研究課題/領域番号 |
23K03765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
衣笠 哲也 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20321474)
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研究分担者 |
吉田 浩治 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00254433)
林 良太 岡山理科大学, 工学部, 教授 (40288949)
奧田 ゆう 岡山理科大学, 獣医学部, 講師 (70966415)
千葉 謙太郎 岡山理科大学, 生物地球学部, 講師 (80826438)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 筋骨格系の選択的受動協調機構 / ワニ後肢ロボット / 走鳥類の足根間関節設計法 / 筋骨格系 / 主竜類ロボット / 受動的連動メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,ワニ類と鳥類の筋骨格系に内在し環境と相互作用することで発現するロコモーションのための選択的受動協調機構を解剖学的,機能形態学的に明らかにするとともに,骨格モデルを用いたロボットによってこれを実現することでその妥当性を検証する.また,多様な種を包含する主竜類に対し,機能的な相同性に着目し,ロコモーションのための受動協調機構が普遍的にどのような形態で存在するのか明らかにする.
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研究実績の概要 |
本研究は脊椎動物が見せる滑らかなロコモーションを実現するメカニズム解明のために,主竜類であるワニ類と鳥類に注目した以下の3項目を目的としている.1)筋骨格系に内在し環境との相互作用で発現する選択的受動協調機構の解剖による解明.2)骨格標本に基づいて構成されたロボットによる本機構の妥当性の検証.3)機能的な相同性に着目した主竜類における受動協調機構の普遍的存在性の確認. 今年度は,ワニ後肢に内在する複数の筋腱が連結されることで実現される受動的連動メカニズムについてより詳細な解析を行うためにワニ後肢ロボットを再構築した.新たなロボットは,長尾大腿筋,サットンの腱および腓腹筋の張力および股関節,膝関節および足関節角度を計測することが可能である.実験により得られた結果から,長尾大腿筋から分岐するサットンの腱によってモーメントアームが増大し,少ない牽引力で立ち上がり動作が実現されることを明らかにした.また,腓腹筋との連動が膝の過伸展を抑制する機能を持つ可能性を示唆する結果を得ている. 解剖については,イリエワニの解剖を実施し,骨盤から尾椎に沿って配置され尾部の姿勢維持とその運動を司る筋と本研究で注目する長尾大腿筋との間にどのような関係が見られるのかを確認した.その結果,尾部を重力に対して支持するためにある程度受動的に水平姿勢を維持する筋構造の存在が示唆された.現在,尾部を含む後肢の運動を実現するロボットを開発中であり,この構造を再現し,尾部と後肢の運動の関係について今後考察する予定である. 鳥類については,Emuやダチョウの足根間関節が持つEDM(engage disengage mechanism)を実現するカム様構造の設計法を構築した.これによって,走鳥類が歩行中にEDMによってどのような高架を得ているのかロボットにより検証することが可能となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
筋骨格系に内在し環境との相互作用で発現する選択的受動協調機構の解剖による解明について,ワニについては現在所有しているイリエワニの解剖をおこない後肢から尾部近位端周辺の筋系に注目して昨日の確認をおこなった.しかし,この標本は3mと大きく頭部と尾部を切断して保存しているため尾部に至る筋系の詳細を解明するための標本が必要である.現在努力をしているが今年度は入手に至らなかった. 骨格標本に基づいて構成されたロボットによる本機構の妥当性の検証について,ワニロボットは筋系,特にサットンの腱に関連する筋系の受動的連動を実現し,その有効性をある程度検証することができた.また,論文が採録となった.また現在,この受動的連動を再現する動力学モデルを構築し,運動解析を行っている.トリについては,連動を実現する筋系の存在について確認したが,簡略化してロボットを構築するに至っていない.しかし,足根間関節EDMの設計法を提案し,筋系ではなく骨格の受動的メカニズムの構成を可能とした.現在,論文投稿中である. 機能的な相同性に着目した主竜類における受動協調機構の普遍的存在性の確認について,保存状態のよいモンゴルで採取された恐竜類であるプロトケラトプスProtoceratops Andrewsiの骨格標本に対し,ワニで確認された受動的連動を実現する筋系を導入したロボットを構築した.現在,ワニが持つ筋系がプロトケラトプス後肢に存在したかどうかについて考察を行っている. 以上の状況から,概ね順調に研究は伸展しているものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方針は, 1)ワニ後肢ロボットについては,両脚,尾部を導入し,立位姿勢維持と推進の実現だけでなく尾部の運動メカニズム解明,遊脚動作の実現,さらには後肢による歩行の実現を目指す. 2)トリについては,引き続き筋系の連動を骨格標本に導入したロボットの実現を目指すとともに,設計法を確立した足根間関節のEDMについては,恐竜類,特に獣脚類の足関節において相似的機能の存在可能性について実際の化石標本を用いて考察する.また,獣脚類と鳥類におけるEDMの進化の過程について考察する. 3)恐竜類については,プロトケラトプスの骨格に基づくロボットを用いてワニ類に存在する筋系の受動的連動メカニズムが立位動作を実現するかどうか詳細に実験を行う.
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