研究課題/領域番号 |
23K03636
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18030:設計工学関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
舘野 寿丈 明治大学, 理工学部, 専任教授 (30236559)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | アディティブマニュファクチャリング / コンフォーマルAM / 曲面積層 / 3次元造形パス / 内部構造 / 補修 / リユース / コンフォーマル積層造形 / 部品リユース / ロボティックAM |
研究開始時の研究の概要 |
アディティブマニュファクチャリング(AM)はいわゆる3Dプリンターを用いて実製品を製造することである。AMは従来の生産方法にない多くの特長を持つが、その一つに既存の物体に材料を付け加えていくことで新たな形状を生成できることが挙げられる。本研究では,この技術を進展させて、使用済みの製品から取り出された部品に新たな材料を付け加えて,新しいリユース部品として生成できるようにする設計方法と製造方法を研究する。
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研究実績の概要 |
既に存在する形状の周囲に材料を付加して成形する方法はコンフォーマル積層造形(Conformal Additive Manufacturing, Conformal AM)と呼ばれる。この技術の応用として部品補修が知られるが、それに限らず、部品の共通部分をベースにして個別の部品を製作できるのでバリエーション部品を製作しやすくなり、部品リユースの適用範囲が格段に広がる。さらには、付加加工の部分を削減できるので生産性向上にも役立つ。しかし、技術的には、既存の部品形状が未知であると、個別の形状認識と造形パス作成が必要となる。また、積層面が曲面になることから、従来とは異なる3次元造形パス生成が必要であり、造形装置も多軸の運動軸を有する機構が必要となる。 そこで本申請課題では、ベース部品と新規部品の3次元形状モデルから、要求強度に応じて適切な内部構造と造形パスを同時生成する体系的方法を研究する。また、申請者らはこれまでの研究で、6軸ロボットアームを用いた熱溶解積層法(Fused Filament Fabrication, FFF)装置を開発し、多軸運動による曲面積層造形に成功しており、この装置を用いた実機による製作実験と製作物評価も合わせて行う。 具体的には、FFFを対象とした主に次の二つの研究からなる。一つ目は、コンフォーマルAMを想定した要求強度を満たす3次元内部構造および3次元造形パスを生成するアルゴリズムの構築である。AMに向いたセル構造を基本とし、セルを荷重に応じて分割・変形させるアルゴリズムを提案する。そして二つ目は、生成された3次元造形パスによって正しく造形がされること、生成された構造が要求強度を満たすことを検証するために、実機による部品製作を行い、製作物の強度試験を実施することである。これらそれぞれの課題について研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
具体的な研究内容は次の二つになる。①外殻形状に合わせた内部構造を、造形パスを含めて設計するアルゴリズムの構築。②多軸の運動機構によるコンフォーマルAMの実現と製作物の評価。 ①設計アルゴリズムとしては、既に提案しているユニットセル構造に着目した設計法の改良を行った。ユニットセル構造とは、ハニカム構造など同じ形が繰り返される構造である。ユニットを構成する辺の長さや角度を変数とし、これらを変えることで、ユニット間のつながりを変えずにユニット内の形を変えることができる。ユニットとしてはハニカム構造をベースにし、変形させることでオーゼティック構造となる形状を設定した。さらに、ユニットの形状を直接に工具パスとすることで、ユニットセルの数によらず構造が設定されると同時に工具パスも決定されるようにした。 ②多軸の運動機構を用いた造形では、6軸のロボットアーム2機による双腕ロボットで造形機を構成することを想定し、ソフトウェアにROS2を導入して動作確認を行った。実験の結果、ROS2に含まれている特異点回避プログラムが、条件によっては不適切な動作を生成することが分かり、課題が明らかになった。また、新しいコンフォーマルAMとして、組立を統合化したAMの提案を行った。これは、ベースモデルに作られた溝に合わせて、チューブ状の物体をはめ込むことで造形する方法である。まず基礎的な実験として、3軸の運動機構で行える動作に限定した実験を行った。この結果、直線部分の溝に正しくチューブをはめ込めば、曲線部分でのはめ込みは不要になることが明らかとなり、新しい造形法開発に対する示唆を得た。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的である①内部構造の造形パスを考慮した設計アルゴリズム構築と②多軸の運動機構を用いた製作について、本年度の研究アプローチを継続して推進させる。 ①設計アルゴリズムでは、オーゼティック構造の形状変更を改良し、一律にすべてを同じ形状として変形させるのではなく、設計要求に対して適切な形状を配置場所に応じて設計されるようにする。アルゴリズムとして改良を加える点は複数あるが、本年度は次の二点を重点的に進める。一点目は、配置に応じて大きさが設定されるようにすること、すなわちセルの大きさを規定する枠を設定し、設計要求に応じてその枠を自動構成するアルゴリズムを検討する。二点目はそれぞれのセルを個別に形状を設定できるようにすることである。現在は全てのセルに同じ形状を与えるアルゴリズムになっているが、これを設計要求に応じて個別の形状にするアルゴリズムを検討する。 ②多軸の運動機構については、コンフォーマルAMに特有の技術であるカメラ画像からベースモデルの形状の位置と姿勢を把握する装置の開発を行う。手法にはロボットによる物体把持などで使用される汎用のソフトウェアを採用し、ROS2によって多関節ロボットと一緒に動作する環境構築を行う。また、対象物の形状や表面性状などの異なる対象物で実験を行って、コンフォーマルAMで使用するうえでの課題を抽出する。
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