研究課題/領域番号 |
23K03719
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分19020:熱工学関連
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
今村 宰 日本大学, 生産工学部, 教授 (50436515)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 火花放電 / 非平衡プラズマ / 振動温度 / カーボンニュートラル燃料 / 火花点火 / 放電路延伸 / プラズマ / 非平衡 |
研究開始時の研究の概要 |
脱炭素が叫ばれているが、再生可能エネルギーの供給の不安定性を考慮すると、カーボンニュートラル燃料の利用が想定され、これをリーンバーンでエネルギー変換することが想定される。リーンバーンの点火過程においては、プラズマと流れ場、化学反応などが複雑に干渉するが、この過程においてプラズマの非平衡性も含めたエネルギー輸送については、解明が十分ではない。本研究では、この過程のモデリングを念頭に、生成したプラズマの振動温度および回転温度の空間的、時間的分布を得ることで、プラズマの非平衡性の緩和に関する知見を得ることを目的とする。これにより、点火モデルの高精度化に貢献し、新たなエネルギー変換機器の設計に資する。
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研究実績の概要 |
カーボンニュートラル燃料の利用は今後の地球温暖化対策の道筋の一つである。カーボンニュートラル燃料を燃焼などによりエネルギー変換して用いる場合、熱効率の観点からはリーンバーンが想定される。火花点火を用いるとすると、リーンバーンでは超希薄化に伴い低下した燃焼速度を補償するため高流動が導入され、放電路も大きく引き伸ばされる。このような点火現象は放電、プラズマの生成、エネルギーの緩和、化学反応と流動との相関など多くの現象を含むがその科学的な解明は十分とは言えず、発展的な点火機構の検討にあたっては、このような科学的知見が更に重要と思われる。本研究ではプラズマの生成後のエネルギー緩和に着目し、流動場中において振動温度、回転温度が並進温度に緩和していく過程についての詳細把握を目的とするものである。 本研究ではプラズマの分光計測を研究手法の中心として、定容容器における火花放電プラズマの状態把握の後、小型風洞を用いた流動場中における火花放電プラズマの空間分布の計測、それに続いて時間履歴に関する検討の3段階において研究を進める予定である。2023年度においては、定容容器における火花放電プラズマの状態把握を実施した。実験系として圧力容器を作成して容器内での火花放電時のスペクトルを取得した。取得したスペクトルのうち窒素分子からの発光を対象として、その振動温度、回転温度に関する見積もりを実施した。さらに取得したスペクトルから振動温度、回転温度を算出する手法として、窒素分子の振動温度や回転温度を変化させたスペクトルを計算してその形状を機械学習させ、スペクトル形状から振動温度、回転温度など算出する手法について検討を行い、作成したモデルである特定の温度範囲では振動温度などを再現できることを明らかにした。これに加えて、プラズマの空間分布を把握できるように受光系の改良を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の2023年度計画は、定容容器における火花放電プラズマの状態把握を実施することであった。そのため定容容器やそれに付随する混合容器、点火系、制御系と観測のための受光系などの整備を実施した。2023年度の進捗は実験装置の構築が主となったため、本研究に関与してくれた学生の卒業論文を除いては成果としてまとめられてはいないが、圧力容器を始めたとした実験装置の製作、構築とそれを用いての火花放電時のスペクトルの取得、解析が実施できたことから、概ね当初の予定どおり進捗していると言える。装置としては、実験の再現性の観点から混合気を形成する混合容器の特性が当初期待したものとはなっておらず、十分に均一な混合ができていないようであったため、この点において数値シミュレーションも含めて混合の方法を再検討し、2023年度において装置改良を実施したところである。また点火系についても放電エネルギーを実験パラメータとできるように高エネルギー点火装置の開発に取り組み、その原理実証まで実施できた。取得したスペクトルの解析については、その由来が不明のスペクトルも確認されており、現在、その原因解明を含めて実験装置の見直しを行っているところであり、加えて取得、解析する波長帯についても再度検討しているところである。また圧力の影響については現状では十分な取得データが得られておらず、2024年度に引き続き圧力の影響について検討を行う予定である。他方で機械学習を用いたスペクトル解析を実施したが、これは当初は予定していなかったものであるものの、検討の結果適用できそうな見通しもつき、2024年度においても引き続きその適用性について検討の予定である。 以上から計画通り進捗していない案件もあるものの、予想外に進捗があった案件もあり、全体としては概ね予定通り進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の全体での計画としては、プラズマの分光計測を研究手法の中心として、定容容器における火花放電プラズマの状態把握の後、小型風洞を用いた流動場中における火花放電プラズマの空間分布の計測、それに続いての時間履歴に関する検討の3段階において研究を進める予定である。2023年度においては、定容容器における火花放電プラズマの状態把握を実施しており、具体的には実験系の構築とその検証を実施した。一部、実験装置については、混合容器と点火系について開発を行ったものの検証が十分にできておらず、2024年度初頭においてもそれらの動作の検証を実施する予定である。他方で機械学習を用いたスペクトル解析については、これは当初は予定していなかったものであるが、2024年度も引き続きその適用について検討を進める予定である。 当初計画では、2024年度においては小型風洞を用いた流動場中における振動温度および回転の空間分布の計測と詳細把握が計画の主眼である。このため上述の案件を含めて、まずは2023年度における定容容器における結果を精査するとともに、すでに取り掛かっているがプラズマの空間分布を把握できるように受光系の空間分解能の向上、改良を実施する予定である。これに加えて、現在、定容容器内にわずかながら流動を生成できるような装置改良を施しており、まずは定容容器内で放電路を延伸させて放電プラズマ空間分布を試みる予定である。その後、小型風洞を用いて流動場中におけるプラズマの空間分布を把握する予定である。特に小型風洞では、圧力、流速に加えて、乱流の乱れ強さなどを変化させる検討も実施しているところである。
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