研究課題/領域番号 |
23K03822
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
宮武 昌史 上智大学, 理工学部, 教授 (30318216)
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研究分担者 |
近藤 圭一郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10425895)
渡邉 翔一郎 東京電機大学, 工学部, 准教授 (40807294)
小林 宏泰 千葉大学, 大学院工学研究院, 助教 (30844063)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 電気鉄道 / 電力マネジメント / 直流き電 / 交流き電 / 省エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では,直流及び交流電気鉄道を対象とし,省エネルギー,ピーク電力の抑制と交流特有の逆相電流の抑制を電力マネジメント制御則により実現する。減速列車と加速列車のタイミングを合わせた回生電力の有効利用や,加速列車のタイミングをずらしたピーク電力削減がその具体的な実現目標の例である。しかし,実際は遅延への影響やき電回路などの考慮が必要で,遅延しないよう最高速度を上げる場合は,それによる消費エネルギー増大の懸念もあり問題は難しい。鉄道ではエネルギーと走行時間とが密接な関係を持つのが他にない特徴であり,研究代表者を含むこの研究グループが持つ幅広い見識を活かして研究を遂行する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では,電気鉄道の直流及び交流き電方式を対象とし,省エネルギー,ピーク電力の抑制と交流系統側の電力品質改善を統一的な電力マネジメント制御則でバランス良く実現することを目的として研究を遂行してきた。その実現には,運行の場面で頻繁に起こり得る1秒オーダの外乱とその影響の大きさを考えると,予め定めた5秒単位の列車ダイヤでは考慮できず,リアルタイムの電力マネジメント制御則が必要となる。列車を運動エネルギーの蓄積媒体として捉え,列車群の速度を最適制御することで,蓄電装置に極力頼ることなく省コストな電力マネジメントを実現するよう研究を行った。鉄道ではエネルギーと走行時間とが密接な関係を持つのが他にない特徴であり,研究代表者を含むこの研究グループが持つ幅広い見識を活かすことができている。一般に電気鉄道は非線形で複雑なシステムであり,学術的にはそのような取り扱いの難しいシステムに関わる知見を得ることが期待される。 詳細は【現在までの進捗状況】の所に記載するが,今年度の主な研究実績は,回路モデルを含めたシミュレータをベースとして省エネとコスト削減を図るための機器最適化や電力需要の推定手法を開発したことである。また,運転方法を考える際に列車の位置や速度の計算量と誤差とを抑える計算手法も提案した。さらに,直流及び交流き電方式の特徴を踏まえて両者を比較検討してきた結果,直流き電方式の場合は電力マネジメントにより回生電力の有効利用が図られて省エネルギーが期待されるが,交流き電方式の場合は回生電力が電力系統に戻るためそのメリットは少なく,電気料金や交流電力品質の面でもメリットを創出する必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の計画では,先行研究の精査,中央で列車の位置速度を把握して電力指令を行う方法と列車が自律的にパンタ点電圧などの情報を取って自らの電力を定める方法との比較検討,電力マネジメントの基本的方法の確立,実路線での走行速度データの測定,を予定していた。 これに対し,2023年度は次のような成果を得た。まず,直流き電方式においては,省エネとコスト削減を図るために,多目的遺伝的アルゴリズムを用いて地上蓄電と車載蓄電を併用する際の設置容量を最適化する方法論を構築した。また,電力制御を考える際に近未来の電力需要の推定ができると有用であるため,ニュートン法とガウス過程回帰を用いてリアルタイムで推定する手法を検討した。一方,交流き電方式においては,海外の電力需要データをもとに,契約電力を超過した際に課されるペナルティを削減するため,地上蓄電装置を導入した際の効果を評価した。これらの成果の一部は既に論文または学会発表で公表している。さらに,運転曲線の最適化は有効な省エネルギー方法の一つであるが,計算量と計算誤差との両立が難しい。そこで,補間方法の工夫等によって少ないサンプリング点数でも計算誤差を小さくする方法を提案した。 最終目的である蓄電装置に極力頼らない電力マネジメントへの検討において目に見える成果を出すには至らなかったものの,強化学習を利用した方法について引き続き検討を行っている。検討のベースとなるシミュレータの開発は直流・交流ともに予定通り進んでおり,蓄電装置をベースとした電力マネジメントへの適用にも成功している。また,電力の予測手法や運転曲線の計算量削減についても新たな知見を得ることができた。このため,全体的には概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度以降の研究は次のように各大学で役割分担をしつつ遂行していく予定である。 2024年度は,車両及びき電システムのシミュレーションを実施し,基本的効果を確認する。勾配や速度制限,走行抵抗などの実際の条件の考慮も行う。また,直流と交流で求められるマネジメント則の相違点を明らかにする。 上智大(宮武) : 回路シミュレータと電力マネジメント制御の統合方法の検討 / 早稲田大(近藤) : PWMコンバータの無効電力制御特性の実装 / 電機大(渡邉) : 交流シミュレータへの電力マネジメント制御の実装及び効果評価 / 千葉大(小林) : 直流シミュレータへの電力マネジメント制 御の実装及び効果評価 2025年度は,列車に遅延が発生した際にも,遅延を回復しながら省エネ及びピーク電力抑制等が可能なことを検証する。蓄電装置の導入容量削減効果の評価も行う。 上智大(宮武) : 遅延回復シナリオのもとでの電力マネジメント制御方法の検討 / 早稲田大(近藤) : 蓄電装置の制御方法の検討 / 電機大(渡邉) : 遅延回復時の電力マネジメント制御の効果評価 / 千葉大(小林) : 蓄電装置の導入容量削減効果の評価
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