研究課題/領域番号 |
23K03815
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
|
研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
道下 幸志 静岡大学, 工学部, 教授 (50239274)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
|
キーワード | 雷害対策 / 高圧配電線 / 電磁界観測 / 雷電流波形 / 雷電荷量 / 雷電流波高値 / 雷 / リスク評価 |
研究開始時の研究の概要 |
高圧配電線の雷保護対策を検討する上で必須の,電磁界観測に基づく雷電流波形推定手法及び雷害対策評価手法の確立を行う。これにより,地域の雷特性を考慮したきめ細かな検討が可能で,様々な設備構成を有する高圧配電線の雷被害率評価と雷害対策の両者を総合的に評価できる雷リスク評価手法を確立する。
|
研究実績の概要 |
ファストアンテナを用いた雷に伴う電界波形の実測を霧島市、宮崎市、東広島市、浜松市で行っている。スローアンテナを用いた雷に伴う電界波形の実測は鹿屋市、福岡市、上越市、由利本荘市で実施している。電流波形の実測は、鹿児島市、北九州市、益田市、にかほ市で実施している。 冬季雷が対象となるにかほ市では2023年度は50例を超える雷撃の観測に成功しており、同時に8-13km離れた由利本荘市での電界観測にも20例以上で成功している。観測結果に基づいて電荷量や電流波形の推定を実施し、電流観測による実測結果と電界観測に基づく推定結果は雷害対策の主対象となる帰還雷撃については概ね良好な一致が得られている。一方で、稀に波高値の大きなパルス電流の発生源となるMコンポーネントについては良好な一致が得られているとは言い難い状況であり、今後帰還雷撃とは異なるMコンポーネントに特化したモデルの構築が必要である事が判明している。 2023年度は、過去に得られた雷害事例について、雷撃電流波高値と、雷撃柱や隣接柱の耐雷機材との相関を求めた。また、夏季雷地区における避雷器の焼損は大電流波高値の場合に大半が発生する事が判明した。架空地線の設置は特に避雷器の焼損防止には有効である事も確認された。雷害の発生は、当該柱の耐雷機材の影響を大きく受けるが、隣接柱の耐雷機材の影響は小さいことが判明した。架空地線が設置されている場合には、隣接柱に避雷器などの耐雷機材が設置された場合と比較して、耐雷機材がない場合の方が雷撃柱の避雷器の焼損は発生しにくいという一見意外に見える結果が得られ、この結果は理論的にも説明できることも明らかにした。これらの成果については国内学会では発表済みであり、今後国際会議や論文誌論文として発表する準備も進めている。国内会議や国際会議の査読段階では高い評価を得ている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予測した計画では2023年度はデータ収集が主な予定であったが、データ収集のみならず、マクロな事故解析を実行しており、この点は予定よりも大幅に進展しており特筆すべき事項と考えている。 一方で、電力会社の分社化により、会社間(送配電会社と研究所が属するホールディングス)のデータの融通が困難になり、最新のデータの取得が難しくなった一般送配電事業者もあるが、これらの会社に関しては過去のデータの提供を受けて解析を進めることで研究上の支障にはなっていない。過去に取得したデータに基づき事故の再現にも取り組んでおり、夏季雷に伴う避雷器焼損など耐雷機材のエネルギー耐量超過事故やスパークオーバ事故は概ね良好に再現されている。 冬季雷地区の雷害に関しては、電気設備学会東北支部が主催する「東北地域冬季雷害様相調査検討委員会」に顧問として参加し,高圧配電線のみならず需要家設備の雷害についても調査を進めている。この委員会の委員は冬季雷被害を長年調査している関係で事故調査の要点を心得ている上に、現地調査も実施していることからより詳細な事故情報が効率良く得られている。この点も研究を進める上で特筆すべき事項と考えている。 由利本荘市の電磁界観測は順調であるため、上記委員会で得られる雷害データと電磁界観測結果に基づいて当初予定した実事故を再現するためのデータが整ったことは効率的に研究を進める上で大きな前進であると認識している。これらのデータに基づいて雷害対策の主対象となる現象を同定する。 雷電流と電磁界の相関を論じる上では同時観測結果が不可欠であり、これらのデータも順調に取得できている。このデータは、雷害対策の対象となる現象のモデル化に大いに活用できる。 これらの状況を考慮して、当初の計画以上に研究が進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1)主として冬季雷の雷害データの取得を進める。 2)雷害と電磁界の同時観測を実施し、雷害の主対象の現象を特定する。 3)雷害の再現可能な手法を構築し、解析精度を高める。 4)雷電流と電磁界の同時観測を継続し、対象となる雷現象のモデル化を推進する。 1)~4)の結果に基づいて総合的な雷リスク評価手法の開発を行う。
|