研究課題/領域番号 |
23K03655
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
太田 貴士 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (10273583)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 乱流 / 液体金属 / 凝固 / 溶融 / 非ニュートン粘性流体 / 直接数値シミュレーション / データベース / 乱流モデル / 固液混相流 / 制御 / 数値シミュレーション / 流体工学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、乱流状態の溶融金属が凝固する際に固相内に発生する可能性がある材料欠陥の発生を予測し、欠陥発生を抑制する制御法を構築することを目指す。さらに、乱流と凝固組織の形成における相互作用のメカニズムに基づいて、制御法の最適化を実行する。乱流の影響を受けながら析出する固相の凝固組織と、その凝固組織の影響を受けながら流動する液相の乱流との相互作用を考慮して、固液混相場を観察しなければならない。本研究の目的のために、乱流構造のダイナミクスを再現できるDNSに、デンドライトなどの凝固組織の形成を再現できるPFMを組み合わせた数値シミュレーションを実現する。
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研究実績の概要 |
本研究では、最終的な目標として、乱流状態の溶融金属が凝固する際に固相内に発生する可能性がある材料欠陥の発生を予測し、欠陥発生を抑制する制御法を構築することを目指している。さらに、本研究の成果として得られた乱流と凝固組織の形成における相互作用のメカニズムに基づいて、制御法の最適化を実行できることを確かめる。このとき、固体壁が一様に溶融して、乱流が強化され、その後、過冷却凝固が起こる状況を想定する。乱流の影響を受けながら析出する固相の凝固組織と、その凝固組織の影響を受けながら流動する液相の乱流との相互作用を考慮して、固液混相場を観察しなければならない。このような本研究の目標のために、これまでに、乱流構造のダイナミクスを再現できる直接数値シミュレーションに、デンドライトなどの凝固組織の形成を再現できるフェーズフィールド法を組み合わせて、乱流と凝固に関する大スケールの組織的構造を再現する大規模数値シミュレーションを実現できた。 そして、大規模数値シミュレーションの結果をまとめたデータベースを構築した。その乱流と凝固に関するデータベースを解析することによって、注目する凝固現象に関わる物理メカニズムを観察できることを確かめた。また、過去の実験計測結果との整合性を評価することを試みた。さらに、データベースの解析の結果において、これまでの準備研究で予測されていたように、乱流の空間スケールに依存した凝固組織構造が形成されていたが、それとは別に、新たな空間スケールの凝固組織構造が形成されている可能性が示唆された。そのことを詳細に調査して、予測されていなかった凝固組織構造の形成メカニズムを明らかにするために、引き続き、大規模数値シミュレーションを実行して、データベースをさらに拡充する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、乱流の直接数値シミュレーションと固液相変化を再現するフェーズフィールド法を組み合わせて、高精度数値シミュレーションを実行するためのシミュレーションプログラムを開発して、大規模数値シミュレーションを効率良く実行する計算環境を実現できた。この結果により、液体乱流が過冷却条件下で凝固して、凝固組織構造の形成する様子を詳細に観察できるようになった。大スケールの流れ場を想定して、溶融液体金属を対象にした実験計測では実現が困難な速度ストリークと縦渦の非定常な乱流瞬時構造の可視化を実行し、凝固組織の形成の過程も可視化できた。 大規模数値シミュレーションの結果を効率的に解析できるようにするために、数値シミュレーションの結果をまとめたデータベースを構築した。すでに、複数の流れ条件で数値シミュレーションを実行して、その結果をまとめることができた。さらに、必要に応じて、解析条件を変更した数値シミュレーションを実行して、結果をデータベースに追加して、解析対象の情報を拡充することを予定している。なお、データベースの容量が大きく、さらに、増加することになるので、解析結果へのアクセスの範囲が限られている。研究協力者との情報共有のためには、データの圧縮、抽出の方法を検討する必要がある。 本格的な解析の前に、データベースに基づいて、数値シミュレーションの結果を観察したところ、当初から予想されていた乱流に起因する空間スケールに関係する凝固組織構造の形成が確かめられた。それと同時に、それとは異なる空間スケールも存在していることが観察された。このことは、本研究の目標に関わる新たな発見である可能性があるので、数値シミュレーション手法を見直しつつ、必要に応じて、数値シミュレーションの結果を追加し、データベースを拡充させて、そのメカニズムの解明に注力することを検討している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果によって、凝固現象の予測に関して、物理的妥当性を高められる可能性を検証するために、例えば、定量的フェーズフィールド法を導入するなどのように、数値シミュレーション手法を見直すことを検討する。数値シミュレーション手法を改良できれば、本研究で得られた成果が普遍的な結果であることを証明できる。それと並行して、流れ場の条件を変更した大規模数値シミュレーションを実行して、データベースに追加する。これらの取り組みにより、本研究で構築しているデータベースの精度の向上と条件範囲の拡大を実現できる。 また、このデータベースを研究協力者と共有することによって、さらに、本研究の大規模数値シミュレーションによる解析結果の信頼性の検証を進める。そのために、大容量の情報を効率的に共有できるように、データを抽出する方法を実現できるようにする。必要に応じて、これまでに導入したデータサーバーの機能を拡張することになる。 その後、研究協力者の実験計測の技術に関する知識を援用しつつ、凝固組織構造の形成に関する結果の解析を進めて、凝固組織と材料欠陥の発生メカニズムの解明に取り組む。これまでに判明している凝固組織の空間スケールに関する情報を用いて、さらに、追加の解析により、複数の空間スケールに基づく凝固組織構造の形成の予測を実現するための知見を得ることを目指す。また、本研究の目標における最終段階を想定して、凝固組織構造の形成の制御を実現できる可能性を考える。
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