研究課題/領域番号 |
23K03718
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
|
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
渡邉 摩理子 上智大学, 理工学部, 准教授 (80452473)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
|
キーワード | 流体工学 / 熱工学 / 燃焼工学 / 火災旋風 |
研究開始時の研究の概要 |
火災旋風の瞬間的な火炎高さおよび旋風直径の変化や旋風中心の移動は、火災の被害拡大につながる恐れがある。そこで本研究では、火災旋風の非定常特性に着目する。具体的には、画像解析を主とする実験と数値解析により、火炎高さの振動周期、振幅、旋風直径の変化、旋風中心の移動量といった非定常特性を調べ、循環や旋回強さ、燃料消費率などのパラメーターとの関係を解明する。さらに二つの火災旋風を同時に発生させる実験装置を構築し、風速や燃料供給源の位置関係を変化させながら複数の火災旋風の発生条件を探ると共に、相互干渉による火災旋風の非定常特性の変化ついても明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では火災旋風の非定常特性に着目しており、当該年度においては、画像解析を主とする実験により、火炎高さの振動周期、振幅、旋風直径の変化、旋風中心の移動量といった非定常特性を調べた。具体的には、衝立で囲まれた一辺500 mmのテーブルの中央に火炎源を配置し、プール火炎およびプール火炎から発生させた火災旋風を対象に、火炎高さの変動を高速度カメラにて撮影した。撮影された動画より、画像計測ソフトウェアを使用して各時刻における火炎高さを計測し、高速フーリエ変換(FFT)を行うことで火炎高さの変動の周波数分布を求めた。結果として、プール火炎よりも火災旋風の方がより高い周波数成分を含む変動をしていることが確認できた。次に、高速度カメラを用いて、水平方向および鉛直方向から同時撮影を行い、画像解析を行うことで、火炎高さおよび火災旋風直径と火災旋風中心位置の関係を調査した。結果として、火炎源中心から火災旋風中心までの距離が大きくなるに従い、火炎高さは減少し火災旋風の直径は増加する傾向が見られた。さらに、複数の火災旋風の同時発生条件を求めるための実験を行った。衝立で囲まれた430 mm × 905 mmのテーブル上に、 左右対称となるように2つの火炎源を配置した。領域長辺の一方の中央ともう一方の長辺の両端に送風機を設置し、右回りと左回りの二つの旋回流を発生させ、送風機の流速及び火炎源の間隔を変化させながら、二つの火災旋風が同時に発生する条件を探索した。結果として、火災旋風が同時に発生することはなく、一方が火災旋風に変化するともう一方は火災旋風に変化せず、火災旋風側が消炎するともう一方が火災旋風に変化する様子が観察された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた既存装置の改良・計測環境の整備・予備実験を実施した後、燃料供給源の直径が異なる複数の条件において火災旋風を発生させ、高速度カメラを用いて水平方向から火炎を撮影し、画像解析を行って火炎高さの振動周波数と振幅を求めることができた。また、粒子画像流速測定法(Particle Image Velocimetry, PIV)により、水平断面の速度分布や渦度分布も計測できた。さらに、2年目以降に予定していた水平方向と鉛直方向の2方向からの高速度カメラ同時撮影を実施することができ、火災旋風の中心位置と火炎高さの関係も調べることができた。一方、複数の火災旋風を同時に発生させる条件の探索においては、領域のサイズ・火炎源である燃料容器の直径・送風機の位置を固定し、火炎源間の距離および送風機の流速を変化させながら火炎の様子を観察したが、二つの火災旋風が同時に発生する条件は見出せなかった。また、当該年度においては実験を主に実施し、数値シミュレーションを行うことが出来なかった。 以上のように、単独の火災旋風の非定常現象に関する実験はおおむね順調に進めることが出来たが、複数火災旋風の相互作用に関する研究については、現象に関係するパラメータの数が多く、影響を調べ切れなかった。また複数火災旋風の同時発生条件の探索に時間を費やしたため、数値シミュレーションに関する研究は2年目以降に進めることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
2年目においては、初年度にやや遅れがあった複数火災旋風の同時発生条件の探索を優先して実施する。当実験においては、送風機の整流が不十分である、風量の調整範囲が狭いといった装置上の問題点があったため、まずはこれらの改良に当たる。また、現象に関係するパラメータ数が多いため、実験計画法を用いて効率の良い実験の設計を行う。単独の火災旋風については、PIVにより水平面及び鉛直面の速度場を求め、流れと火炎の変動の関係について考察する。当初は2年目以降に火炎温度の計測を予定していたが、PIVレーザーの動作不良により新規購入が必要となったため、二色法による火炎温度計測装置をレンタルすることが出来なくなった。したがって、当初の予定を変更し、火炎温度の測定は熱電対を用いた点計測のみとする。 数値シミュレーションについては、過去の研究においてすでに単独の火災旋風のシミュレーションに成功しているため、本研究においてもこれを活用する。実験で求められた速度場、温度場と計算結果とを比較して計算の妥当性を再評価した後に、火災旋風の火炎高さの振動や旋風中心の移動に関係するパラメータの探索を行う。また、二つの火災旋風を扱えるようシミュレーションを拡張し、複数の火災旋風同時発生条件の探索に活用する。
|