYGO NewViewおよびSEMで観察した。 摺動実験では、想定していた圧力下ではcBN砥石の減耗が著しく、目的とするcBN砥粒先端部のみを摩滅させることはできなかった。そこで、実験条件を大きく変更し、極めて低い圧力で摺動させることで著しいcBN砥石の減耗を防ぐようにした。その結果、純ニッケル製ツルーアによりcBN砥石底面の中で一部の突出したcBN砥粒が平坦化していることが確認できた。このときのcBN砥石台金部の温度を放射温度計で測定したところ最大でも約40℃であった。このことから、突出したcBN砥粒を優先的に摩滅させるためには、極低圧力+高速摺動が必要な条件であることがわかった。今後、極低圧力+高速摺動が可能になるように実験装置の改良を行い、ヒーターおよび水アシストの影響について明らかにし、ポリッシュツルーイングの原理を証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では、摺動実験装置を設計製作し、数種類の遷移金属によるcBN砥石の摺動実験を実施し良好な性能を示す遷移金属を絞り込み、さらにヒーターによる熱アシストや微量クーラント供給の影響を調査する予定であった。 摺動実験装置については、小径軸付きcBN砥石(以下、cBN砥石)を用いた基礎実験ができる装置とすることにより計画通りに準備できた。遷移金属は入手できる形状に限りがあるため、その形状に合わせたツルーアの設計を行うことで対応した。 摺動実験については、実験開始が計画より遅れてしまった。これは、cBN砥石を乾式条件を含む特殊な環境下で使用することになるため、cBN砥石の安全性についてメーカーでの検討時間が必要になるなど、実験の安全性を確保するための検討に多大な時間を要したこと、さらに、cBN砥石やダイヤモンドツルーアの製作に予定の3倍もの期間を要したことが主たる要因となった。また、cBN砥石および摺動実験装置の治工具製作費が想定以上に高額となり、経費面での調整が難航したことも摺動実験の遅れの要因となった。 一方で、遷移金属製ツルーアとcBN砥石の摺動実験から、cBN砥粒の摩滅現象を確認することができ、目標としていたポリッシュツルーイングの原理の証明に近づくことができた。さらに、cBNホイール全面にわたり突出したcBN砥粒を優先的に摩滅させるためには、極低圧力+高速摺動の条件が必要なことが明らかになり、実験装置の大幅な設計変更が必要なことが判明した。そこで、研究の全体計画に照らして、実験を効率的に進めるために、熱アシストや微量クーラント供給の影響に関する実験を後ろ倒しして、R6年度に実施することとした。cBN砥粒の摩滅現象が確認できたことは計画通りであったが、熱アシスト+高温下での微量クーラントの影響を後ろ倒ししたことで、計画に対してやや遅れて進捗しているという判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
R5年度の研究結果から、遷移金属ツルーアにより小径ビトリファイドボンド軸付きcBN砥石(以下、cBN砥石)を容易にツルーイングできることがわかった。また、cBN砥粒は乾式定圧条件下で比較的容易に摩滅することがわかった。このことから、鏡面研削のために、突出したcBN砥粒を優先的に摩滅させるポリッシュツルーイングにおいては、極低圧力+高速摺動の条件が必要なことが判明した。 そこで、R6年度計画では、cBN砥石を用いたポリッシュツルーイング基礎実験装置を改良し、極低圧力+高速摺動の条件で突出したcBN砥粒を優先的に摩滅させることを第一の目標として進めることとする。その上で、基礎実験装置を用いてスポットヒーターによる熱アシストと微量クーラント供給の影響を調査する。さらに、アシスト効果が最大となる条件を探索し、ポリッシュツルーイングの原理を証明する。基礎実験装置を用いた実験によりツルーイング現象の計測やcBN砥粒の観察などの一連の実験を効率的に進めたい。 上記の基礎実験結果をもとにして、Φ100mmカップ形cBNホイールのポリッシュツルーイング実験を行う。また、研削性能の確認はTurn Grindingによって行う。カップ形cBNホイール用のポリッシュツルーイング装置の開発については、上記の基礎実験結果を反映した仕様とすることで、設計・製作および改良期間の短縮をはかりたい。さらに、遷移金属単体でのツルーイング性能を確認した上で、遷移金属製サンドウィッチダイヤモンドツルーアの試作を行う。これにより、ダイヤモンド砥粒による機械的なツルーイング作用と遷移金属による複合メカノケミカル反応を重畳したトリプル作用のツルーイング効果を狙う。ダイヤモンドツルーアの開発にあたっては、メーカーとの共同開発体制を強化することで研究の推進をはかりたい。
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