研究実績の概要 |
①「テニス肘を発症したVDT作業従事者の頭蓋脊椎角」および②「情報機器作業時の頸椎肢位の違いによる筋硬度の即時変化 ~僧帽筋上部線維および手関節伸筋群での検討~」として、データ収集を進め報告した。 ①としては、対象者としたテニス肘と診断を受けた症例のうちVDT作業を主務とした者とし,男性17名, 女性22名の計39名(29-74歳)であった. 先行研究に準じ, CV角の計測は, 第7頸椎に対する水平線と耳珠がなす角とした. 結果として, 全対象者39名のCV角の平均値は29.2°(±5.1)であった.本研究の結果より, VDT作業に従事するテニス肘発症者のCV角の平均値は29.2°(±5.1)であり, 先行研究の出たに近似し, VDT作業従事者のテニス肘発症に, CV角が低下することが関連する可能性が示唆された. しかしながら, テニス肘が発症してからCV角が低下したのか, 発症以前にCV角が低下していたのかについて更なる検証(VDT作業従事者で, テニス肘を発症していない対象者での検証)が必要であると考える. ②については、VDT作業時の良姿勢と不良姿勢時の筋硬度を計測した. 結果として筋硬度は各々, 良姿勢時の僧帽筋上部線維は1.44±0.58N, 手関節伸筋群は1.70±0.54N, 不良姿勢時(良姿勢から不良姿勢に変化した直後)の僧帽筋上部線維は1.73±0.45N, 手関節伸筋群1.83±0.57Nで, 変化率にすると, 良姿勢の僧帽筋100%に対して不良姿勢では173±45%, 手関節伸筋群は100%から183±53%へと即時的な上昇を認め, 僧帽筋および手関節伸筋群の筋硬度は, 良姿勢と不良姿勢の間に有意差を認めた(p<0.01). 本研究結果より, 僧帽筋上部線維と手関節伸筋群は, 良姿勢から不良姿勢へと変化した直後から筋硬度が変化したことを認めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在まで、頭蓋脊椎角および良姿勢・不良姿勢時の手関節伸筋群の筋硬度のデータ収集は進んでいる。これより先は、三次元動作解析装置による肩甲帯および上肢の角度変化とそれに伴った筋硬度の計測を進めていくことが必要となる。これまでの結果より、 VDT作業従事者のテニス肘発症に, CV角が低下することが関連する可能性が示唆されたこと、僧帽筋上部線維と手関節伸筋群は, 良姿勢から不良姿勢へと変化した直後から筋硬度が変化したことを認めたから、テニス肘(パソコン肘)の発症要因には頭蓋脊椎角や不良姿勢による筋硬度の変化(上昇)が影響を及ぼしているのではないかと推測される。ここに三次元的動作解析を含めることで、さらに発症の要因を詳細に分析することが可能となるのではないかと考える。
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