研究課題/領域番号 |
23K03866
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分21030:計測工学関連
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
金 錫範 岡山大学, 環境生命自然科学学域, 教授 (00287963)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 小型NMR/MRI用マグネット / HTSバルク体 / REBCO線材 / 極細Nb3Al線材 / 小型核磁気共鳴装置 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,小型NMR/MRI装置の高性能化を目的として異なる形状の超伝導体による3種類の超伝導マグネットについて検討する。開発する超伝導マグネットの大きさは,直径20 cm,高さ20 cm以下であり,脱ヘリウムのために伝導冷却方式で運転される。NMR用は,直径10 mm球状空間において磁場強度4.7 T,磁場均一度1 ppm,磁場の時間安定度は0.01 ppm/hであり,MRI用は,直径20 mmの球状空間において磁場強度3 T,磁場均一度は50 ppm,磁場の時間安定度は0.01 ppm/hである。
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研究実績の概要 |
本研究では,小型NMR/MRI装置の高性能化を目的として高温超電導(HTS)バルク体と高温超電導体であるREBCO線材,そして新しく開発する極細Nb3Al金属系超電導線材による静磁場源の開発を行っており,主な研究成果は下記のようになる。 ①高温超電導バルク体による小型MRI用マグネット:直径140 mmのHTSバルク体2個を使用した小型MRI用マグネットの最適形状について電磁場数値解析に基づく検討を行った。今までの磁場中冷却法では,測定空間で100ppmの磁場均一度を得ることが非常に難しいことが明らかになり,一度磁場中冷却法で磁束が捕捉されたバルク体に対して再度励磁を行うことでバルク体内の超電導電流密度分布を制御し,測定空間内の磁場均一度を大幅に向上させることに成功した。 ②REBCO線材による小型MRIマグネット:テープ形状の次世代高温超電導体であるREBCO線材を用いた小型MRI用マグネットについて分散型遺伝的アルゴリズム法による形状最適化について検討した。テープ形状に起因する遮蔽電流による不整磁場問題はマグネットのサイズが小さいほど顕著であり,最適化手法において遮蔽電流分布について正確に考慮すべきである。そこで,本研究では遮蔽電流分布についてマグネットを空間的に分割し,自己インダクタンスと相互インダクタンスを考慮した手法を提案し,その妥当性について証明した。 ③極細Nb3Al線材の特性評価:Nb3Al線材の線径を極限に小さくすることで今まで不可能だった熱処理後にコイルが作製できるReact & Wind法が可能になると考えている。そこで,NIMSによって新しく開発中である極細Nb3Al線材の臨界特性と交流損失特性などを伝導冷却方式で測定する装置を開発し,その特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HTSバルクによるマグネットは,比較的に高い磁場が発生でき,常電導転移しても装置の安全面には全く問題ないが,MRI用としての磁場均一度を実現するのが難しい。電磁場数値解析を行った結果,2個のリング状HTSバルクを使って3 Tの磁場強度は実現可能であるが,100 ppm以上の磁場均一度を確保するのは非常に難しいことが分かった。そこで,HTSバルク体に対して再励磁法を提案して,その有効性が証明されたので高温超電導バルク体による小型MRI用マグネットの実現可能性が示された。 REBCO線材によるマグネットにおいては,テープ形状に起因する遮蔽電流による小型MRI用マグネットの不整磁場問題はマグネットのサイズが小さいほど顕著であり,最適化課程においてはマグネットに発生する遮蔽電流分布について正確に考慮すべきである。しかし,既存の遮蔽電流分布に関する簡易計算法による結果と有限要素法に基づく電磁場解析による結果とは乖離が大きく,形状最適化手法において簡易計算法は不十分であることが明らかになった。そこで,本研究では最適化手法でより正確に遮蔽電流分布が考慮できる方法を提案し,その有効性について証明したが,その精度をさらに向上させる必要がある。 Nb3Al線材は,その機械的特性によりコイル形状に巻いてから熱処理を行うWind & React法でマグネットを作製するしかないので設計と製作の自由度が低くなる。そこで,React & Wind法でマグネットが製作可能な極細Nb3Al線材が開発中であり,Nb3Al線材の性能向上のために各試料線材の臨界特性と交流損失特性について測定評価し,その結果を線材開発にフィードバックしている段階である。
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今後の研究の推進方策 |
HTSバルク体によるMRI用マグネット開発に関する研究成果を超電導関連国際学会で発表した際に,提案した再励磁法は非常に効果的であるものの現時点では大型のHTSバルク体を作製するのが難しいので実用化に疑問があると指摘された。そこで,直径が100mm程度のHTSバルク体でも目標する磁場強度と磁場均一度が実現できる方法について検討する。REBCO線材によるMRI用マグネットの最適形状設計においては,新しく提案した手法により遮蔽電流分布による不整磁場の影響が高精度で評価されることで最適化手法の信頼性が高くなったものの,すべてのマグネット形状と通電電流の広い範囲の負荷率においても正確に計算できる方法についてさらに検討する必要があると考えている。現在開発中の極細Nb3Al線材については,試料線材の臨界特性を正確に把握することで線材性能の向上に寄与すると共にReact & Wind法によるコイル化の可能性について実験的に検討する必要がある。また,それと同時に極細Nb3Al線材を用いたMRI用マグネットの形状設計を行う予定である。
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