研究課題/領域番号 |
23K03626
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18020:加工学および生産工学関連
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
諏訪部 仁 金沢工業大学, 工学部, 教授 (40202139)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | SiC / 切断 / マルチワイヤソー / 酸化援用 / スライシング加工 / 酸化援用加工 |
研究開始時の研究の概要 |
パワーデバイス用ウエーハには絶縁破壊電界がSiより10倍高いSiCの利用が始まっている.しかし,この材料は高硬度かつ高い化学的安定性を有することから難加工材として知られている. 従来研究において,遊離砥粒方式によるスライシング法の高能率・高精度化を目指して,ダイヤモンド砥粒を懸濁したスラリーと樹脂コーティングワイヤを用い,加工部での砥粒の転がりを制限することによって,延性モード加工が可能であることを見出してきた.そこで,本申請課題では,マルチワイヤソーによるSiCの延性モードスライシングにおいて,加工部をSiO2に改質する酸化援用加工の実用化への可能性を実験的に解明することを目的としている.
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研究実績の概要 |
本申請課題は,マルチワイヤソーによるパワー半導体デバイス用SiCウエーハの延性モードスライシング加工法の更なる切断能率の向上や加工ダメージの少ない高品位なウエーハの創製を目指している.研究室では従来よりSiCの延性モードスライシング加工の開発を行っている.本方法は特殊樹脂で表面を覆ったワイヤ工具を用いて,加工中にダイヤモンド砥粒を懸濁したスラリーを供給しながらスライシング加工を行う方法で,スラリー中の砥粒は加工圧力によってワイヤに埋め込まれ,その砥粒によってスライシング加工することによって切断面が鏡面になる等の効果が得られている.本加工方式における更なる高能率化と高精度化への試みとして,スライシング加工で用いるスラリーに酸化促進剤を添加して加工部の酸化を促進させるアシスト加工と工作物であるSiCを陽極酸化させながらスライシング加工する2種類の方法の可能性を実験的に検討し,酸化援用スライシング加工が生産コスト削減やカーフロス低減を可能ならしめる高能率切断の可能性を明らかにすることを目指している. そこで,本年度の研究では加工部での酸化効果をさらに促進させることによって加工特性に与える影響を明らかにする検討を行った.具体的には,酸化促進剤を加工液中に添加する方法と,工作物と加工液の間を通電することによって陽極酸化反応を用いる方法を検討した.酸化促進剤はスラリー中に添加し,酸化促進剤が加工中に加工表面を改質させることで酸化作用を促進し,加工精度の向上を示した.また,電気による陽極酸化反応を用いた方法では,スラリーもしくはワイヤを通じてSiCに電気を印加することで陽極酸化反応を起こし,電気による陽極酸化反応が切断速度を向上させることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本科学研究費補助金の申請当初の予定として,2インチサイズのSiCのインゴットを用いて実験することによって,3つの項目を中心に検討する計画で,その内2項目を令和5年度に検討する予定であった. 1つ目は酸化促進剤を利用したスライシング加工における加工特性評価で,酸化促進剤を加工液中に添加すると切断速度には余り影響が無く,加工精度を向上させることが明らかになった.しかしながら,それ以上の効果を発揮する条件は見出せなかった.また,シリコンを切断した場合には加工速度や加工精度が向上できることも合わせて明らかにした. 2つ目は陽極酸化法を利用したスライシング加工の検討では研究室にあるモデル実験機を改造した.そして,切断加工時に加工部に供給する加工液を陰極とし,工作物であるSiCを陽極として直流電圧を印加することによって簡単な加工実験ができた.それによって加工速度を向上できる可能性を見出した. 以上のことから,効果が余り期待できないために当初の予定を一部変更してはいるが,酸化援用加工の実現というゴールに向かって研究は進んでいると判断したため,上記の様な判断をした.
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今後の研究の推進方策 |
今後の予定として,令和6年度は陽極酸化法を利用したスライシング加工を中心に検討する予定である.令和5年度は樹脂をコーティングしたワイヤとダイヤモンド砥粒を懸濁したスラリーと呼ばれる加工液を供給する方式(遊離砥粒方式)で加工液と工作物を通電することによってSiCを切断する速度が向上する可能性示した.そこで,遊離砥粒方式における切断特性を検討することによって陽極酸化法の原理を明らかにする.また,マルチワイヤソーには昨年度実験した遊離砥粒方式とダイヤモンド砥粒をワイヤの固着した固定砥粒方式があるので,固定砥粒方式における陽極酸化援用加工の可能性を探る. また,令和6~7年度に向けて加工部での砥粒挙動等の観察を行い,酸化援用加工時に加工部で生じてる現象の解明を検討する
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