研究課題/領域番号 |
23K03864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
伊藤 聡志 宇都宮大学, 工学部, 教授 (80261816)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | MRI / 畳み込みニューラルネットワーク / 深層学習 / 再構成 / 高速撮像 |
研究開始時の研究の概要 |
核磁気共鳴現象を利用したMagnetic Resonance Imaging(MRI)の課題の一つに撮像の高速化がある.近年,数理的に撮像を高速化できる圧縮センシングが応用され,さらに画像を再構成する手法が反復的再構成から深層学習再構成に置き換わり,撮像時間短縮と再構成時間短縮において革新的な進展があった.深層学習を利用した画像再構成が提案されて既に4年が経過し,多角的側面から研究が行われることによって課題が明らかになってきた.本申請では,これら顕在化してきた課題を解決する有効な手法を提案し,理論的,実験的に有効性を示し,実用化へ展開する準備を行うことを目的とする.
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研究実績の概要 |
磁気共鳴現象を利用したMagnetic Resonance Imaging(MRI)の課題の一つに撮像の高速化がある.撮像時間を短縮する方法の一つに少数の観測信号から画像を再構成する方法がある.画像再構成法は畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を利用すると良質な画像再生が可能となる.令和5年度は,CNNを利用する再構成法について位相画像の再構成と多重解像度空間学習CNNについて検討を行った. MRIで得られる画像は生体の磁化率の相違や装置特性によって位相を持つ複素画像になる.深層学習再構成における複素画像への対応が最近のトピックであり,複素数に対応する方法に絶対値像と位相分布像を推定する方法と,複素数対応のCNNを用いる方法がある.複素数対応CNNでは,活性化関数やバッチ正則化などの複素数化が必要であり,実関数CNNに比べてパラメータ数の増加や過学習が懸念される.本研究ではMR信号の特性を利用し,位相分布推定を不要とする実関数CNNによる深層学習再構成について検討を行った.その結果,実関数CNNは複素数CNN(Generic-ADMM-CSNet)と同等以上の品質を得ることができた.また,MR画像では位相変化が複雑になる場合があるが,本方法では位相推定が不要なために位相変化に頑健であることが明らかになった. 多重解像度空間学習では,研究室で提案しているフレネル変換を使用した多重解像度解析(eFREBAS変換)を使用し,展開像別に学習を行う方法について検討を行った.展開像を3×3とした場合に生体の細部構造の保存性が改善されることが明らかになった.これは,事前に画像を周波数帯域別に展開したことにより学習しやすくなったものと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深層学習再構成における複素画像への対応では,我々が提案する原点対称信号サンプリングを利用した.この方法は,複素画像の実部と虚部に対するMR信号を計算できるので,実部像と虚部像を実関数CNNを使用して再構成できる利点がある.深層学習再構成には,モデルベース型のADMM-CSNetと画像間学習のU―Netの2通りの方法を採用し,2通りの複素数対応CNNと比較した.複素数対応CNNは複素畳み込み積分を行うComplexCNN,および画像の絶対値と位相を推定する方法を採用した.その結果,全ての信号収集比の場合で,提案する方法において最も高いPSNRが得られた.信号収集比が少ない(20%)の場合では,U-Netが,信号収集数比が30%以上になると,ADMM-CSNetにおいて高いPSNRが得られた. CNNは特徴を学習することができるが,予め画像を特徴別に分類した上で学習すると学習効率が高まることが期待できる. そこで信号空間での周波数の分解能を持ちながら, 画像特徴別に展開された多重解像度解析(eFREBAS変換)を利用した再構成法を考えた.eFREBAS変換は,サイズが等しい多重解像度画像への変換であり, また, Wavelet 変換のように分割数が2のべき乗という制限がなく, かつ複素変換であるという特徴を持つ.その結果,スパース化空間で行う学習と画像空間で行う学習をカスケード接続する方法により,提案法は単体のCNNよりも高いPSNRを得ることができ,画質改善の可能性が示された.
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今後の研究の推進方策 |
今後は項目について検討を行う予定である. (1) 実部を虚部の画像を同一の実関数CNNで学習することによるデータ拡張の効果の検証 (2) サンプルパターン拡張の導入による再構成性能の改善 (1)の検討では,同一のCNNで2倍の画像を学習することが可能になる.これは,データ拡張に相当するため,再構成性能の改善が見込まれる.さらに,位相画像の特性を応用すれば,位相を推定した後に,任意の位相シフトを行うことにより絶対値は同一であるが位相が異なる別画像を生成できる可能性がある.これにより,学習用の画像をさらに数倍程度増やし,CNNの性能改善が期待できる.MRIで使用できる画像の枚数は自然画像に比べると少ないが,本法により学習用の画像を効果的に増やすことが可能となる. (2)の検討に関して,一般に,CNNは与えられた条件で性能が最適になるように学習する.そのため,MR信号の間引きパターンが与えられると,そのパターンでは性能が改善されるが,間引きパターンが異なると性能が大きく低下する.しかしながら,ASMM-CSNetでは,学習において異なる信号間引きパターンをランダムに与えると,CNNの性能改善が図られることを我々のグループが発見している.そこで,学習に使用する信号間引きパターン数をCNNの性能改善効果について検討を行う.
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