研究課題/領域番号 |
23K03716
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
大嶋 元啓 富山県立大学, 工学部, 講師 (40511803)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 減圧沸騰 / 液滴 / CVD / 蒸発 / 薄膜 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者らは自動車の内燃機関で用いられている減圧沸騰噴霧の制御技術を化学気相堆積法に応用した気化供給法(以下,Flashing-Spray CVD法)を提案している.本研究課題は本手法におおける高沸点の成膜原料と低沸点の有機溶剤からなる溶液の蒸発と薄膜形成の関係を明らかにすることを目的としている.具体的には以下の項目について研究を遂行する. ・ 薄膜形成条件(真空)における成膜原料-低沸点有機溶剤混合溶液の減圧沸騰過程を把握する. ・ 真空における混合溶液の減圧沸騰蒸発モデルを構築する. ・ 薄膜形成に至る化学反応過程を把握する.
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研究実績の概要 |
申請者らは自動車の内燃機関で用いられている減圧沸騰噴霧の制御技術を化学気相堆積法に応用した気化供給法(以下,Flashing-Spray CVD法)を提案している.本研究課題は本手法における高沸点の成膜原料と低沸点の有機溶剤からなる溶液の蒸発と薄膜形成の関係を明らかにすることを目的としている.具体的には以下の項目について研究を遂行する. ① 薄膜形成条件(真空)における成膜原料-低沸点有機溶剤混合溶液の減圧沸騰過程を把握する. ② 真空における混合溶液の減圧沸騰蒸発モデルを構築する. ③ 薄膜形成に至る化学反応過程を把握する. 当初計画ではR5年度に項目①を遂行,完了し,R6年度以降に項目②項目③に取り組む計画であったが,実施体制の関係から,R5年度においては項目①および項目②を並行して研究に取り組むこととした.項目①ではこれまで観察に用いてきた実験装置を見直して,可視化しやすい光源の配置,取得画像の解析方法を検討した.項目②では減圧沸騰モデルの構築のため,過去の研究で構築した気泡成長シミュレーションを用いて,水のときのシミュレーション結果と実験結果を比較した.その結果,実験を再現できていないことが分かり,実験を再現できるようにモデルの改善方法について検討した.この成果の一部は日本機械学会学会北陸信越支部にて発表した.また,混合溶液の蒸発特性を表現できるように蒸発モデルの検討も行った.そして,OpenFOAMに新たにモデルを導入するため,導入されている減圧沸騰モデルの現状の把握とそれを用いた噴霧シミュレーションを実施した.本成果はOpenFOAM workshopにて発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施体制の関係から当初の計画を見直し,当初計画での研究項目①「薄膜形成条件(真空)における成膜原料-低沸点有機溶剤混合溶液の減圧沸騰過程を把握する」に関するテーマの一部を実施し,並行してR6年度以降に実施予定の研究項目②「真空における混合溶液の減圧沸騰蒸発モデルを構築する」に関するテーマの一部を前倒しで実施した. R5年度では当初計画の研究項目①の「減圧沸騰過程の把握」のため,実験装置を見直した.現状では液滴,気泡の状況を可視化できるものの,画像解析に向かない実験装置の構成であることが実験を進めるうえで判明した.そこで,詳細な画像解析が可能になるように光源の照射およびカメラの位置を見直した.また,取得した画像から液滴形状を把握する事ができるように解析方法を検討した. 前倒しで行った研究項目②では過去の研究において構築した気泡成長シミュレーションを用いて水の時のシミュレーション結果と実験結果を比較した.雰囲気圧力は実験の時と同様の250 Paとした.シミュレーションでは時間の経過とともに気泡が成長し,液滴も成長することが分かった.シミュレーションでは計算開始とともに雰囲気圧力が瞬時に変化するため実験と状況は異なるが,実験結果によると液滴径は気泡の成長によらず一定で液滴の崩壊直前で急増することから計算と一致しないことが分かった.この点については今度検討する予定である.なお,この成果は日本機械学会北陸信越支部で発表した.混合溶液の蒸発特性にはPeng-Robinson方程式や修正BWR方程式の利用を検討した.また,核生成理論をOpenFOAMに導入するため,OpenFOAMに導入されている減圧沸騰モデルの現状を把握し,実験と比較した.この成果を国際会議のジェノバで開催されたOpenFOAM workshopにて発表した.
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今後の研究の推進方策 |
R5年度に行う予定の研究項目①「薄膜形成条件(真空)における成膜原料-低沸点有機溶剤混合溶液の減圧沸騰過程を把握する」テーマについては構築した実験装置を用いて成膜原料-低沸点有機溶剤混合溶液の液滴の減圧沸騰過程を可視化により観察する.液滴の保持の関係から溶液にはまずはエタノール/水混合溶液の使用を予定している.可視化には直接撮影によるものとし,液滴径および気泡径の変化を撮影画像から把握する.撮影画像から液滴径および気泡径を把握する方法にはR5年度で検討したエッジ検出方法を使う.また,前倒しで進めた研究項目②「真空における混合溶液の減圧沸騰蒸発モデルを構築する」テーマに関しても引き続き研究を進める.R5年度では現状のOpenFOAMの減圧沸騰モデルには気泡の計算による溶液の蒸発を考慮していないことが分かった.そのため.OpenFOAMに導入されている現状の減圧沸騰モデルを用いて,大きな減圧度における減圧沸騰シミュレーションを実施した場合,実際とは大きく異なることが予測される.R6年度ではR5年度までに用いてきた気泡成長モデルをOpenFOAMに導入する.まずはモデル内での気泡の成長の計算の可否とその計算方法について検討し,混合溶液の液滴の蒸発をシミュレーションできるようモデルを構築する.なお,今後の研究で得られる成果については国内外の関係する学会のシンポジウム等で発表を予定している.また,R5年度までに実施した研究内容は論文にまとめ,R6年度には関係学会に投稿を計画している.
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