研究課題/領域番号 |
23K03659
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中澤 嵩 金沢大学, 学術メディア創成センター, 准教授 (20726765)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | FEM / AMR / Compressible Euler / Freefem++ / 数値積分 / 形状最適化問題 / Snapshot POD / 圧縮性流体 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,Snapshot PODを用いた圧縮性流体場における効率的・効果的な制御を実現する最適設計手法を構築する.このSnapshot PODは乱流場を時間平均場と時間変動場に分解することが可能であり,各モードの振幅は固有値の平方根として与えられる.そこで,Snapshot PODの固有値を目的関数,圧縮性Navier-Stokes方程式とSnapshot PODの固有値問題を制約関数とする形状最適化問題を解く.衝撃波と乱流との相互干渉であるSWBLIを抑制することを想定し,Shock Control Bump (SCB)の最適設計を行う.
|
研究実績の概要 |
今年度の研究実績として,形状最適化問題を解くにあたって圧縮性流Euler方程式や圧縮性流Navier-Stokes方程式における形状感度を数学的に導出することに成功した.具体的な方法としては,適切な目的関数(例えば,各種エネルギー等)と偏微分方程式の弱形式との輪和を汎関数と定義し,この汎関数に対して物質微分を取ることで第1編分が求まる.次に,順問題と随伴問題を解き,半関数の第一変分に代入することで,形状感度を導出した.しかし,一般に圧縮性流体場の順問題を解く際には,時間刻みが0.00001程度のオーダーで数値計算を行うため,一度の順問題を解くには膨大な時間ステップを要する.そこで,可能な限り計算コストを抑制するかたちで数値計算スキームの開発を行う必要に迫られた. このような圧縮性流体場の数値計算を難しくしている大きな要因の一つに衝撃波の存在が挙げられる.この衝撃波は,音速を超える速度で物体が移動する際に発生するもので,気体の密度・圧力が著しく増加するため,局所的にではあるが極めて高い数値計算コストを払う必要がある.そこで本研究では,圧力と密度にlogを取ることで,衝撃波におけるフラックスの評価を容易にするように努めた.また,Adaptive Mesh Refinementを採用することで,衝撃波近傍で細かいメッシュを扱うことで,計算精度の向上を図った.Sod Shock Tube Problemにおける数値計算の結果,厳密解と同様の結果が得られることを確認した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
衝撃波が発生した際に,圧力・密度・速度が著しく急激に変化するために一般に数値計算が極めて難しくなる.そこで,Logarithm conformation representationを受けて圧力と密度にlogを取ることで,圧縮性Euler方程式を変換した.変換された数理モデルは既に,Florian De Vuystによって提案されていたが,十分な検証がなされていなかった.そこで,まず初めに位相速度と特性線のODEを導出したところ,元の圧縮性Euler方程式から得られるものと完全に一致した.そのため,リーマン不変量も一致することが分かった.その上で,更に数値計算コストを抑制するために,Adaptive Mesh Refinementを採用する.本研究で採用しているAMRは,有限要素法の誤差解析によって得られるが,厳密解と数値解との差の最大値誤差(エッジのベクトルを物理量のヘッシアンで挟んだ式)で評価されており,これを最小化するようにエッジの向きと長さを最適化する.結果的に,フラックスに相当する1回微分を高精度に評価することが可能となり,衝撃波が発生した際の物理場の計算を容易にしている.また,数理モデルの各項が複数の関数の積で記述されているため,数値積分を採用することで数値計算精度を担保している. Sod Shock Tube Problemにおける数値計算の結果,厳密解と同様の結果が得られることを確認した.更に,NACA0012周りのEuler場もまた計算したが,こちらも先行研究と良い一致を示すことが可能となった.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでは,マッハ1以下の亜音速や遷音速域における圧縮性流体場の数値計算を行ってきたが,より汎用的な形状最適化手法を構築するためには,マッハ1以上の超音速域における圧縮性流体の数値計算が必須であることは自明である.そこで,今後はマッハ3程度の圧縮性流体場を対象とする代表的なテスト問題であるShu Osher Shock Tube Problemを対象に数値計算スキームを構築する.これまで構築したスキームとの改良点としては,AMRを使用する際のRiemann Metricを,慎重に選択することが挙げられる.今年度までは,密度・速度・圧力からRiemann Metricを構成してきたが,今後はリーマン不変量や運動量,内部エネルギーなどの圧縮性流体場の特徴的な物理量を採用することで,これらを高精度に計算する.更に,物質微分項や各項をテーラー展開した際に得られる,高次の項を計算モデルに追加することも検討している.上記の議論を効果的に進めるために,九州大学IMI共同利用・共同研究2024年度短期研究員として数日間,九州大学に滞在し,流体工学や航空工学の専門家らと綿密な打ち合わせを行う予定である.また,名古屋大学や産総研の研究者らとも個別に研究打ち合わせを行うことを予定している.その上で,これまで蓄積した研究内容については,流体力学講演会,計算工学講演会,流体力学学会年会,数値流体シンポジウムで積極的に講演していく.
|