研究課題/領域番号 |
23K03652
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分18040:機械要素およびトライボロジー関連
|
研究機関 | 鹿児島工業高等専門学校 |
研究代表者 |
杉村 奈都子 鹿児島工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (00563959)
|
研究分担者 |
杉村 剛 国立極地研究所, 国際北極環境研究センター, 特任研究員 (80455493)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 焼付きモデル / SPH法 / 機械学習 / トライボロジー / メソスケール / 可視化 / 境界潤滑摩擦 / マルチスケール化 / 可視化アプリケーション |
研究開始時の研究の概要 |
これまで、SPH法を用いた大規模並列粗視化シミュレーションによりメソスケールの塑性流動発熱機構を明らかにしてきた。本研究ではこの開発コードをベースとして、様々な摩擦体材料、界面特性による焼付きシミュレーションを高効率に実施して、普遍的な焼付き前現象ならびに焼付く条件を見出してゆく。この高効率化には、機械学習を用いた最適設計法を適用する。さらに、開発を進めてきたWeb可視化アプリケーションCedarPlotに解析機能を搭載する。解析機能では、可視化データの特徴量抽出や、最適設計のための近似関数(応答曲面)生成に関する計算を行い、これを機械学習に用いる。
|
研究実績の概要 |
本年度、SPH焼付きモデルに関して、機械学習のためのデータサンプリングとスキーム改良に努めた。これまで、摩耗、塑性流動、発熱、凝着維持の一連の経過を効率よく再現するために、弾性率をオーダーレベルで減じるなど人為的な措置をいくつか講じることがあった。今年度はAl、Feなど実金属、実合金の物性値を用いて、荷重の負荷方法を変えるなどしてデータのサンプリングと着目すべき特徴量の検証に注力した。この実金属物性値の適用については、昨年度(前課題最終年度)に実施した高解像度のヘルツ接触シミュレーション(マクロ試験)を、引き続き実施した。接触部の応力振動に課題が残ると考えていたが、詳細な検証の結果、固体の固有振動であると認定された。これより、本モデルの連続体力学スキームの一つである弾性スキームについてはシミュレーションによる定量的再現性は高いと判断され、モデルのマルチスケール化に一歩、弾みがついた。加えて、大変形問題の再現性を向上させるために、種々応力スキームの試験的実装を開始した。 可視化アプリケーションに関して、大規模計算結果の表示に対応するための機能の実装と、バッチ処理用の可視化機能の実装準備を行った。たとえば、処理高速化のためのWebGLのポイントスプライト機能の活用、テキストファイルのストリーミング読み込み機能の実装などがあげられる。また、一度読み込んだファイルをバイナリ形式で保存し、二度目以降の読み込みを高速化する改良も行った。二度目以降のデータ読み込み時間は初回に比べて約1/20に短縮された。同じ可視化を複数の入力ファイルに対して自動的に行うためのバッチ処理機能の実装について、可視化パラメータの保存・読み込み機能の実装とテストを開始した。コマンドラインからの実行を可能にするために、Node.jsを使用してヘッドレスChromeを操作するインターフェースの開発を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SPHモデルの改良自体は順調に進んでいる。研究協力者グループにモデルを展開したことで、発熱挙動についてパラメータスタディが進められ、実金属材料の接触凝着温度の解析や、本件モデルの特性の明確化がなされた。一方で、機械学習によって特徴量をつかみ運動にフィードバックする作業が遅れがちとなった。学習データ集積の方法の一つとして、力と時間を変数とする所定関数値が接触部からの距離に応じて協同的な変動を示すか否かに着目して、荷重、せん断速度、弾性率に対するデータ集積を進める予定であった。しかし、利用するスーパーコンピュータが変更となり、当初予定よりも凝着維持に必要な長時間計算の実施可能数が減少した。そこで、荷重の負荷タイミングなどによってこの着目する特徴量(協同あるいは非協同の変動)を制御できるかどうかに着目するよう、アプローチの方法を少し変えた。併せて、昨年度課題として残ったマクロスケールスキームに基づく接触試験での応力振動の原因が、本年度の継続計算により解明されたことで、メソからマクロへのモデルのマルチスケール化に弾みがついた。そこで、応力スキームの信頼性の向上と多様な空間スケールへの対応の検討を開始した。このように、特に年度後半、マルチスケール化を優先する形となった。これらは非常に重要なモデル改良であるが、一方で特徴量の抽出とそのフィードバックとそれの可視化アプリケーションへの実装に割ける時間的余裕が減った。それにより、当初計画に対しては多少の遅れが生じている。ただし、マルチスケール化を含めたSPHモデルの改良という点については予定以上に進展した。
|
今後の研究の推進方策 |
SPH焼付きモデルに関して、大変形応力スキームの信頼性の向上と、応力計算の多様な空間スケールへの対応を目指して、応力スキーム全般の拡充に努める。また、昨年度実材料での計算が進んだことから、実界面性状での計算に本格的に着手する。界面相互作用のミクロスケールからのボトムアップも、応力スキームの高性能化と連動させる形で進める。加えて、荷重の種類や負荷タイミングによって特徴量を制御する試験を進める。このシミュレーションデータを凝着回避を提案させるための学習データとすることを目指す。 可視化アプリケーションに関して、バッチ処理機能の実装を目指す。また、画像・動画保存機能の改修のほか、SPH異方性モデルに対応できるよう、多様な粒子形状の描画機能を追加する。また、SPHシミュレーションデータから凝着回避の提案をさせるための機械学習システムの仕組みづくりとその機能追加の準備に着手する。シミュレーションデータの可視化画像から機械学習によって新たな特徴量を見出す機能についても検討したい。
|