研究課題/領域番号 |
23K03833
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21010:電力工学関連
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研究機関 | 大分工業高等専門学校 |
研究代表者 |
石川 誠司 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 助教 (60615243)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 有限要素法 / 鉄損 / 磁気特性解析 / IPMモータ / 風車型スロット |
研究開始時の研究の概要 |
通常、回転機は構造が回転軸に対して対称に作られている。しかし、回転機に負荷を与えると、効率やトルクに寄与する磁束線の流れは、電機子反作用の影響で回転軸に対して非対称となり、偏った磁束の流れは鉄損増加をもたらし、効率低減を招く。そこで、固定子側のスロットを風車のように傾けた非対称構造を取り入れることで、磁束の流れが滑らかになり、鉄損が抑えられ、高効率化に繋がることを明らかにした。本研究では、課題である高トルク化を目指す。そのために、非対称構造の固定子を維持したまま、回転子側にも非対称性を取り入れ、高効率と高トルクを両立した回転機の開発研究を行う
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研究実績の概要 |
本研究の第一の目標である、損失低減を目指した固定子構造におけるスロット角度の決定について、科研費で購入した解析システムを利用し、スロット間のティースと呼ばれる鋼板部分の面積量と、単位面積あたりの磁束量の関係を調査し、損失低減とトルク値減少について研究を行いました。また、実機製作を見据えた構造上に無理がないようなモデルを構築しました。その結果、先行研究で提案された傾き角が有用であることが明らかになりました。 次の研究目標である、固定子部分を同一条件にした場合のトルク値上昇を目指した固定子構造に合う回転子構造(磁石形状)の決定について研究を進めました。総エネルギー量を同等条件とするため、磁石の体積量を同じにし、磁石を分割する方法と、分割後に角度を付与することで課題を解決しようと試みました。その結果、トルクの値は、分割時に1.1%増加し、分割と角度付与時に5%減少しました。微量ではありますが、値の増加が期待できる結果を得ました。このような結果になった理由として、精度の高い磁気特性解析が可能になったことや、磁束の流れを考慮しながらモデルに反映できたことが挙げられます。 次に、1年目を終えての課題について述べます。まず1点目は、より高効率で高トルクが達成できる回転子構造の提案です。今回のモデルでは、一方向に回転する利点に対して、抜本的な解決を図るような新しいモデルを提案することができませんでした。これは2年目での大きな課題として最優先で取り組む必要があると考えています。2点目は、パターン解析の量を増やすことです。第一の目標に挙げた固定子構造の決定を優先的に行ったので、最適な回転子構造に焦点を当てて課題解決に取り組む予定です。 ここまでの実績については、電気学会九州支部主催の「第14回電気学会九州支部高専研究講演会」で発表し、様々な意見を頂戴しました。今後の研究活動に役立てていく予定です。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
損失低減を目指した固定子構造におけるスロット角度の決定について、新たな解析システムを導入したことで、これまで5度毎に解析していたモデル構造の最適化を見直し、1度毎の詳細なパターン解析を行うことで、先行の知見が正しいかどうかの判定を行いました。回転機のモデル構造を変化させる場合、変化したい点以外は同条件にするのが鉄則であり、最終目標の「回転子構造を変化」させるためにも「固定子構造の決定」は非常に重要であり、この研究では最初に解決しなくてはならない課題でした。傾き角を20度に設定しスロットに適用することで、損失を低減することが改めて確認できました。 次の課題として、非対称構造固定子に対する新たな回転子構造の提案を行います。この課題には、先の課題解決で使用した角度を1度毎に変化させるようなパターン解析が通用せず、磁束の流れ方、損失の表れ方、トルクが寄与するギャップの考え方などを総合的に考慮して、新たなモデル構造を提案する必要があります。しかし、何も指針がないまま適当にモデル構築をしても目標に達することが難しいため、今回は総エネルギー量を同等条件とし、磁石の体積量を同じにし、磁石を分割する方法と、分割後に角度を付与するという2種類のモデルでその効果を検証しました。トルクの値や鉄損の値に変化が見られ、それぞれの特徴に対する知見を得ることができました。 ここまでの1つ目の課題解決、2つ目の課題は一定の知見を得たことにより、2年目の最大の目標は一方向に回転する利点に対して、抜本的な解決を図るような新しいモデルを提案することです。最終目標は固定子と回転子の最適な組み合わせ方の調査と位置付けているため、トルク値と鉄損の関係に留意しながら研究を続けていきます。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べた通り、次の課題は一方向に回転する利点に対して、根本的な解決を図るような新しいモデルを提案することです。磁石の総エネルギー量を一定にしつつも、磁石の分割効果と磁石の傾ける効果を利用し、さらに非対称性も考慮してモデル構築を研究します。ある程度の形が決まれば、そこからは科研費で購入した高性能な解析システムを利用して、角度を1度毎に変化させるパターン解析や、分割をしたときに隙間を数mm毎に変化させるパターン解析を行い、最適解を導く方針を考えています。 最終的な目標は、固定子と回転子の最適な組み合わせ方の調査と位置付けているため、どの形状におけるトルク値と鉄損の値を保管し、そのモデルと値の関係性についても明らかにしていく方針です。 また、全体的な推進方針として、モデル作製時にメッシュ化という作業を行います。メッシュとはモデルの細分化のことを指し、この細分化の度合いによって解析の精度が変化します。一般的にメッシュは細かくすれば高精度な解析結果を得られますが、一方で解析時間が大幅に増えてしまいます。今までの研究では解析時間の効率化を重視し、メッシュの細分化は避けてきましたが、ある程度の知見や方針が見えてきたので、細分化にも挑戦し、より精度の高い解析で研究を行う方針です。
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