研究課題/領域番号 |
23K03681
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
稲岡 恭二 同志社大学, 理工学部, 教授 (60243052)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
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キーワード | 流体工学 / 翼 / コルゲート翼 / 揚力 / 失速 / 数値解析 / 翼型 / 空力特性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,ドローンなどの小型飛行体の条件下で小型コルゲート翼の空力特性の基礎データを,実験と数値解析の両面から採取し,軽量かつ高性能な性能を発揮する流れを理解し,流体工学の発展に貢献する.本研究の特長は,揚力,抗力,揚抗比の空力特性値を,レイノルズ数,迎角を軸として等高線図の形でまとめること,翼まわりの流れの可視化により,流動メカニズムを明らかにすることにある. 現在のコルゲート翼の知見は,トンボの翅などの小さな生き物の環境下(超低レイノルズ数域)に限られている.本研究は,バイオミメティクスの視点を翼型に取り入れ,小型飛行体が抱える騒音などの諸問題を解決し,その応用展開に資する.
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研究実績の概要 |
本研究は,小型コルゲート翼の空力特性と流れの特徴を調べることを目的とする.コルゲート翼は流れの全容が流線形翼の外形に近く空力性能が高いとされるが,工業上有用なレイノルズ数範囲における特性の詳細はよくわかっていない.本研究で対象とするコルゲート翼は流線形翼型の外形線上に複数の頂点を持つように凹凸に折り曲げた薄い平板からなる.本年度は翼高さ(厚み)を変えた翼型の空力特性を調べ流れを可視化した.加えて数値計算コードを開発し,翼が上下運動する場合の空力特性を調べた. 翼高さが異なる2種類のコルゲート翼(C08,C12)の空力特性をレイノルズ数40,000の条件下で調査した.揚力係数は全ての迎角においてNACA4412翼を上回った.迎角0°のC08,C12の揚力係数は4412翼に対し各々1.6倍,1.4倍に達する.各揚力係数は迎角12°,16°の失速まで迎角の増加とともに単調に増加し,揚抗比は各々4°,9°付近で極大値を示す.C08の揚力係数が高い理由は,谷部に低速で安定した循環流が生じ,流れが翼面に沿って流下する構造を持ち,大きな負圧が発生しないことによる.失速の主因は迎角の増加に応じ第1頂部を通過する流れが揺らいで第2谷部の循環流が顕著に不安定化し,一部が第1谷部へと逆流することにより翼上面の負圧領域のスケールが飛躍的に増大することにある. 2次元数値解析の開発では迎角0°を条件とし,上下運動時のモデルと格子を吟味し平板翼と比較した.その結果,上下運動が推進力を生むことが明らかになった.上下運動の振幅が小さいうちは翼端部の渦は谷部に作用せず流下し,流れは平板翼と相違ない.振幅が翼弦長程度になると翼の前縁,後縁の両方で圧力差が増え,前縁からの渦が後縁からの渦と合体し推進力を増大させる.振幅が翼弦長の2倍程度になると却って渦が翼面から遠ざかり,影響が薄れることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コルゲート翼の空力特性測定実験,流動メカニズムを探る可視化実験は概ね順調に実施できた.令和5年度は迎角に対する空力特性の変化が比較的穏やかなNACA4412翼型の外形線に頂点を持つコルゲート翼に注目し,空力特性を測定するとともに,流れとの対応を概略把握することができた.他方,コルゲート翼の失速現象に注目すれば,流線形翼との相違点をどう捉えるのか,さらに,翼面に沿って流下する流れ角度や谷部のスケール,位置等がどう効くのかの理解がまだ十分ではないことも明らかになった.そのため,令和6年度も引き続き揚力係数が明確な極大値をもつ対象翼型の外形線に頂点を持つコルゲート翼について実験的に調べ,流れを可視化して令和5年度の結果との共通点,相違点を明らかにする.なお,これらは当初の計画に概ね沿っていることを付記する. 数値解析においては,翼の上下運動を含めたコードまで開発でき当初の計画より進んでいる.改めて本コードをもとに,凸部の数,位置,凹部の深さ(厚さ)をパラメータとする計算を令和6年度後半から進める.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は流れの空力特性を測定するとともに,流れ構造をスモークワイヤ法による可視化で分析した.今後もコルゲート翼の特性と流動メカニズムを把握するために,引き続きパラメータとなる谷部の位置,スケール,翼面の流れの角度等,それらの役割を流れの可視化を通して分析するとともに,数値解析を援用して流れ構造の理解を進めていく. 本研究では,流れ構造はスモークワイヤ法で可視化しているため,流れの定性的な考察は可能である反面,定量的な評価は難しい.重要な流動メカニズム発見時には,流体速度の測定を取り入れて明示するなど,定量的評価の実施を今後検討する必要がある.
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