研究課題/領域番号 |
23K03684
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
藤川 俊秀 都城工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10777668)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 非循環型小型キャビテーションタンネル / 気泡核生成 / 張力 / CFD解析 / 気泡力学 / 気泡核成長の準静的閾値理論 / 気泡核成長の動的閾値理論 / キャビテーション / キャビテーション初生 / 非循環キャビテーションタンネル / 気泡核成長の動的閾値 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は高速水流境界層内で張力を受けた気泡核の成長機構と動的キャビテーション閾値を解明するために,①非循環型キャビテーションタンネル内の局所的張力場で気泡核が境界層内で成長する過程に着目して実験を行い,②計算流体力学 (CFD) により実験条件の下での観測部の流れ場を解析し,この流れ場で気泡力学により気泡核の動的成長を明らかにする.さらに③気泡力学のモデル方程式により気泡核成長の動的閾値を解明し,検証する.
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研究実績の概要 |
キャビテーションは液体が高速で流れる場合や静止液体中に張力が働く場合,あるいは強い渦が発生する場合などの様々な状況で発生し,流体機器の性能低下の原因になっているが,逆にその破壊力が有効活用されている.例えば,二次元流路内に設置した円柱表面と流路壁との間の狭い隙間を液体が50m/s程度の流速で通過する際,円柱下流側では数百マイクロ秒のオーダーの短い時間で-1MPa程度の張力が誘起される.これはキャビテーションの基礎研究課題の一つである.また,ディーゼルエンジンのインジェクターノズルでは,ノズル入口エッジ部近傍での急激な圧力低下に伴い,10MPa程度の張力が誘起されキャビテーションが発生する.上記の二例で共通している因子は液体の高速流れにより誘起される張力である.本研究は20m/s前後の流速で発生する比較的弱い張力状態における①キャビテーション気泡核の成長機構と②気泡核成長の動的閾値を解明することである.二元流路内に設置された円柱と流路壁との間の狭い隙間(のど部)を水が高速で流れる際に,のど部近傍における境界層内のキャビテーションを対象とする.初年度は,以下のことを明らかにした: 【実験】実験装置内ののど部(隙間高さ0.7mm)近傍で発生する局所的張力場で,気泡核が境界層内で成長する過程に着目して実験を行い,キャビテーション気泡発生の条件を検討した.さらに,液体中でより強い張力を発生させるために,のど部隙間高さを改良した観測部(隙間高さ0.3mm)を製作し,キャビテーション気泡発生条件の予備実験を行った. 【理論】高速水流中の弱い張力で発生する境界層内のキャビテーションを対象として,キャビテーション気泡核の成長機構を気泡力学のRayleigh-Plesset方程式で評価し,気泡核がある有限時間,弱い張力にさらされて成長したときの大きさをキャビテーション動的閾値理論により推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
【実験】実験は申請時の計画どおりに進展した.研究成果は,International Conference for Multiphase Flows-2023および日本学術会議第21回キャビテーションシンポジウムで口頭発表し,Multiphase Science and Technologyに投稿,掲載された.これまでの研究成果の一部は日本実験力学会2023年度年次講演会総会において学会賞(論文賞)を受賞した. 【CFD解析と気泡力学解析】CFD解析では非定常ナビエ・ストークス方程式により,3次元乱流場を作り,この中で成長しながら流線に沿って並進運動する境界層内での単一気泡をラグランジュ的に追跡した.乱流モデルにはLES model (SGS model:Wall-Adapting Local Eddy-Viscosity Model) を採用した.気泡は観測部の液体の体積と比較して無視できる体積であるため流れは液単相流とした.その場合,円柱上流側圧力のCFD解析値は測定値と2%以内の相対誤差で一致する.気泡核の成長は気泡力学のRayleigh-Plesset方程式により解析し,その並進運動はCFD解析による乱流場でラグランジュ的に追跡した.さらにRayleigh-Plesset方程式 から非線形モデル方程式を導出して動的閾値を定式化し,CFD流れ場での気泡核成長の結果と動的閾値を比較して動的閾値の妥当性を検証した.本研究で提案した動的閾値理論は,どのくらいの時間,どのくらいの張力をかければよいかを見積もることができ燃料噴射弁の設計に役立つことを明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
初年度は液体中でより強い張力を発生させるために,のど部隙間高さを改良した観測部(隙間高さ0.3mm)を用いてキャビテーション気泡発生条件の予備実験を行った.2年度には,以下の3つの課題に取り組む. (1)次年度以降に高純度純水との対照実験を計画しているため,水道水を用いる場合は,フィルタのメッシュを様々に変えて浮遊固形物のサイズを調節し,気泡核がどこで,どのように発生するかについて,気泡核発生と水の処理程度(溶存酸素濃度測定を含む)および流れの条件の関係を調べる. (2)顕微鏡付き高速度ビデオカメラで観測できる観測部を用いて,円柱背後のはく離点で発生する単一蒸気泡を観測する.蒸気泡発生と流れのレイノルズ数,はく離点での水温変化および張力の関係を理論解析と対比しながら解明する. (3)はく離点での気泡核の発生と離脱,その後の気泡核の成長および並進運動を観測する.気泡の並進運動と気泡形状は気泡成長の加速度により大きな影響を受けることが理論的にわかっているため,並進速度,成長加速度および形状の関係を実験的に詳細に明らかにする. CFDと気泡力学の融合による気泡核の初生過程の理論解析,実験と理論の対応による初生機構の解明については3年度に行う.
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