研究課題/領域番号 |
23K03817
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
木村 高志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225042)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | スパッタリング / パルスプラズマ / 機能性薄膜 / HiPIMS / プラズマ / ハ-ドコーティング |
研究開始時の研究の概要 |
高い成膜速度ならびに結晶の巨大化を行う低密度マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式と比較的低い成膜速度ながらも緻密化ならびに微結晶化を行う高密度マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式の組み合わせにより材料の構造を調整しながら所望の薄膜材料特性を実現する。遷移金属窒化物やダイヤモンドライクカーボンなどのハードコーティング材料および 赤外光の反射率が材料の温度に依存することからスマートウインドウへの応用が期待される二酸化バナジウムや光触媒機能を有する二酸化チタンなどの金属酸化物を作成する。
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研究実績の概要 |
マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式による材料プロセスに着目し、プラズマへの投入電力のパルス制御により所望の特性を満たす材料を作成する技術を確立することを本研究の目的としている。作成対象とした材料は、ダイヤモンドライクカーボン膜、赤外光の反射率が材料の温度に依存することからスマートウインドウへの応用が期待される二酸化バナジウムを主とした金属酸化物である。 ダイヤモンドライクカ-ボン(DLC)膜は、高硬度、低摩擦係数の特性を生かした機械部品の保護膜への応用、生体親和性を活かしたステント等の医療への応用など様々な分野で利用されている。本研究では複数のパルス電圧を印加して生成する高密度マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式(マルチパルスHiPIMS)でDLC膜を作成した。ターゲットから飛来した炭素原子をイオン化し、膜中に入射する炭素原子イオン量を増加させることでDLC膜の特性の改善をはかった。その結果、これまで継続研究を行っていた単パルスHiPIMSに比べ、膜密度やダイヤモンド結合割合が10-15%ほど高くなり、さらなる高硬度化が実現可能であることが明らかになった。 酸化バナジウム膜は、高密度パルスプラズマと低密度パルスプラズマによるマグネトロンスパッタリングを組み合わせた方式で ガラス基板を加熱しながら 基板上に再現性良く作成した。二酸化バナジウム膜作成のための条件範囲は狭いものの、X線回折測定では、単斜晶系二酸化バナジウムに関連するピークが観察され、そのナノ結晶サイズはピーク分析から20nmから35nmの範囲と推定された。また、室温時での膜の光透過率は500nmより長波長側では約30%から50%の範囲であったが、高温時(およそ90℃)の膜の赤外線透過率は10%以下となり良好な特性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した方式で作成したダイヤモンドライクカ-ボン膜や酸化バナジウム膜が良好な特性を示しているため
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式により所望の特性を満たす機能性材料を作成することを目的とする。作成対象はハードコーティング材料に用いられるダイヤモンドライクカーボン(DLC)、赤外光の反射率が材料の温度に依存する二酸化バナジウムなどの金属酸化物である。今後の推進方策を記す。
1.パルス電圧を複数印加する高密度マルチパルスプラズマを用いたスパッタ方式によるDLC膜作成に関し、マルチパルスプラズマのパルス数と材料特性の関係を明らかする実験を行う。さらに、パルスマグネトロンスパッタリングの電源システムを改良し、複数の高密度マルチパルスプラズマの状態を同じにするのではなく、印加するパルス電圧の違いによりパルスプラズマの密度に差をつけることでさらなる特性改善を計る。 2.酸化バナジウム膜の作成に関し、高密度パルスプラズマと低密度パルスプラズマによるマグネトロンスパッタリングを組み合わせた方式により高い再現性が実現できた。 しかしながら、良好な膜特性を得るには作成時に基材への加熱が必要であり、低温状態での作成が課題となった。低温化に向けて、他の金属酸化物を下地層(中間層)としてガラス基板上に作成し、その上で 酸化バナジウム膜の作成を実施する実験研究を加えていく。
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