研究課題/領域番号 |
23K03742
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
関 啓明 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (20270887)
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研究分担者 |
辻 徳生 金沢大学, フロンティア工学系, 准教授 (30403588)
平光 立拓 金沢大学, フロンティア工学系, 助教 (70845536)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 箔 / 静電吸着 / 静電気 / ハンドリング / 自動化 / 箔移し作業 |
研究開始時の研究の概要 |
伝統産業の金箔製造でも自動化が求められている。その際、箔を取り出して移動させるハンドリング技術が要である。箔は厚さ0.1μmと非常に薄く、破れやすく、皺がよりやすく、静電気でくっつきやすく、極めて扱いにくい。本研究では、あえて静電気を使って箔を着脱する方法を試みる。通常の静電吸着や静電浮上の対象は、薄板のように形状が変化しないとみなせる。大変形をする薄い箔を対象とするものは皆無である。このような変形する箔に対して、多数の電極とセンサでギャップを制御して静電浮上させる方法と、箔を傷つけないような柔軟で細い糸で静電吸着する方法を試す。また、それらを応用して「箔移し作業」の自動化装置を開発する。
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研究実績の概要 |
伝統産業の金箔製造でも自動化が求められている。その際、箔を取り出して移動させるハンドリング技術が要である。箔は厚さ0.1μmと非常に薄く、破れやすく、皺がよりやすく、静電気でくっつきやすく、極めて扱いにくい。本研究では、人が箔を扱う際には非常に嫌われている静電気をあえて使って、箔を着脱する方法を試みる。本研究の目的は、大変形をする非常に薄い箔を静電気をつかって安定にハンドリングする技術を確立することである。本年度は、静電気をつかったハンドリング手法として、非接触で静電浮上させる方法と柔軟な糸に高電圧をかけて着脱する方法を試みた。 静電浮上させる方法では、レーザ距離センサで箔までの距離を測りながら、複数の電極に高電圧を印加して浮上させたが、箔が傾いて浮上したり、浮上した後で横滑りしたりする現象が見られ、安定に浮上させることはできなかった。そこで、浮上用の電極に加えて、箔の中央に小さな電極を設けて箔と接触させる方法を考えた。その結果、横滑りせずに安定して浮上させることに成功した。しかしながら、非接触というメリットがなくなった。 柔軟な糸をつかう方法では、まずは、簡単な予備実験装置を試作して、試行錯誤により、高電圧をかけたループ状の糸で箔が吸着でき、高電圧を切ると離れることを確かめた。また、糸の種類や太さ、形状(ループの幅や高さ)によって吸着力がどのように変化するかを微小な荷重計を用いて調べた。その結果、材質はポリエステル糸が良いこと、太いほど吸着力が大きいこと、電極からの距離の影響もあって形状の効果は明確でないことなどが分かった。さらに実験の過程で、湿度の影響が大きいことが見いだされ、そもそもなぜ糸で静電吸着でき、簡単に分離できるかを含め、原理の解明を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画した通り、箔を静電浮上させる方法と糸で静電吸着する方法を試みた。いずれも基本的な方法としては成功した。ただ、箔を静電吸着する方法は、横滑りを防ぐため、非接触というメリットがなくなった。接触させるのであれば、糸で静電吸着する方法が簡単で、見通しがよいという判断にいたった。 そこで、糸を使う方法について、糸の種類や太さ、形状などの影響を調べる実験を着実に進め、様々な知見を得た。予想外の知見としては、湿度の影響が大きいことを見出したことである。これは、なぜ糸で箔を吸着でき、容易に分離もできるかという原理を明らかにする手掛かりとなる。 このように、初年度としては、順調に研究が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
箔を静電浮上させる方法は成功したものの、横滑りを防ぐため、非接触というメリットがなくなった。そうであるなら、糸を用いて静電吸着させる方法の方が見通しが良い。こちらの方法については、箔を吸着・分離できることは確認済みである。糸の種類や太さ、形状などについても本年度の研究で知見が得られた。 それらの実験の過程で、湿度の影響が大きいことが判明した。そこで、なぜ湿度か関わってくるのかを含め、糸による静電吸着・分離現象を解明したい。そのため、湿度の異なる状況下において、静電気の停電や伝播を調べたり、電位の変化を計測したりするなど、基礎的な実験を行う。箔を吸着する際だけでなく、分離する際の残留電荷の様子についても調べる。現象を明らかにしたうえで、効果的な箔の吸着・分離のための糸や電極の配置などを実験する。 さらには、予定したように、周辺技術の検討も含め、箔の「箔移し作業」の自動化装置の試作へと研究開発を進めていく。
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