研究課題/領域番号 |
23K03694
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
光武 雄一 佐賀大学, 海洋エネルギー研究所, 教授 (20253586)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | クエンチング / 非定常遷移沸騰熱伝達 / 衝突噴流冷却 / 非定常熱伝導逆問題 / 自発核生成温度 / 高温面のぬれ / 高速応答表面温度計測 / ぬれ / 衝突噴流 / 非定常遷移沸騰 / ウエッティングフロント / 自発核生成 |
研究開始時の研究の概要 |
工業的に幅広い応用分野を持つ水噴流による高温面の非定常沸騰冷却において,表面上を均一に高い精度で冷却温度履歴制御および除熱能力向上を行うために不可欠となる高温面上での不安定な固液接触現象の伝熱計測と現象を支配するモデル化を検討し,解析モデルに必要な非定常条件で不均一温度面上での局所熱伝達予測式を確立する.その特徴は,高温面上での短時間で生じる固液接触に伴う非定常伝熱を直接計測する実験手法にある.
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研究実績の概要 |
工業的に幅広い応用分野を持つ衝突噴流による高温面の非定常沸騰冷却では,表面上の均一な冷却温度履歴制御,除熱能力の向上などの冷却技術の高度化が求められている.安定な固液接触(ぬれ)が生じない水の自発核生成温度約300℃を超える高温面の噴流冷却では,1)噴流直下のよどみ領域での不安定な固液接触状態から安定なぬれ状態を回復するまでの冷却初期過程,2)よどみ域から三相境界線,WF:Wetting Frontの移動に伴う安定なぬれ面の拡大に伴う冷却速度が急増,いわゆるクエンチを経て,最終的に高温面全体が液膜流で覆われる単相強制対流冷却に至る.初期冷却過程の安定なぬれ回復の時間遅れが急冷開始までの高温面の冷却曲線を決定づける重要なパラメータとなる.しかし,この冷却過程は,自発核生成による蒸気生成に基づく不規則な固液接触状態がkHzオーダーの頻度で自発的に生じる遷移沸騰冷却過程であり,非定常性が強く伝熱計測とモデル化が困難な状況にある. 本研究では,高温面の非定常冷却特性のモデル化に不可欠なよどみ域での沸騰冷却初期の伝熱に注目した実験的研究を行う.本年度は噴流衝突よどみ領域での不確定な固液接触過程に対して,固液接触周期が制御された静止高温面への液滴列衝突実験を実施した.液滴衝突による間欠的な冷却によって,連続冷却で生じるよどみ域での急速なぬれ回復の非定常伝熱過程を時間応答に優れた表面温度センサーと熱伝導逆問題解析手法で明らかにする点が本研究の特質すべき内容である.非定常遷移沸騰過程の伝熱特性に及ぼす液滴衝突速度とサブクール度の影響を明らかにした.また,固液接触界面温度履歴に基づき,固体側の非定常熱伝導と連成した非定常熱伝達の熱伝達率,固液接触時間を液滴衝突毎に評価し,さらに安定なぬれ状態へ移行する固液接触界面温度が冷却条件に関わらず250~260℃の範囲を境に生じることが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は,主に試験装置の設計・製作と静止高温面上の液滴列を用いた実験を実施した.噴流冷却初期の噴流よどみ域近傍で生じるぬれ回復中の自発核生成や不安定な固液接触を伴う非常に速い伝熱過程の把握は困難であるため,本研究では噴流直下で自律的に生じる固液接触の代わりに固液接触周期を制御した状況下での非定常冷却実験を行う. そのため,静止高温面上への液滴列を衝突させた間欠的な固液接触冷却条件での伝熱計測実験と高速ビデオカメラによる非定常沸騰冷却過程の可視化を先行して実施した.当初の実験計画では,液滴列冷却実験系に加えて高温回転体に対する衝突噴流冷却を用いて固液接触周期を回転速度で制御した移動高温面噴流冷却装置を製作し実験を行う予定であった.移動系の実験では,回転する高温面の温度履歴を外部のPCで取得するために,回転体に組み込み可能な小型のデーターロガーの新規購入を予定していたが,性能不足であることが分かり,熱電対入力チャンネル数2,同時サンプリング周波数2kHzの温度テレメーターのカスタム品を専業メーカーに新規発注することとなった.そのため,送信機や電源の寸法配置を決定するまでに時間を要し,移動系の実験装置の詳細設計に遅延が生じた.当初の研究計画に対して,移動系での実験開始が遅延しているため,やや遅れを生じていると判断した.なお,実験装置の準備については,当該年度内に温度テレメーターは納品されているため,詳細設計の遅れを次年度取り戻すべく注力している. なお,静止面上の液滴列冷却実験結果については,固体側の非定常熱伝導と固液せっしょきじの非定常熱伝達の連成解析による液滴衝突域でのぬれ開始条件についてのモデル化を進めているところで,実験データに基づくモデルの検討は当初の計画通りで進めている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究方策は,実験の準備が遅れていた移動高温面上の衝突噴流冷却実験装置の詳細設計と製作を最優先で実施することにより,本年度の遅れを取り戻し,当初の予定通り衝突噴流を用いた静止面と移動面上の噴流冷却実験を行っていく. また,本年度に実施した液滴列実験系を用いた非定常冷却実験では,円形ノズルから放出した噴流自由界面上に生じるRayleigh-Plateau不安定を利用して円形噴流から液滴列を生成したが,液滴衝突周期と液滴径のばらつきが若干大きかった.そのため,一様な液滴列の生成と衝突周期の変更範囲の拡大を得るために実験装置を改善し,引き続き液滴列を用いた静止高温面上の間欠冷却実験を測定範囲を拡大して実施する. なお,連続冷却条件での衝突噴流直下のよどみ領域のぬれ回復時の冷却速度は非常に早く,本研究で使用する時間応答遅れが70μsの固液接触界面温度センサーを用いても,非定常遷移沸騰過程の伝熱計測は困難となる.しかし,間欠冷却条件は連続冷却と異なり,冷却中の復熱による温度回復によって,よどみ点直下で生じる連続的な冷却過程を液滴衝突毎に時分割して観測可能となる.固体表面の衝突噴流を用いた連続冷却条件と間欠冷却条件の2つの条件で得られた非定常遷移沸騰熱伝達特性の比較検討によって,噴流よどみ領域での安定なぬれ状態の回復に及ぼす,固体側の非定常熱伝導の影響を明らかにすることが期待できる. また,連続冷却での不確定性が高い固液接触周期の状況では,高温面側の非定常熱伝導と連成したよどみ域での非定常遷移沸騰伝熱モデルの構築は一般に困難である.しかし,間欠冷却条件では,未知の固液接触周期が制御された状況での高温面上での非定常冷却となるため,噴流よどみ領域の伝熱モデル構築の第一歩として,間欠冷却系での非定常温度計測および高速度ビデオを用いた沸騰状況の可視化情報に基づいたモデルの検討を進めていきたい..
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