研究課題/領域番号 |
23K03779
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分20020:ロボティクスおよび知能機械システム関連
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
鈴木 健司 工学院大学, 工学部, 教授 (50251351)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マイクロロボット / バイオミメティクス / 壁面歩行ロボット / 表面間力 / MEMS |
研究開始時の研究の概要 |
生物の湿式付着については,昆虫やアマガエルの付着の研究が生物学や表面工学の分野で行われているものの未解明な部分が多く,液体の表面張力,粘性,潤滑性,パッドの変形など,様々な物理現象が複合的に関与していると考えられる.そこで,本研究ではこれらの要因をなるべく分離した形でロボットの機構として取り入れ,生物の壁面移動をロボットで再現することによって,付着現象の解明を行う.また,ロボットの実用化を考慮し,20g程度の重量制限の中でバッテリーや制御回路を搭載し,ワイヤレスで自律的な移動が可能な小型ロボットの製作技術を確立する.
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研究実績の概要 |
本研究の初年度の目的は、「昆虫の足の付着機構を規範として、液体の表面張力や粘性を利用した付着機構を開発し、付着力,摩擦力の特性を明らかにするとともに、この付着機構を用いて平滑な壁面や天井面を移動可能な小型ロボットを開発すること」であった。この目的を達成するため、2023年度は、2平面間に挟まれた水滴の表面張力によって生じる「メニスカス力(キャピラリー力)」を利用した壁面移動ロボットの開発を行った。メニスカス力は、平面に垂直な付着力に比べて平行方向の摩擦力が十分に小さいことから、付着機構と推進機構を分離し、推進機構を用いて付着パッドを付着面から離さずにすべらせながら移動を行う方式を採用した。前年度までに行っていた脚式の推進機構では、付着が安定せず長距離の移動が困難であったため、2023年度には新たに車輪式の推進機構を開発し、移動中の機体の上下動を抑えた結果、安定した付着が可能となった。また、独自に開発した付着力測定装置を用いて、付着パッドの付着力・摩擦力の特性を詳細に調べ、水滴量を最適化することによって、付着力を大幅に向上させることができた。さらに,ロボットの力学的な解析をもとに重心位置などの調整を行い、垂直面での車輪荷重とグリップ力を強化した。以上の改善を行った結果、垂直な壁面での移動距離は500mm以上となり、先行研究に比べて移動距離を大幅に向上させることができた。また、天井面での移動や、平面・壁面間の移行も実現することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究目的である「昆虫の足の付着機構を規範として、液体の表面張力や粘性を利用した付着機構を開発すること」については、水滴の表面張力を利用した付着機構を開発し、ロボットへの適用を行った。また、「付着力、摩擦力の特性を明らかにすること」については、独自に開発した測定装置を用いて水滴をはさんだ2平面間の付着力、摩擦力を測定し、その特性を明らかにし、ロボットの付着パッドとして最適な条件を見つけることができた。さらに、得られた付着力・摩擦力の特性を生かし、付着機構と推進機構を分離した新たな壁面移動方式を開発することができた。また、「付着機構を用いて平滑な壁面や天井面を移動可能な小型ロボットを開発すること」については、推進機構として車輪を採用することで、安定した付着が可能なロボットを開発することができ、壁面移動、天井移動の距離を大幅に伸ばすことができた.以上の研究成果より、本研究は当初の計画通りに進捗しており、初年度の研究目的を十分に達成することができたと考えている。 研究成果の公表については、国内学会でのポスター発表1件を行い、査読付き英語論文も1編が掲載され、国内外に研究成果を示し、当該分野の研究者からのフィードバックも得ることができた。また、本研究を含む昆虫規範型マイクロロボットに関して、小学校3年生の理科の教科書に紹介された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2年目に当たる2024年度には、当初の計画通り、液体の粘性を利用した壁面移動ロボットの開発を行う。初年度に開発した表面張力を利用した移動方式では、平滑面以外での移動は困難であり、付着機構のみではロボットの推進に必要な摩擦力を発生させることができないなどの問題点があった。そこで、液体の粘性を利用することによって、付着パッドのみで付着力と摩擦力の両方を発生させ、付着と推進を同時に行うことが可能になると考えられる。さらに、微細加工技術を用いて付着パッドの表面に溝などの構造を加工することにより、付着力・摩擦力の長時間の持続が実現できる可能性がある。粘性の高い液体と、材料や表面形状の異なる複数の付着パッドを用意して付着力,摩擦力の測定を行い、付着特性, 摩擦特性の評価を行う。また、付着力の速度依存性などから粘性力と表面張力の寄与分を明らかにする。この結果を踏まえてロボットの設計、製作を行い、一つの機構で付着と推進の両方を行う移動方式により、壁面歩行と天井歩行を実現させる。移動機構としては脚による歩行や、放射状の脚の回転による移動を検討する。
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