研究課題/領域番号 |
23K03818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
堀田 昌志 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (70229201)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
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キーワード | 共振器結合型 / レイアウトフリー給電 / デュアルスパイラル共振器 / 損失性障害物 / 電磁界シミュレータ / 共振器 / 電力伝送効率 |
研究開始時の研究の概要 |
移動体電気機器等へワイヤレスで効率的に給電可能な無線電力伝送システムが注目されている。本研究では,送・受電装置間のずれに対する許容度が高く,数m離れた位置でも電力伝送が可能な共振器結合型無線電力伝送システムを取り挙げ,その高性能化を検討する。 電力伝送距離が長くなると,伝送路内に異物が混入する可能性が高まる。そこで,これまで行ってきた測定実験に加え,損失性障害物存在の影響も考慮した電磁界マルチフジックス解析を行い,障害物の影響回避が可能でより高性能な無線電力伝送システムの構築法確立を目指す。
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研究実績の概要 |
既設の建物内電灯線レイアウトやコンセントの配置に左右されること無く,各種センサを搭載したIoT電気機器や移動体システムへ電力供給することに適した無線電力伝送システムの構築について,より実用的な観点を考慮に入れて考察している。 これまでの従来型無線給電システムでは,電磁誘導現象を利用したものが非常に多い。当システムでは,電力電送可能距離が数mm~数cmと極めて短く,送・受電システム間の位置や角度ずれによる影響が送電効率に致命的な影響を与える。そこで,本研究では送・受電装置内に共振器を組み込むことで,数十cm~数mといった中距離の電力伝送が可能で,システム間のずれにも強い共振器結合型無線電力伝送システムについて,長くなった電力伝送路内に損失を持つ障害物などが入り込んだ場合を想定しながら,その影響回避法などを検討している。 これまでに,研究代表者は損失物体の影響を効率よく回避できるデュアルスパイラル共振器を考案してきた。これに対し,初年度である令和5年度は,デュアル共振器の巻き方向組み合わせや形状を変化させる,あるいは,スパイラル共振器内にキャパシタを装荷することで損失物体の影響をさらに低減できないかを詳細に検討した。その結果,内側と外側のスパイラル共振器の巻き方向を逆転させることで,電力伝送効率をわずかではあるが向上可能できること,そして,損失物体の影響を従来のデュアルスパイラル共振器よりも低減できることを明らかにした。 なお,数値シミュレーションにより,共振器周辺の電磁界分布と損失低減効果の相関関係を明らかにすることも同時並行して行っているが,現状では,曲線を含む共振器の電磁界解析をうまく行うことが出来ていない。その対応策として,3D CADにより作図した共振器形状をそのままシミュレータに読み込むことが可能なモジュールの追加購入を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電磁界シミュレータによる共振器設計や構造最適化については,曲線形状をうまく表現することが困難で進捗が若干遅れているが,平行して行っている実験的検討において,これまでに得ている損失物体の影響を受けにくい共振器(従来型のデュアルスパイラル共振器)よりも,さらに影響を低減できる共振器構造(改良型デュアルスパイラル共振器)を見つけることが出来た。 また,キャパシタをスパイラル内に装荷するなどの方法で,共振器の小型化と損失物体の影響を回避できないかを検討した。キャパシタ装荷で共振器のサイズは小型化可能である。しかし,共振器周辺の電界が減少することから,若干の損失物体の影響回避は実現できたが,効率的なシステム構成には至らなかった。その理由として,本システムで電力伝送に主として作用する磁界は,電流や電界によって形成される。しかし,その磁界を生成するであろう電界がキャパシタ内部に閉じ込められてしまい,外部磁界生成を寄与できないなどの理由が考えられ,電力伝送効率が低下してしまうことが分かった。 その対応策として,当研究室で提案しているデュアルスパイラル共振器のように共振器内部の共振器面内に電界を生じさせ,電力伝送方向に電界を張り出させない構造が良いとの結論に至っている。ただ,デュアルスパイラル共振器は曲線状銅線(ワイヤ)で構成されているため,電磁界シミュレータに取り込みにくく,電磁界シミュレータによる最適構造の探索が若干遅れている。この対策として,3D CADにより作図した共振器形状をそのままシミュレータに読み込むことが可能なモジュールの追加購入を検討しており,この導入によりシミュレータによる検討の進捗が当初の計画に近いところまで改善できるものと期待している。
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今後の研究の推進方策 |
電磁界シミュレータによる共振器設計や構造最適化についての検討が,当初の計画に対して若干遅れてしまっている。この対応策として,3D CADを用いて作図した曲線形状を含む共振器形状をそのまま電磁界シミュレータに取り込むことが可能なシミュレータ用アドインモジュールの追加購入を行って研究の進捗速度向上を試みることで,当初の計画に早急に追いつけるように努力する。なお,アドインモジュールの購入費用については,令和5年秋頃からのシミュレータによる検討進捗状態検討において,令和6年度にはどうしても必要となると考え,令和5年度の研究使用費を切り詰めて,繰越予算とすることで令和6年度導入の目処が立った。 次に,共振器作製とその特性評価および無線電力伝送システム内に装着時の効果などに関する実験的な検討は計画通り進んでおり,より高性能なシステム構築を目指したい。なお,物価の高騰により実験用消耗品などの購入可能数が当初予定より目減りしてしまっているが,早急に電磁界シミュレータの利用を促進し,試作実験の回数を電磁界シミュレーションによる検討で補って研究を円滑に進めていく予定である。 また,実験的検討においては,損失性障害物として,NaClを用いて導電率を調整した塩水を使用して,より過酷な状況下における提案共振器の特性及び提案共振器を組み込んだ無線電力伝送システムの特性検討を行い,どの程度の損失性物体まで本研究で検討している共振器が適用可能なのかも調査していく予定である。 このような実験的および解析的検討結果の進捗状況を十分確認し,相互的かつ総合的に検討しながら,様々なデータを蓄積することで,知的財産権やレター論文,そして学術論文への投稿・掲載を目指す。
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