研究課題/領域番号 |
23K03744
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20010:機械力学およびメカトロニクス関連
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
加藤 貴也 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 准教授 (40422878)
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研究分担者 |
馬場 創太郎 三重大学, 工学研究科, 助教 (10839674)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | バイオメカニクス / 6軸力学試験 / ヒト屍体腰椎 / 脊椎インプラント / ひずみ / バイオエンジニアリング / 力学試験 / 脊椎 |
研究開始時の研究の概要 |
脊椎疾患の治療の代表的な術式の一つであるpedicle screw and rod fixationにおいて、インプラントの破損は大きな問題の一つである。一方で、アジア人脊椎の治療に関する実験的な研究は少なく、原因究明に必要なデータは不足している。さらに、国内では実験用ヒト屍体の入手が困難である。そこで本研究では、アジア人の実験用ヒト屍体が使用可能な協定校のコンケン大学(タイ)と連携し、脊椎用6軸力学試験機を用いた脊椎多椎間の変形挙動とインプラントに生じる負荷との関係性を詳細に調査し、インプラント破損の原因を明らかにする。また、原因究明に有効となる数値シミュレーションの構築も目指す。
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研究実績の概要 |
脊椎疾患の治療の体表的な術式の一つにpedicle screw and rod fixation(以下:PS)がある。そのPSにおける問題の一つであるインプラントの破損等の原因について、力学的観点から明らかにすることは必要不可欠である。そこで本研究では、タイのコンケン大学との連携によってヒト屍体腰椎を用いた6軸力学試験を実施した。 まず三重大学にて、動物(シカ等)の屍体脊椎を用いた6軸力学試験を実施し、コンケン大学で実施するヒト屍体腰椎を用いた実験の計画検討を行った。検討された実験方法・計画を基にコンケン大学へ渡航し、設置済みの脊椎用6軸力学試験機を用いて、ヒト屍体腰椎に対する6軸力学試験を実施した。コンケン大学より提供されたヒト屍体腰椎(多椎間)に対して、段階的に損傷の作成、インプラント設置などの手術手技(試験モデルの作製)を行うことにより、多椎間およびFSU(機能的脊椎単位:単椎間)の各種試験モデル(正常、損傷、PS設置など)を作成し実験することができた。PS設置モデルでは、腰椎の変形に伴って生じるPSのロッドのひずみの変化を連続的に取得できた。その結果、腰椎の前後屈、左右側屈の変形挙動(試験体上端と下端の角度変化)とそれによって生じるPSのロッドのひずみの関係を明らかにする基礎的な実験環境・方法を構築できた。今後は、試験体の数を増やし、回旋運動の検討を行うとともに、多椎間腰椎の実験における各椎体の角度変化を取得するシステムの構築を行う。 また、腰椎のシミュレーションを構築する上で椎間板の物性値は重要である。三重大学では動物屍体、コンケン大学ではヒト屍体の腰椎の椎間板を用いた力学試験を実施し、応力-ひずみ曲線やその速度依存性(粘弾性)についてのデータを入手した。それらのデータを用いて、椎間板の粘弾性や繊維輪の特性を含むシミュレーションモデルの構築を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三重大学での動物屍体腰椎を用いた力学試験による実験系の構築、その成果を基にしたコンケン大学におけるヒト屍体腰椎を用いた6軸力学試験は、概ね計画通りに実施された。実験時間やヒト屍体腰椎の試験体の数に制限があり、予定されていた回旋実験は行えなかったが、それ以外の条件については計画通りに腰椎FSUで実験が実施され、必要なデータが得られている。一方で、2024年度に計画していた多椎間を対象とした実験については、予備実験を行うことができ、今後の研究計画の推進に対して有用な情報を得ることができた。また、コンケン大学での実験では、佐賀大学医学部の脊椎外科医の協力を得ることができた。ヒト屍体腰椎に対する試験モデルの作製には、脊椎外科医の協力は必要不可欠である。今後の研究推進のために、次年度から本研究に研究分担者として参画いただくことの了承が得られた。 現状では計画に大きな支障が生じる状況ではないが、以下の点は今後の課題となった。本研究はタイのコンケン大学との共同研究であり、ヒト屍体腰椎を用いた実験はコンケン大学で行う必要がある。そのため、昨年度からの円安、物価高の影響は大きく、海外渡航、現地での試験体などの購入において、研究計画や予算配分の変更などの検討が必要になる可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
研究は概ね順調であり計画通りに実施する予定である。しかしながら近年の円安、物価高の影響により、コンケン大学で行うヒト屍体腰椎を用いた実験については、予算等の関係で制限が生じる可能性が考えられる。一方で、動物屍体腰椎については研究に十分な量を確保できたため、それらを有効に活用し、コンケンでの研究環境の変化に柔軟に対応できるような実験計画・方法を検討する。 加えて、研究体制の強化を行った。本研究の推進において、実験計画の検討や臨床的観点からの考察、特にヒト屍体腰椎を用いた試験モデル作成には脊椎外科医の協力が不可欠である。次年度からは、2023年度の実験に協力の得られた佐賀大学医学部の脊椎外科医2名の研究分担者として参画が決まっている。この研究推進体制の強化によって、コンケン大学での実験の効率化だけでなく、実験内容、結果・考察の幅が広がり研究計画の最適化への貢献が見込まれる。
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