研究課題/領域番号 |
23K03663
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
脇本 辰郎 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (10254385)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 液体金属 / 表面張力 / 異方性 / 酸化被膜 |
研究開始時の研究の概要 |
融点以上の金属は液体状態にあるが,一定以上の濃度の酸化雰囲気中にさらされると,多くの金属で表面に酸化被膜が形成される.通常,酸化物の融点は金属のそれよりも高く,表面の被膜は固体で,その厚さは数十nm程度と極めて薄い.このような膜の形成は表面の力学的特性を大きく変化させる.本研究では,円形ノズルの下端に金属液滴を懸垂させ,その形状を精密に測定することによって,液体金属液滴の表面に形成される酸化被膜の異方的な応力状態を測定するとともに,詳細な表面観察を行うことで,今まで未知であった酸化環境下における液体金属の表面物性の変化を明らかにする.
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研究実績の概要 |
融点以上の金属は液体状態にあるが,一定以上の濃度の酸化雰囲気中にさらされると,多くの金属で表面に酸化被膜が形成される.通常,酸化物の融点は金属のそれよりも高く,表面の被膜は固体で,その厚さは数十nm程度と極めて薄い.このような膜の形成は表面の力学的特性を大きく変化させる.本研究では,円形ノズルの下端に融点30度の液体金属ガリウムの液滴を懸垂させ,その形状を精密に測定することによって,液滴表面に形成される酸化被膜の異方的な表面張力の発生機構を明らかにする. 2023年度は,種々の酸素濃度でガリウムの液滴をノズル先端に懸垂し,液滴の異方性表面張力を測定するとともに,大気中で長時間の測定を行い,張力の時間依存性について検討した.その結果,700ppm以下の低酸素濃度の環境下では表面張力の異方性は現れず,それ以上の酸素濃度では経度方向の表面張力σθが緯度方向の表面張力σφより大きくなる異方性が現れた.また,その異方性はノズル近傍部分にのみ生じた.σθとσφを平均した平均表面張力は700ppm以下の低酸素濃度では酸素濃度と共に減少し,700ppm以上の高酸素濃度では酸素濃度と共に増大した.以上より,700ppm以下の低濃度では酸素がガリウム表面に吸着するに留まり,700ppm以上の高濃度では,酸化化合物の膜(酸化膜)が形成されているものと考えられる. さらに,大気中における測定を90分間継続して行ったが,測定値は変化しなかった.液滴形成に約1分程度は要するため,1~90分の間における張力変化はない事が分かった.酸化膜はごく短い時間で形成され,その後は準平衡状態となっているものと推察される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
異方性張力の酸素濃度依存性,並びに測定値の時間変化については,当初計画通りに測定し,異方性の現れる酸素濃度や測定値の定常性を明らかにすることができた.実験はグローブボックス内で行っており,ボックスにアルゴンを導入して酸素濃度を調整している.現在の装置で達成可能な酸素濃度は150ppmであり,大気における20%までの酸素濃度での実験を実施できる環境を整えて,700ppm以上の酸素濃度でガリウム液滴に表面張力の異方性が現れることを明らかにした. 本研究で提案する測定法ではガラスノズル先端からガリウムを押し出し,液滴を作成する必要があることから,測定までには約1分程度は要する.このため,1分以下の張力の時間変化は分からない.一方,1時間以上を超える長時間の測定は可能で,1~90分間の間で表面張力の測定値が変化しないことを明らかにした. 一方,対象が鏡面の曲面を有する液滴であることから,液滴表面にピントが合わない,液滴表面にノズルなどの周囲の物体が映り込んで表面性状が分からない,などの問題が生じて,予定していた表面観察は行えていない.
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今後の研究の推進方策 |
異方性張力の酸素濃度依存性,並びに測定値の時間変化については,当初計画通りに測定し,異方性の現れる酸素濃度や測定値の定常性を明らかにすることができた.一方,対象が鏡面の曲面を有する液滴であることから,液滴表面にピントが合わない,液滴表面にノズルなどの周囲の物体が映り込んで表面性状が分からない,などの問題が生じて,予定していた表面観察は行えていない.観察を行うためには,撮像装置を微動させる装置や周囲物体の映り込みを防ぐ対策が必要である.2023年度は,年度末に大学統合に伴う研究室移転が予定されていたため,大きな装置の改変はおこなわなかったが,2024年度以降に微動装置の導入などで撮像系の改善を検討する.状況によっては,表面観察を留保し,異方性の出現と表面伸縮との関係や平板上液滴における計測を先行させて行うことも考える.
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